玖珂郡医師会管内の要介護認定結果

 先日WAMNETで検索していたら、12年秋の全国都道府県・市町村の介護保険・要介護認定数・要介護度がまとめて報告されていました。13年9月末の集計で14年2月に集計結果がまとめられたようです。

 全国の要介護認定数は、要介護者275万6千人であり、当初の要介護数280万人の予測にほぼ合致しています。山口県では47,000人程度です。介護度の分布もほぼ全国並みでしょう。表の中の%は私が計算した概数です。
 この集計結果より考察しました。

表-1

要支援

要介護1

要介護2

要介護3

要介護4

要介護5

合計

重度認定率

岩国市

255

640

616

485

375

298

2,669

%

10

24

23

18

14

11

25

山口県

6,786

13,792

8,419

5,975

6,166

5,792

46,930

%

14

29

18

13

13

12

25

全国

34.3

78.1

52.2

37

37.6

36.4

275.6

万人

%

12

28

19

13

14

13

27

 表-1は隣の岩国市・山口県・全国の要介護度別の認定数とその割合を示します。重度認定率とは要介護4・5の割合を足したものです。この表で見ますと岩国市は県や全国平均に比べると「要支援・要介護1」の軽度認定者が少し少なく、「要介護2・3」の中等度認定者が多い傾向がみられます。

玖珂郡医師会管内町村別の要介護認定数

 さて、我々玖珂郡医師会管内には玖西地区・玖北地区の2つの認定審査会があり、玖西地区では3つの合議体、玖北地区は2つの合議体があります。
この2地区の人口・65歳以上人口・高齢化率・現在の介護保険料などを表-2に示します。人口統計は12年度の国勢調査の結果を参考にしています。認定数は厚労省の集計で、申請率は65歳以上の人口に占める認定審査数を表しています。現実には65歳以下の認定審査も行われているわけですが、この申請率は65歳以上としました。
表-2

町村

総人口

65歳以上

高齢化率

認定審査数

申請率

介護保険料

玖珂町

11,245

2,620

23.3%

287

10.9

2,833円

周東町

14,616

3,873

26.5%

662

17.1

2,936円

玖西地区

25,861

6,493

25.1%

949

14.6

錦町

4,219

2,025

40.8%

192

9.5

2,800円

美川町

1,928

791

43.3%

115

14.5

3,223円

美和町

5,271

1,739

33.3%

297

17.1

3,000円

本郷村

1,375

591

43%

87

14.7

2,900円

玖北地区

12,793

5,146

40.5%

691

13.4


 玖西地区は玖珂町・周東町の2町で近隣の岩国市・徳山市のベットタウン化が進んでいます。玖珂町は県全体の過疎化が進む中、少しではありますが年々人口は増えています。主として農村です。高齢化率は25%程度です。
 一方玖北地区は錦町・美川町・美和町・本郷村の3ヵ町村で島根県・広島県の県境にも接し過疎化・高齢化が進んでいる地域で高齢化率は40%を超えます。ただ美和町だけが岩国市への交通アクセスが便利になり少し高齢化率が下がっています。

 この数字を見て玖珂郡医師会管内の6ヵ町村で気づくことは、玖西地区では周東町の要介護認定審査数が662名で、玖珂町の287名の2.3倍(人口は1.5倍)と多いこと、玖北地区では美和町の申請者が玖北地区では群を抜いて多い事が分かります。周東町の場合高齢化率も玖珂町と比べてそれほど多くはありませんので、認定数の差や、65歳以上の人口数に占める認定審査数の割合「申請率」が玖珂町10.9%、周東町17.1%の差の原因を調べることは必要だと思います。

 また玖北地区では、高齢化率の一番少ない美和町で認定審査数が多く、申請率も17.1%と一番高くなっており、このことも原因を調べる必要があります。特に高齢人口の多い錦町と比べても、錦町では認定数は100人以上少なく、申請率も9.5%ですので、その差はなぜなのか検討することが必要ですが簡単にかたづけられる問題ではなさそうです。

表-3

町村

要支援

要介護1

要介護2

要介護3

要介護4

要介護5

合計

重度認定率

玖珂町

52

85

55

32

38

25

287

63

%

18

30

19

11

13

9

22

周東町

110

190

110

68

96

88

662

184

%

17

2

17

10

15

13

28

錦町

14

57

36

23

30

32

192

62

%

7

30

19

12

16

17

32

美川町

8

36

22

14

21

14

115

35

%

7

31

19

12

18

12

30

美和町

31

79

45

47

64

31

297

95

%

10

27

15

16

22

10

32

本郷村

5

28

17

17

11

9

87

20

%

6

32

20

20

13

10

23

 表-3は玖西地区・玖北地区の認定審査の要介護度別の集計結果です。
 玖西地区・玖北地区では別々の認定審査会ですが、玖珂町・周東町は同じ合議体の認定審査ですし、玖北地区も同様ですので、要介護度の分布には町村間の審査会での差はありません。
 玖西地区を見ると、申請率の高い周東町は要介護度で要介護4・5の比率「重度認定率」は28%と玖珂町の22%より高くなっています。また、玖北地区では本郷村を除き地区全体で県や全国に比べて「重度認定率」は高いのが特徴ですが、その中でも申請率の高い美和町は重度認定者が多いと言えます。
 この理由も玖西地区・玖北地区の広域の合議体での認定審査の差ではなく、どの町村から申請されたかは伏せて審査されるわけですから審査会の問題ではなく、町村でこれだけの差が出ることは今後の検討課題です。

表-4

訪問介護

訪問看護ST

通所介護

通所リハ

短期入所

玖珂町

1

1

60(1)

55(2)

16

周東町

2

1

30(1)

16

錦町

1

15

10

16

美川町

1

15

12

美和町

1

1

25

10

本郷村

1

20

10

介護福祉施設

介護保健施設

介護療養型施設

ケアハウス

グループホーム

玖珂町

54(1)

70+50(2)

52+98(2)

50(1)*

9(1)**

周東町

84(1)

51(1)

50+39(1)

36(2)***

錦町

54

50

美川町

53

美和町

70

本郷村

30

 他に玖珂町に養護老人ホームがありますがこれは介護保険対象外の施設です。
 施設は定員と( )は施設数を表しています。
 ケアハウスとグループホームの黄色の背景は開設予定(一部4月開設を含む)の施設です

 *  ケアハウスエルベ 14年4月・** グループホームへいせい  14年4月開設 
 *** グループホームだんけとーく14年8月、グループホーム秀東館 蓮華14年7月開設予定 


 表-4は6ヶ町村の介護サービス提供施設の一覧です。
 上段が在宅サービス・下段が施設サービスです。
 玖西地区の玖珂町・周東町を比べて見ると通所サービス(通所介護・通所リハ)、施設サービスとも玖珂町の方が多いことがわかります。周東町には通所リハを行う施設はなく、介護保健施設ありませんし、介護療養型医療施設の定員も玖珂町の半数です。これらの現状からは要介護認定審査の申請者数が周東町の方圧倒的に多い理由は理解できません。
 そのほかの施設の定数差があるのは、周東町でのケアハウス定数の問題だと思います。

 ケアハウスには一般的なケアハウスと特定施設入居者生活介護施設として認可された有料老人ホームがあります。ケアハウスの入所の対象は原則として、60歳以上で、自炊ができない程度の身体機能の低下などが認められ、または高齢などのため独立して生活するには不安が認められるものとなります。身の回りの事は出来ることが条件で。食事付きの軽費老人ホームという位置づけがなされています。

 一般的なケアハウスでも介護が必要になってきた時には、要介護認定を申請し要介護度が認定されれば、ケアハウスに居ながら通所系の介護保険サービスを受けられるため、ケアハウスでの介護サービスが行われています。また施設の人員配置や介護度の特定施設に認可されれば、介護保険対象施設となり通所系のサービスも施設サービスも介護保険で賄う事となっています。

 一方有料老人ホームも国の基準を満たす施設基準・人員配置を行えば、特定施設入居者生活介護施設として介護給付(介護サービス)が施設において受けられるようになります。この施設では基本料金の自己負担とは別に要介護度に応じて入居費用にも介護保険から給付されます。要支援 1日2380円、要介護1 1日5490円、要介護2 6160円、要介護3で6830円、要介護4 7500円、要介護5では8180円と決まっています。自己負担はこの金額の1割です。入所の対象が身の回りのことが出来る事になっているのに要介護4・5の料金設定がなされていることも理解できにくいことですが、介護保険では介護施設の不足分を補うために、各地に設置が進められています。しかしこれにも制度上一つ大きな問題を含んでいます。
 ケアハウス・有料老人ホームの場合、原則として入居者の住所をその施設の所在地に置くことになっており、これが大きな問題だと思います。現在の他の介護施設では介護保健施設・介護療養型医療施設は、医療施設として入院として捉えられていますので病院を患者さんの居住地にすることはありませんので、その施設の入所者がすぐその町村に影響することはありませんでした。介護福祉施設も一般的には、入所前の住所での申請となっています。
 従ってその町村に介護施設が増えてもその定員数がすべてその町村の介護者ではありませんでした。

 しかし、ケアハウスや特定施設入居者生活介護施設、今後認可が進むグループホームなどの施設入所者の住民は、介護保険制度で今後介護施設のある市町村に住民票を移すことが基本になれば、小さな自治体では40-50名の要介護申請者が一気に増えてしまうので、介護保険料に直接影響してしまうことは誰の目にも明らかです。

 玖珂町・周東町では黄色の施設は今後開設予定ですので、認定数も増えるだろうと思います。そうなれば介護保険料の大幅アップは避けられそうにありません。表-2に6ヶ町村の現在の介護保険料を示していますが、周東町では現在の2936円では大きな赤字となり大幅な増額しかない現状です。今期から保険料のアップが決まりましたし、今後も年々アップが予測され、全国でも有数のアップ率になる予測とのことです。

 介護施設の住民登録システムを考慮しないと大都市周辺で医療産業の進出する町村は大変になります。介護保険では施設入所の際には入所先の住所での申請は行わないことなど厚労省にも再考をお願いしたいと思います。

 玖北地区の問題点などについてはまた考えてみます

           平成14年4月2日    吉岡春紀  


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