メディア掲載>2013年〜

一覧ページへ

2017.04.01
岡山県エッセイストクラブ作品集

「2017 位置(いち) Position 第15号、15周年記念号」

岡山県エッセイストクラブ発行
「カーナビ入門」(久本恵子)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(一部紹介)

カーナビ入門
                                 久本恵子

 カーナビにまつわる笑い話は、よく聞く。 
 私も仲間入りした。最近、車を買い替えたことで、五十歳代後半になって、
初めてやっと、カーナビの利用者となった。 
 カーナビとは、カーナビゲーション・システムの略で、車を運転しているときに
道案内をしてくれるもので、自動車の現在位置と目的地への道順を、人工衛星等を
使って、自動車に搭載した画面に表示する装置である。 
 取扱説明書をろくに読まないまま、モタモタ触っているので、使い方が今ひとつ
のみ込めていない。だからだろうが、この前の経験は笑えた。 
 私は、岡山県南の倉敷市に住んでいる。東隣が、県庁所在地、岡山市である。
2015年国勢調査によると、岡山県の人口は、約192万人、岡山市の人口は約
72万人、倉敷市の人口は約48万人である。二つの都市で約120万人、県人口
の約6割を占める。岡山市街地には、車でよく出かける。わが家から東へ約30q、
片道約1時間で着く。 

 岡山市内のあるお店で人と会う約束をして、そういえば、何年も前に行ったきり の場所で、ちゃんと行けるかな、と思った。よし、今日こそカーナビを利用しよう と、住所を入力して、目的地をセットした。ここまではよかった。さあ、車を発進、 カーナビをオンにして、ルートガイドが始まった。
 問題は、ここからだ。画面上のルートガイドに合わせて、若い女性のさわやかな
声が、最短の効率よい主要道路を通れ、と音声でも案内してくれる。
 自宅近くの、狭い一般道から、広い主要道路の国道へ誘導しよう、誘導しようと
する。交差点が来る度に、左へ、左へと、うるさい。 
「およそ300メートル先、左方向です」 
「まもなく左方向です」 
「左方向です」 
 あいにくだが、私は左方向になど行きたくない。つまり、左方向に進んで、わが家
から北側の主要道路の国道には合流したくないのだ。今日は、普段あまり通らない、
わが家から南側のルートを通って行きたい、そういう気分である。そういう気分は、
装置には読み取れない。 

 左へ、左へというルートガイドの声を無視して、曲がらず直進する。すると、ナビは、 突然、「右です」とか、「左です」とか混乱した後、しばし沈黙してしまう。どうだ、 わかったか、指図ばかりしてくれるな、という気持ちになる。そのうち、現在地から 再探索するらしく、私のわがままを容認してくれるようで、澄ました声で、「しばらく 道なりです」とか言うのだ。あんなに慌てたくせに、と、つい装置を擬人化してしまい、
車内で一人、大笑いしてしまった。


(以下、略)

 

〜「あとがき」より、一部引用始まり〜


○  今回は十五周年記念号と冠して発刊しました。
   早いもので「位置」は第十五号となります。全てを本棚に収めると、幅が十五センチ
  メートルに達しようかというものです。
   約半数の会員から寄稿がありいずれも力作でした。
  (中略)
   十五年は一つの節目。今後とも「言葉の表現力の大切さ」を意識して、さらなる飛躍
  を願っています。

〜一部引用終わり〜

 

 岡山県エッセイストクラブ作品集「2017 位置 Position 第15号」(A5判、212P、全9章、66編)
  2017年4月1日発行
  発行 和光出版(岡山市南区豊成)   印刷 昭和印刷株式会社   編集 岡山県エッセイストクラブ   定価 本体1,200円+税

 

▲ このページのTOPへ     

メールマガジン配信中お問い合わせ