レセプト傷病名記載の方法について
 主病名・副病名(主傷病・副傷病)

 今回の診療報酬改定で、関係者がその対応に追われている間に、何の前触れもなく突然25日に厚生労働省保険局医療課からレセプト記載要領改正「診療報酬請求書等の記載要領等の一部改定について」という通達がありました。その中では主傷病と副傷病を明確化することを求めていますし「傷病名は厚労大臣の定める傷病名を使うこと、主傷病名と副傷病名の純に記載すること、主傷病名は原則として1つ」などと規定されています。

 その後、日医からも県医師会からもこの取り扱いについて詳しい説明の通達はありませんが、4月からの実施になっています。こんなに短期間に医師全員に4月から実施することは無茶なことです。

まず通達の方法について
 医師会員以外の保険医も多いのですから、たった1通の通達ですませる問題とは違います。インターネットやメーリングリストで情報を利用できる少数の会員は事の重大さを知ることは出来ますが、それ以外の多くの会員や保険医には全員に通達されていません。厚労省は改定に関する全ての情報を、従来の通知ルートで全医療機関へ確実に文書で通知する義務があります。こんな通達で果たして全会員に理解されていると考えているのでしょうか、知らないのはお前たちのせいとでも言うのでしょうか。厚労省はウェブでの発表でごまかしてはなりません。ウェブから情報を得られない医療機関の方が多いことを理解すべきです。ウェブでの発表は従来の通知ルートの代りではなくて、あくまでも従来の通知ルートと併用すべきものだと思います。

 主傷病を明確にすることは以前から、国保連合会や社会保険支払基金が再々要求してきたことですが、日医が反対してきたという経緯があるようです。数年前にも同じような通達がありましたが、臨床の現場での反対で実施されなかった経過があります。今回突然、3月末に厚生労働省からの通達としてでてきたわけです。またこの時期に突然こんな通達を出された真偽が不明です。正確には知りませんが、日医の会長選挙のどさくさに紛れて厚労省が急いで通達したという話も聞きます。

 レセプト記載要領の改正は、レセプトに病名を書くという事だけでなく、今後大きな意味を持つ改定なのです。

 さて主傷病を明確にすることで、疾患ごとの医療費の平均をはじき出し、将来のDRG/PPSの「包括化点数」の材料にしようという意図が見え見えですが、レセプト審査と病名記載を無視してこんな通達をしても医師会員はすぐに了解するわけには行きません。また全患者の主傷病と副傷病を明確にするのは大変な手間がかかると思いますし、それだけではなく患者さんにはどれが主病であるのか明らかに出来ない症例もたくさんあります。その目的もデータの公開もなくレセプトの病名の書き方だけをすぐに変更する事は出来ないと思います。

 今までの審査では検査や投薬の一部に本来の病名ではない「保険病名」の記載が必要でした。審査は病名がなければ検査や投薬を認めないからです。今回の改定でそんな保険病名は必要ないものとされるなら、好ましい改定ですが、果たしてレセプト審査は病名が無くても認めるのでしょうか。各県の審査会だけでなく、市町村や保険者団体でも確認された改定通達ではないとレセプト審査そのものの混乱となってしまいます。

 また審査会だけでなく、レセプトの病名記載は手書きで主病名には○印を付けるか、レセコンで区別できねばなりませんがすぐに対応しているレセコンも少ないと思います。いつものことですが準備期間もなく1週間程度で新しい医療制度を行えという事に、黙って従うしかないのでしょうか。

 28日に厚労省からQ&Aが出されましたので、関連の通達を下記に添付します。厚労省はこんな通達を出しましたが、レセプトの審査会で審査員も理解しているのかどうか、まだ紆余曲折ありそうです。
               14.4.6       吉岡春紀

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 診療報酬請求書等の記載要領等の一部改定について  平成14年3月25日
 保医発0325003号

「診療報酬請求書等の記載要領等について」(昭和58年8月7日保険発第82号)を下記の通り改正し、平成14年4月1日から適用する。

(17)「傷病名」欄について

ア 傷病名については、原則として、「磁気テープ等を用いた請求に関して厚生労働大臣が定める規格及び方式」(平成3年9月27日)に規定する傷病名を用いること

イ 主傷病、副傷病の順に記載すること。主傷病については、原則として1つ、副傷病については主なものについて記載することとし、主傷病が複数ある場合は、主傷病と副傷病の間を線で区切るなど、主傷病と副傷病とが区別できるようにすること。

ウ 薬剤料に関わる所定単位あたりの薬価が175円以下の薬剤の投与又は使用の原因となった傷病のうち、健胃消化剤、鎮咳剤などの投与または使用の原因となった傷病など、イに基づき記載した傷病名から判断して、その発症が類推できる傷病については、傷病名を記載する必要はないものとすること。ただし、強心剤、糖尿病薬などの投与又は使用の原因になった傷病名についてはこの限りではないこと。

エ 傷病名が4以上ある場合には、「傷病名」欄の余白に順次番号を付けて記載し、最終行の下に実線を引いてその他の記載事項と区別し、記載した傷病名に対応する診療開始日を、傷病名の右側(傷病名の右側に余白のない場合は、当該傷病名の次の行の行末)に記載すること。

オ 心身医学療法を算定する場合にあっては、例えば、「胃潰瘍(心身症)」のように、心身症による当該身体的傷病の次に「(心身症)」と記載すること。

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 診療報酬請求書等の記載要領等の一部改正に関する問答集
 (平成14年3月28日)          厚生労働省保険局医療課

問1 傷病名の記載に関し、主傷病・副傷病の区別の方法について、主傷病と副傷病の間で区切る方法以外の方法としてどのような方法があるのか。

答 例えば、主傷病の傷病名に接頭語若しくは接尾語として「(主)」と記載する方法又は主傷病の傷病名を○で囲む方法が考えられる。

問2 傷病名の記載は、必ず主傷病、副傷病の順に記載しなければならないか。

答 主傷病、副傷病の順に記載することを原則とするが、この順に記載することが困難な場合は、この限りではない。ただし、その場合にあっては、主傷病の傷病名に接頭語又は接尾語として「(主)」と記載、主傷病の傷病名を○で囲むなどして、主傷病と副傷病とが区別できるようにすること。

問3 主傷病としての記載が複数ある場合には、ある疾患を主病とする場合に限り算定できる点数を2種類以上算定できることになるのか。例えば、主傷病として「糖尿病」及び「ベーチェット病」という記載がある場合には、「特定疾患処方管理加算」及び「難病外来指導管理料」の双方を算定することが認められることとなるのか。

答 レセプト上主傷病が複数記載されている場合であっても、ある疾患を主病とする場合に限り算定できる点数を2種類以上算定することは認められない。このような場合は、主傷病として記載されている疾患のうち、どの疾病が主病であるかを医療機関に判断させることとなる。

問4 副傷病については、主なものについて記載することとされているが、その具体的な範囲如何。

答 副傷病として記載する範囲については、実際に行った検査・処置等の原因となる傷病のうち、他の傷病名の記載から医学的に判断して、その発症が類推できるものについては、記載する必要はないものである。

問5 医事会計システムの電算化が行われていない保険医療機関又は保険薬局の届け出に関し、届け出の様式は定められていないのか。

答 特段の様式は定められていないところであるが、別添様式を参考とされたい。なお、医事会計システムの電算化が行われていないものとして届け出のあった保険医療機関及び保険薬局の数については、定期的に報告を求める予定である旨を申し添える。

問6 医事会計システムの電算化は行われているが、従来よりシステム上、薬剤名等が記載できないものを利用している保険医療機関又は保険薬局については、薬剤名等を省略できる旨の届け出はできるのか。

答 このような保険医療機関又は保険薬局については、新たにシステムを入れ替えるまでの間は、届け出をすることができるでものである。


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