内容が見えない施設介護サービス


 介護保険制度も少しずつ制度の骨格は見えてきましたが、認定審査や各市町村でのサービス供給体制はその準備が追いつかない状況です。しかし、厚生省は「走りながら考える」との方針ですので平成12年4月からは実施の方針です。現在、介護サービスの内容もわかっているのは主として在宅介護サービスが中心で施設サービスについては、ほとんど公開されていません。
そこで、今回は施設サービスの問題について述べてみます。
 施設サービスとは特別養護老人ホーム・老人保健施設・介護型療養型病床群への入所・入院サービスの事です。
 介護保険制度後、これらの施設にどんな人が入所・入院して、認定要介護度に応じてどんなサービスを受けられるのか、自己負担はどうなるのかが、まだわかっていないと言う事です。
 ただ一つ介護保険制度の発足時点で、特別養護老人ホームに入所されている方は認定介護度に関係なく(自立・要支援と判定されても)5年間の入所は継続できると言う事くらいでしょうか。しかし現在、老人保健施設・療養型病床群に入っていて認定審査で自立・要支援となつた方は介護保険制度の適応はなく老人保健の給付となるようですがその期間などは不明です。

 施設サービスの介護給付と利用者負担については、先日各家庭に配布された山口県のパンフレットでは、平成10年の単価であり、このまま介護報酬の額ではないと小さく但し書きはありますが、平均給付額は特別養護老人ホームで31.5万円程度、老人保健施設で33.9万円程度、療養型病床群、老人性痴呆疾患病棟で46.1万円程度となっおり、自己負担はこの1割と食事代は定額自己負担となっています。これには平均サービス額だけで要介護度に応じた給付額は公開されていません。食事代は現行制度の1日760円だとすれば月2.3万円となりますので、自己負担は先の額より食事代を引いた金額の1割となるわけで、介護保険により給付される額は平均すると、特別養護老人ホームで2.6万、老人保健施設で2.8万、療養型病床群3.9万と食事代2.3万の合計と言うことになります。またこれらの施設サービスでも要介護度別に5段階の認定がされるわけで、それに応じて自己負担も変わるようですが不明です。平均ということは、要介護度5で特別養護老人ホームに入所する場合と、要介護度が1-2で療養型病床群に入院する場合など、在宅サービスの金額を当てはめるのか、当てはめたとしたら大きな矛盾が出てきます。もっと自己負担がある場合と、もっとサービスを受けられるのに、というおかしな問題です。
 従って現時点では要介護度別の施設での自己負担と、要介護度が低い場合に介護給付額と施設の基準額の差額を自己負担するかどうかも決まっておりません。
 これは施設を利用する患者さんにとって大きな問題で早急に知らされるべきだと思います。
 また、施設での介護度に応じた介護サービス内容は設定されていません。むしろ在宅サービスと違って難しいと思います。施設入所に要介護度別の差を付けたサービスを行いなさいとでも言うのでしょうか。
 一般にこれらの施設では食事の介助、洗面入浴の介助、リハビリ・リクレーション、排尿排便介助、医療を伴った介助、医療などはその人その人の状態にもよりますが、その施設の基準で介護者の状態にあった介護を行うことになり、要介護度によって差を付けることは無いと考えます。
 例えば週2回の入浴介助サービスを介護度が低いから1回にするとか、オムツの交換を自分でしなさいとか、リハビリの回数を減らしたり、回診の回数を減らしたり、要介護度以上のサービスは自己負担としますでも言うのでしょうか。
施設サービスには要介護度の5段階の認定は不要だと思います。
 現在の施設では、病態・介護度は様々ですが措置費や入院費は一人あたりの単価は定額制で一定でありその方が利用者にもわかりやすいと考えます。

 また療養型病床群では介護型・医療型に分けて介護保険制度の対象者は介護型療養型病床群で介護することは決まっていますが、医療機関内でどのように分けるのか、病棟単位なのか病床単位なのか、いつ申請して認可を得るのか、介護認定者は介護型療養型病床群の病棟以外には入院出来ないのか、医療型療養型病床群の位置づけは、などなにも決まっていません。
 病床の削減規制が進められ、今年のようなインフルエンザ流行期には病床が足らず厚生省も過剰の入院を認める通達を出したように、急性期病棟・慢性期病棟・介護型・医療型とわけて、その相互利用が出来なくなるようにするような、あまりに厳しい制限を設けると対応出来なくなる可能性があります。
 療養型病床群は単位は1つとして介護型も医療型と分ける必要はないと思います。要介護認定者はそのなかの介護保険制度の要介護者とすることで良いのではないかと思います。そして療養型病床群では介護保険型も医療保険型も定額部分の入院費用は一定とし、整合性を計る方が介護保険制度の介護給付と老人医療の医療費との関係もスムーズにゆくと思います。勿論ここで現行の看護者の割合による施設基準4:1とか3:1とかは療養型病床群では一律にするのか、看護者の割合によって1日単価に差を付けるのかは議論する必要があります。
 どの施設も施設基準に応じた設備投資や人員の配置は行っているわけですから、要介護度によって極端に差が出ることは経営的にも大きな問題となりますし、入所・入院されている方にも、介護度で自己負担に差が出るならば不満が出るものと思いますし、病床の有効利用も行えます。
 従って施設サービスには要介護度別の保険料設定は必要ないと言えます。
 そうすると介護に手の掛かる、ひどい患者さんを受け入れてくれる施設が少なくなるとの危惧はありますが、特殊な看護や介護が必要な場合には、例えば鼻腔栄養とか痴呆徘徊・褥瘡、リハビリなどは別の設定で加算すれば良いと思います。

現行制度の問題点
 特別養護老人ホームなどに入所中に病態が悪化し病院へ転院した場合の3ヶ月規約と月額の措置費について
 現在特別養護老人ホームなどの入所者の費用は措置費として、月初めの日の入所者数にその月分が支払われていると聞きます。と言うことは、その月の間に退所されたり、病院へ入院されたりしても、月初めの入所者数分は支払われることであり、月額計算です。また入院となっても3ヶ月間はその施設に籍があり、施設に入所されていなくても3ヶ月分は保証されている事になります。一方療養型病床群などの病院では1日につき定額が決まっており、月単位での医療費支払いではありません。
 介護保険制度後もこの支払いシステムは変わらないのでしょうか。このシステムは特別養護老人ホームなどの施設の運営を保証するためのシステムだとは思いますが、このままで制度を迎えると特別養護老人ホーム入所者が増悪して入院された場合、最大3ヶ月間は介護費用として特別養護老人ホームに、また医療費として病院に二重の支払いを行うことになり、療養型病床群に入院なら二重の介護費と言うこともあります。
このままでは介護者も、籍はあるが居ないのに措置費が出て1割の自己負担も二重に支払うのでしょうか。もともと月額設定というシステムも今後改めるべきだと思いますし、このシステムのまま制度が行われれば介護費用の二重払いとなります。
 一方空きベットが出来ても、月額で費用が確保されていることは、その間は新しい入所は出来ないわけですし、月のはじめに死亡退院があっても途中の新規入所は月末になるなど、病床の有効利用という面でもおかしな制度だと思います。
論議はされているのでしょうが、関係者にも通知はありません。

施設入所中に要介護度が急変した場合の対応
 高齢者の治療を行っていると入院中にも、急に介護度が変化することはよくあります。急に痴呆症状が悪化したり、転倒・骨折したり、感染症でADLが変わったり、数ヶ月間同じ介護度で済むことは少ないと思います。こんな時要介護度が決められ、すぐに変更できねばそのままの基準で介護サービスを行うしかないのでしょうか。在宅サービスでも同じ様な問題は起こる可能性はあります。再認定を頻回に行うことも必要でしょうが、現状では認定審査会はそんな時間の余裕はないと思います。介護度の急変に対する対応の方法も、介護保険制度発足までには決めて欲しいと思います。
その他、施設入所者のケアプラン作成についても問題はありますが、またの機会にしたいと思います。

 以上施設サービスの問題点を考えましたが、発足まで1年を切った現在施設サービスについて何もわかっていないのが現状で、施設入所者、家族、施設関係者はどう対応すべきか不安な毎日です。
           平成11年3月21日  玖珂中央病院 吉岡春紀



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