第5章
マクラーレン・ホンダの逆襲

 私にとって太田の敗北は小さな波乱であったが、4回戦では一つ大きな波乱が起こっていた。1回戦で「水戸黄門」が敗れて以降、我が「矢倉三人衆」とともに本命視されていた「イワテ・マックラーレン・ホンダ」が「ヤクルト三位」に敗れたのである。金星をあげたのは青葉譜6号編集長、矢部である。強豪及川氏の強襲をかいくぐりみごとに勝ちきった棋譜は、青葉譜6号に収録されている。
 「イワテ・マックラーレン・ホンダ」は一敗したもののまだ優勝の目はあり油断ならない。そして私の相手は、元東北学生名人佐々木(泰)氏である。
 しかし、私は全くプレッシャーを感じていなかった。なぜなら、私が敗れ、「矢倉三人衆」は勝つことを確信していたからである。
 佐々木氏とはこれまで確か三勝一敗、一敗は私がかぜでダウンしていたときのものであるから、内容的に圧倒している。しかし、佐々木氏は私よりずっと強いと私はかねがね思っていた。初手合いの一敗で私にはそれが感じられた。
 二回勝つことが出来たのは、二つとも私のもっとも得意とするはまり形にはまってくれたためであり、3回目の勝ちは勝算のない私が児玉流カニカニ銀の奇襲(これが私の公式戦唯一の矢倉?である)を成功させたためである。
 4回戦目で体力を消耗し尽くした私は、もはや奇襲をかける気力もなく、敗北を待つのみであった。
 一方、私が勝つ必要がないという事情もあった。佐々木氏に対しては私はほとんど当て馬のようなものである。太田、鈴木ともに全勝は逃しているものの、本来、全勝が狙える器である。きっと勝つはずと私は思い、事実そうなった。



解説:
 この章で、公式戦矢倉勝率10割、の正体が明らかになった。わたしゃようするに中飛車ならなんでもよいのかもしれない。

 ところで、佐々木氏は私への復讐に燃えていたはずである。歯ごたえがなくてがっかりさせてしまったかもしれない。


第7章
矢倉三人衆、新たなる旅立ち


 クライマックスが欲しい方はもう一度 第6章

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