14年度診療報酬改定から

今回の診療報酬改定でも多くの疑問点が指摘されていますが、960ページに及ぶ参考資料をすべて熟読することは出来ませんので、今回変更になった項目も含めて日常診療に関係のある留意点を参考資料から抜粋してみました。日常診療の基本ですので目を通しておいてください。


多剤投与の場合の算定 P385

 ア 「注2」の算定は、外来の場合に限り、1処方のうち、内服薬についてのみ対象とする。
   この場合の「種類」については、次のように計算する。なお、1処方とは処方料の算定単位となる処方をいう。

  (イ)錠剤、カプセル剤については、1銘柄ごとに1種類と計算する。
  (ロ)散剤、顆粒剤及び液剤については、1銘柄ごとに1種類と計算する。
  (ハ)(ロ)の薬剤を混合して服薬できるよう調剤を行ったものについては、1種類とする。
  (ニ)薬剤料に掲げる所定単位当たりの薬価が205円以下の場合には、1種類とする。

 イ 「注2」の「所定点数」とは、1処方のうち全ての内服薬の薬剤料をいう
 ウ 「注2」の算定は、常態として投与する内服薬が7種類以上の場合に行い、臨時に投与する薬剤については対象としない。

 エ ウの臨時に投与する薬剤とは連続する投与期間が2週間以内のものをいい、2週間を超える投与期間の薬剤にあっては常態として投与する薬剤として扱う。なお投与中止期間が1週間以内の場合は、連続する投与とみなして投与期間を計算する。

 オ 臨時的に内服薬の追加投与等を行った結果、1処方につき内服薬が7種類以上となる場合において、傷病名欄からその必要性が明らかでない場合には、診療報酬明細書の摘要欄にその必要性を記載する。

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 マスコミに目の敵にされた「205円ルール」は廃止されましたので、レセプトには安価な薬もすべて薬品名を書かなくてはなりませんし、その薬品の適応となる病名もいります。ただ今回は多剤投与の際の算定については以前と同じで、薬剤料に掲げる所定単位あたりの薬価が205円以下の場合には、1剤とみなす規定はそのままですので、薬剤数の数え方には今後も205円ルールが適応されると考えて良いでしょう。
 ただし、すべての薬剤が羅列されることになりますので、どの処方が所定単位の薬価で205円以下か簡単にはわからなくなり、審査の現場ではむしろ混乱する事は目に見えています。レセプトに薬の飲み方や処方の仕方まで打ち出すレセコンはありません。それに輪を掛けた改定が、後発品の薬剤使用時の処方箋料2点(20円)アップの問題です。後発品に対して厚労省も認識を新たにし、後発品を認めた改定という点では評価できますが、どの薬が新薬で、どの薬が後発品かは処方する医師にも、薬剤師にもその場での判断は難しいことがあります。厚労省のホームページに後発品の一覧表は公開されましたが、テキストファイルで5Mにもなるデータを誰がいつも手元に置いているのでしょうか、制度を認知ささ、理解を得てから施行すべきですし、それには時間がありません。


療養病棟入院基本料

「注4」
 イ、日常生活障害加算  40点
 ロ、痴呆加算      20点

 「注4」に掲げる加算を算定するに当たっては、当該加算の要件を満たすとともに、次のアからエまでの要件を満たすことが必要である。

 ア 当該加算の基準に基づき、患者の身体障害の状態および痴呆の状態を評価するとともに、当該加算の、基準に基づく評価、これらに、係る進行予防などの、対策の要点及び評価日を診療録に記載するものとする。当該加算は対策の要点に基づき、計画を立て、当該計画を実行した日から加算する。

 イ、当該加算患者については、定期的(原則的に月1回)に当該加算の基準に基づいて評価及び対策の要点を見直し、評価日と併せて診療録に記載する。

 ウ、患者の状態に著しい変化が見られた場合には、その都度、当該加算の基準に基づく評価及び対策の要点を見直し、評価日と併せて診療録に記載する。評価に変更がある場合には、新たな点数を加算する。

 エ、当該加算を算定する場合は、診療報酬明細書の摘要欄に当該加算の算定根拠となる評価 (当該加算の、基準に基づくランク等)及び評価日を記載すること。なお、月の途中で加算点数に変更がある場合については、その都、同様に記載すること。

日常生活障害加算・痴呆加算の基準

 1.日常生活障害加算
 「障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準」における「ランクB」以上に該当すること。但し、経管栄養を実施しており、かつ留置カテーテル設置または常時お むつを着用しているものを除く。

 2.痴呆加算
 「痴呆老人の生活自立度判定基準」における「ランクII b」以上に該当すること。
  但し、重度の意識障害のあるもの(JCSでII-3(30)以上、またはGCSで8点以下の状態)を除く。

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 療養病棟入院基本料は包括化されたまるめ診療でしたが、画像診断とリハビリテーションは加算が認められていました。しかし今回から画像診断もリハビリも入院基本料に含まれることになりました。特殊な処置や酸素療法・経管栄養・胃瘻などはむしろ現在の包括化入院費の加算を訴えてきた現場の意見とは逆に、ほとんどすべて包括化されてしまったことになります。一方この制度は医療制度だけの問題で、今のところ介護保険制度の介護療養型医療施設では変更の通知はありません。介護療養型医療施設では今まで通り画像診断もリハビリも加算できるのです。この理由もよく分かりませんが、医療保険の療養型病床群から介護保険の介護療養型医療施設への転換を進めるための、政策誘導的な配慮だと思います。
 その替わりといって良いのかどうか、医療保険には日常生活障害加算と痴呆加算の基準が新設されました。これらの基準は医療の現場ではなじみの少ない基準ですが、介護保険制度の導入で要介護認定には無くてはならない分類となっていますので、現場の臨床医や看護者も理解しておく必要があります。
 色々算定の規則が述べられていますが、現場を知らない事務系の役人が作った作文だということがわかります。特にウ、の項など加算はランクの決まりがあるので、評価が変わっても新たな点数はありません。

 まあ加算が出来ることは現場では歓迎できることですが、日常生活障害加算で、「経管栄養を実施しており、かつ留置カテーテル設置または常時おむつを着用しているものを除く。痴呆加算で重度の意識障害のあるもの(JCSでII-3(30)以上、またはGCSで8点以下の状態)を除く」という縛りは全く理解できません。むしろこんな患者さんが一番手がかかりますし、加算が必要なのです。
 例えば経管栄養・留置カテーテルを包括化からはずして、処置の費用がとれるのなら、障害加算を加えれば二重加算ですが、現実はこれらの処置は全て包括化されていますので、一番障害が重度の患者さんの看護・介護に加算がないことになっています。理由が知りたいところです。


入院期間の計算

 (1)入院の日とは、入院患者の保険種別変更等の如何を問わず、当該保険医療機関に 入院した日をいい、保険医療機関ごとに起算する。
 また、A傷病により入院中の患者がB傷病に罹り、B傷病についても入院の必要がある場合(例えば、結核で入院中の患者が虫垂炎で手術を受けた場合等)又はA傷病が退院できる程度に軽快した際に他の傷病に罹り入院の必要が生じた場合においても、入院期間はA傷病で入院した日を起算日とする。

(2)(1)にかかわらず、保険医療機関を退院後、同一傷病により当該保険医療機関又は当該保険医療機関と特別の関係にある保険医療機関に入院した場合の入院期間は、当該保険医療機関の初回人院日を起算日として計算する。
 ただし、次のいずれかに該当する場合は、新たな入院日を起算日とする。

 ア 1傷病により入院した患者が退院後、一旦治癒し若しくは治癒に近い状態までになり、その後再発して当該保険医療機関又は当該保険医療機関と特別の関係にある保険医療機関に入院した場合

 イ 退院の日から起算して3月以上(悪性腫瘍又は「特定疾患治療研究事業について」(昭和48年4月17日衛発第242号)の別紙の第3に掲げる疾患に罹患している患者については1月以上)の期間、同一傷病について、いずれの保険医療機関に入院又は介護老人保健施設に入所(短期入所療養介譲費を算定すべき入所を除く。)することなく経過した後に、当該保険医療機関又は当該保険医療機関と特別の関係にある保険医療機関に入院した場合

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 入院機関の算定はこれからは主治医として十分理解しておかねばなりません。とくに入院機関が医療機関ごとでなく、通算されるようになれば10月以降混乱は目に見えています。病診連携の崩壊ともいえる措置が近づいています。上記の基準は現時点の入院の算定基準です。
 一般の病気では3ヶ月経てば、新たな入院として入院日数はリセットされますし、悪性腫瘍や特定疾患の対象疾患では、1ヶ月で新規入院となります。


入院中の患者の他医療機関への受診   P242

1)入院中の患者が、当該入院の原因となった傷病以外の傷病に罹患し、入院している 保険医療機関(以下本項において「入院医療機関」という。)以外での診療の必要が 生じた場合は、他の保険医療機関(以下本項において「他医療機関」という。)へ転 医又は対診を求めることを原則とする。

2)入院医療機関において、特定入院料、療養病棟入院基本料、老人病棟入院基本料又 は診療所療養病床入院基本料(以下、通則において「特定入院料等」という。)等を 算定している患者について、当該特定入院料等に含まれる診療を他医療機関で行った 場合には、当該他医療機関は当該費用を算定できない。

3) (2)にかかわらず、特定入院料等を算定する患者に対し眼科等の専門的な診療が 必要となった場合(当該入院先の保険医療機関に当該診療に係る診療科がない場合に 限る。)であって、当該患者に対し当該診療が行われた場合(当該診療に係る専門的 な診療科を標榜する他の保険医療機関(特別の関係にあるものを除く)において、次 に掲げる診療行為を含む診療行為が行われた場合に限る)は、当該患者について算定 する特定入院料等に含まれる診療が当該他医療機関において行われた診療に含まれる 場合に限り、当該他医療機関において、当該診療に係る費用を算定できることとする。

 ただし、短期滞在手術基本料2、指導管理等、在宅医療、投薬、注射及びリハビリテー ションに係る費用(当該専門的な診療科に特有な薬剤を用いた投薬又は注射に係る費 用を除く。)は算定できなしい。

ア 初・再診料  
イ 短期滞在手術基本料 1
ウ 検査
エ 画像診断
オ 精神科専門療法
カ 処置
キ 手術
ク 麻酔
ケ 放射線治療

4)  他医療機関において(3)の規定により費用を算定することのできる診療を行わせる場合には当該患者が入院している保険医療機関において、当該他医療機関に対し、当該診療に必要な診療情報(当該保険医療機関での算定入院料及び必要な診療科を含む。)を文書により提供する(これらに要する費用は患者が入院している保険医療機関が負担するものとする。)とともに診療録にその写しを添付すること。この場合においては、当該他医療機関において療養が行われた日に係る特定入院料等は、当該特定入院料等の所定点数から当該特定入院料等の基本点数の85%を控除した点数により算定するものとする。

5) 他医棟機関において(3)のアからケまでに規定する診療を行った場合には、当該患者が入院している保険医療機関から提供される当該患者に係る診療情報に係る文書を診療録に添付するとともに、診療報酬明細書の摘要欄に「当該患者の算定する特定入 院料等」、「診療科」及び「他(受診日数:○日)と記載すること。

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 まあなんと分かり難い言葉を並べて、理解しづらい文章を作るのでしょうか。
 簡単にいうと、特定入院料(老人の包括入院料)を算定している施設に入院されている患者さんは、今まではその医療機関で対応できない疾患で他の医療機関に紹介しても、「紹介先の他の医療機関での医療費は診察料以外は保険で認めませんよ」と言うシステムでした。紹介先の医療機関では保険診療が出来ないので、初・再診料以外のかかった医療費は入院中の医療機関に請求するシステムした。今回から「専門的な医療が必要な場合には、他の医療機関に紹介して診療・治療を受けても、その医療機関で医療費は請求できることにした」ものです。

 但し、入院中の医療機関では、紹介状の加算もできず、紹介した日には入院の費用は15%しか算定できませんという、厳しい制限を課しています。紹介したらなぜ入院費が15%になるのか、全く理由が分かりません。入院費の15%という設定は、外泊の時と同じ扱いになります。しかし専門的な医療が必要と考え入院中の患者さんを紹介したら、自分の所の入院費が15%しか払われないということですし、誰が考えたか全く理解できない無理矢理こじつけたシステムだと思います。
 それならば、紹介日に朝退院とし、患者さんは他の医療機関に受診・診察を受け、翌日病気の悪化と言うことで再入院すれば、この2日間は入院費も紹介先の医療費も両方算定可能ですので、こんな事を認めて良いのでしょうか。

 一方紹介された他の医療機関はレセプトに5)の記載を行えば、ほとんど全て保険請求は出来ますが、ただ患者が外泊中などに紹介状を持たずに受診した場合(何も申告しないで受診したとき)の対応などは記載されていません。そんなときには誰に請求するのでしょうか。

 入院時の他科受診の問題は、療養型病床だけでなく介護保健施設・介護療養型医療施設でも、今までは同じでした。しかし今回介護保険制度では他科受診の制限の変更通知は出ていないようです。これも厚労省はどう考えているのでしょう。介護施設の入所者の他科受診は今まで通り、一部費用以外全額施設持ちなのでしょうか。

 どの病院の入院でも「外泊」では入院基本料は15%しか請求できません。ホテルコストとしても納得できる料金ではありませんが、例えば2泊3日の外泊の時には、診療報酬上の外泊は中日の1日だけですので、仕方ないというのでしょう。入院の決まりでは、朝入院しても、夜入院しても入院は1日です。深夜の0時が分かれ目です。この事も皆さん理解しておいてください
 


生活習慣病指導管理料

(1)生活習慣病指導管理料は,高脂血症,高血圧症又は糖尿病を主病とする患者の治療においては生活習慣に関する総合的な指導及び治療管理が重要であることから設定されたものであり,治療計画を策定し,当該治療計画に基づき,服薬,運動,休養,栄養,喫煙及び飲酒等の生活習慣に関する総合的な指導及び治療管理を行った場合に,許可病床数が200床未満の病院及び診療所である保険医療機関において算定する。なお,初診料を算定した日が属する月においては,本管理料は算定しない。

(2)当該患者の診療に際して行った指導管理等,検査,投薬及び注射の費用はすベて所定点数に含まれる。

(3)生活習慣病指導管理料を算定している患者に対しては,少なくとも1月に1回 以上の総合的な指導及び治療管理が行われなければならない。

(4)服薬・運動・休養・栄養・喫煙及び飲酒等の生活習慣に関する総合的な指導及び治療管理に係る計画書(計画書の様式は,別紙様式4又はこれに準じた様式とする。)を,3月に1回以上交付するものとし,交付した計画書の写しは診療録に貼付しておく。

(5)当該月に生活習慣病指導管理料を算定した患者の病状の悪化等の場合には,翌月に生活習慣病指導管理料を算定しないことができる。

(6)同一保険医療機関において,高脂血症,高血圧症又は糖床病を主病とする患者について,生活習慣病指導管理料を算定するものと算定しないものが混在するような算定を行うことができる。

(7)同一月内において,院外処方せんを交 付する日と交付しない日が混在した場合には,当該月の算定は,「1処方せん を交付する場合」で算定する。

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 従来「運動療法指導管理料」とされていた老人以外の慢性疾患指導の項目が名前を変えて「生活習慣病指導管理料」となったものです。高脂血症・高血圧・糖尿病の包括医療といえますし高脂血症・高血圧・糖尿病で各々点数が異なっていますので「DRG/PPS」の導入だといえます。老人の包括化医療は外来総合診療といわれていましたが、この制度は今年の10月で廃止になります。外総診は日本でも失敗したのです。包括化医療は欧米でも失敗していることに、厚労省は早く気づくべきです。
 またこの「生活習慣病指導管理料」が実際に使われるかどうかですが、指導料が高く設定されているため患者さんの自己負担が高くなります。月1-2回の診察の患者さんでは現在より1.5-2倍の診療報酬となりますので、臨床医としては患者さんの負担を考えると選択しずらいと思います。外総診が現場で選ばれたのは臨床医にも報酬でメリットがあると同時に、老人医療費は定額制を選べば包括化でも、患者負担は増えなかったからであり、この生活習慣病指導管理料とは異なります。
 厚労省の思惑通りとなりますかどうか。

(「生活習慣病指導管理料」についてのもっと詳しい説明ページを作りました。4/13)

 「生活習慣病指導管理料」では総合的な指導に係る計画書を3ヶ月に1回以上交付すること。交付した計画書の写しを診療録に添付することとなっています。この計画書のひな形(別紙様式4)には患者と主治医のサインと印が必要な様式になっていますので、両者が保管する事が求められているのかも知れません。
 診察時に印鑑持参で診察を受ける患者さんはいないと思います。書類にははんこが必要というお役所の発想でしょう。
 ただ利用する患者さんもあるだろうと思いますので、その時には計画書の作成は必要です。

 そこでこの様式を元にして「生活習慣病指導計画書」のテンプレートを作成しましたので、ご利用ください。
ただし、ファイルメーカープロのテンプレートです。ファイルメーカープロ4.0で作成しています。
WIN・ MAC、ともに利用出来ると思います。出来るだけ入力を簡単にしてみましたので、ご自分の診療にあわせて変更してお使いください。
印刷はB5版で95%程度がすっきり収まると思います。

「生活習慣病指導計画書」のテンプレート

ダウンロードしてお使いください。
注意
ダウンロードの方法は、マックでは上の「生活習慣病指導計画書」の文字をクリックし押したまま(クリックして離してしまうと文字だけのおかしな画面になります)、ウインドウズでは右クリックし、「リストをディスクにダウンロード」を選択すれば20秒程度で完了します。

ダウンロードたファイル「seikatu.fmj」をファイルメーカープロで開いてください。


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14年度改定の問題点-2-
 レセプト記載要領改正「診療報酬請求書等の記載要領等の一部改定について」