要介護区分の状態像・介護サービスの利用事例



 各要介護区分の状態像の例(平成10年度モデル事業)
 要支援状態
  要介護状態とは認められないが社会的支援を要する状態。
  日常生活の活動の際に、残存能力を保持し向上させる必要が認められる場合、 失われた
  能力をとり戻すような支援が必要な場合等をいう。
  日常生活を遂行する能力は基本的に備わっているが、「歩行」「両足・片足での立位保持」
  「立ち上がり」などに不 安定さが見られ、「つめきり」に一部介助が必要な場合が出てくる
  場合、 「浴槽の出入り」「洗身」などに一部介助が必要な場合、「薬の内服」「金銭の
  管理」等の 社会生活の上で一部介助が必要な場合、などがある。

 要介護状態区分1
  生活の一部について部分的介護を要する状態。
  日常生活を遂行する能力の中では「立ち上がり」「両足・片足での立位保持」「歩行」
  「座位保持」など全般にわたり不安定さが見られることが多く、「排尿後の後始末」
  「排便後の後始末」の間接的な介助を必要とする場合や、「浴槽の出入り」「洗身」に
  関連する一部介助または全介助が必要な場合が多い。
  また、「口腔清潔」「洗顔」「整髪・洗髪」「爪切り」など「清潔・整容」全般
  (以下「清潔・整容」)に一部介助が必要な場合が多く、「ボタンのかけはずし」 「上衣の
  着 脱」「ズボン等の上下」「靴下の着脱」などの「衣服着脱」(以下「衣服着脱」)
  に関し、一部介助等が必要な場合や、「居室の掃除」「薬の内服」「金銭の管理」等の
   社会生活の上で一部介助または全介助が必要な場合が多い。「物忘れ」などが見られる
  ことがあるが、それ以外に問題行動はほとんどない場合が多い。

 要介護状態区分2
  中等度の介護を要する状態。
  日常生活を遂行する能力の中では、「立ち上がり」「両足・片足での立位保持」「歩行」
  「座位保持」など自力では出来ない場合が多く、「排尿後の後始末」「排便後の後始末」の
   間接・直接的な介助を必要とする場合が増加し、「浴槽の出入り」や「洗身」などの
  「入浴」に関連する一部介助または全介助が必要な場合が多い。
  また「清潔・整容」全般に一部介助が必要な場合が多く、「衣服着脱」に関し、見守り等
  が 必要な場合、「居室の掃 除」「薬の内服」「金銭の管理」等の社会生活の上で一部介助
  または全介助が必要な場合が多い。「毎日の日課」や「直前の行為」の理解の一部に低下が
  見られる場合、「物忘れ」や 「まわりのことに関心がない」といった行動が見られる場合も
  多い。

 要介護状態区分3
  重度の介護を要する状態。
  日常生活を遂行する能力の中では、「立ち上がり」「両 足・片足での立位保持」「歩行」
  「座位保持」など自力では出来ず、「排尿後の後始末」「排便後の後始末」の全面的な介助を
   必要とする場合が増加し、「浴槽の出入り」「洗身」が全介助が必要な場合が多い。
  また「清潔・整容」全般に一部介助や全介助が必要な場合が多く、「衣服着脱」に関して
  全介助が必要な場合や、「居室の掃除」「薬の内服」「金銭の管理」等の社会生活の上では
  全介助が必要な場合が多い。「毎日の日課」「生年月日」「直前の行為」「自分の名前」
  など理解全般にわたって低下が 見られる場合、「物忘れ」「まわりのことに関心がない」
  ほか「昼夜逆転」「暴言・暴行」 「大声を出す」「助言や介護に抵抗する」といった行動が
  見られるようになる。

 要介護状態区分4
  最重度の介護を要する状態。
  日常生活を遂行する能力はかなり低下しており、「入浴」「排泄」「衣服着脱」 「清潔・
  整容」の全般にわたって全 面的な介護が必要な場合が多い。その他、 「食事摂取」の見守り
  や部分的な介助が必要で、「尿意」「便意」が見られなくなる場合も多い。「毎日の日課」
  「生年月日」「直前の行為」「自分の名前」など理解全般にわたって低下が見られ 「物忘れ」
  「まわりのことに関心がない」ほか、「昼夜逆転」「暴言・暴行」「大声を出す」 「助言や
  介護に抵抗する」「野外への徘徊」「火元の管理ができない」といった問題行動が増えてくる。

 要介護状態区分5
  過酷な介護を要する状態。
  日常生活を遂行する能力は著しく低下しており、生活の全 般にわたって全面的な介護が
  必要である。 特に「嚥下」に 障害がある場合は自力での摂取が困難なため必要な介護度が
  増加する傾向がみられ、 「意思の伝達」がほとんどまたは全くできない場合が多い。
  「毎日の日課」「生年月日」「直前の行為」「自分の名前」など理解全般にわたって低下が
  見られ、 「物忘れ」や「まわりのことに関心がない」ほか、「昼夜逆転」「暴言・暴行」
  「大声を出す」 「助言や介護に抵抗する」「野外への徘徊」「火元の管理ができない」と
  いった問題行動がみられる 場合が多い。


 これらの区分とサービスの概要を表にします。
 この区分に示された高齢者の状態像と要介護度は、臨床の現場で理解でき、納得できますが
 今回のモデル事業で使われた、「推定介護時間」なる分類は高齢者の病態像と全くかけ離れて
 おり、要介護者の認定に問題のあった部分です。
 下に推定介護時間も再掲しておきます。
/ 要支援 要介護度(1) 要介護度(2) 要介護度(3) 要介護度(4) 要介護度(5)
/ 虚弱 軽度 中度 重度 痴呆 最重度

高齢者

状態像

食事・排泄・着脱のいずれもが概ね自立 しるが、生活管理能力が低下する等のため時々支援を要する 食事・排泄・着脱のいずれもが概ね自立 しているが、一部支援を要する 食事・着脱は何とか 自分で出来るが、 排泄は介護者の一部介護を要する 食事・排泄・着脱のいずれにも介護者の一部介護を要する 身体状態様々であるが重の
痴呆状態をしており、食事排泄・着脱のいずれにも介護者の全面的介護を要する
寝返りを打つことが出来ない寝たきりの状態であり、食事・ 排泄・着脱のいずれにも介護者の全面的介護を要し、1日中 ベットの上で過ごす

日常
生活

日常生活の能力は基本的にあるが、入浴 衣服の着脱などで週数回の介護が必要 立ち上がりや歩行が不安定。衣服着脱、掃除などで毎日1回の介護が必要 起きあがりも自力では困難。食事・排泄入浴などで毎日1回の看護が必要 起きあがり、寝返りが自力では出来ない 毎日2回の介護が必要 日常生活の能力はかなり低下。意志疎通が 出来ない人も。1日 3-4回の介護が必要 生活全般にわたり、部分的または全般的な介護に頼る。1日5回以上の介護が
必要

寝返り 自分で出来る 自分で出来る 自分で出来る 自分で出来る 自分で出来る 自分では
出来ない
排泄 概ね自分で
出来る
何とか自分で出来る 一部介助を
要する
一部介助を
要する
介助を要する 介助を要する
着脱 概ね自分で
出来る
何とか自分で出来る 何とか自分で出来る 一部介助を
要する
介助を要する 介助を要する
摂食 概ね自分で
出来る
何とか自分で出来る 何とか自分で出来る 何とか自分で出来る 介助を要する 介助を要する
入浴 概ね自分で
出来る
一部介助を
要する
一部介助を
要する
一部介助を要する 介助を要する 介助を要する
調理 時々支援を
要する
一部支援を
要する
一部支援を
要する
困難 困難 困難
掃除 時々支援を
要する
一部支援を
要する
一部支援を
要する
困難 困難 困難

要介護度分類ごとの高齢者の状態と・推定介護時間

/ 要支援 要介護1 要介護2 要介護3 要介護4 要介護5
高齢者の
状態像
社会的支援
を要する
生活の一部
に介助を
要する
中等度の
介護
重度の
介護
最重度の
介護
過酷な介護を要する
推定介護
時間
1日あたりの要介護時間

5分以上
1日あたりの要介護時間が
30分以上
65分未満
1日あたりの要介護時間が
65分以上
100分未満
1日あたりの要介護時間が
100分以上135分未満
1日あたりの要介護時間が
135分以上
170分未満
1日あたりの要介護時間が
170分以上



それぞれの要介護度に応じた介護サービス事例
 
要支援
  機能訓練の必要性にかんがみ、週二回の通所リハが利用できる水準。
 要介護1
  排泄、入浴、清潔・整容、衣服の着脱等に一部介助等が必要な状態であり、 毎日
  何らかのサービスが利用できるサービス水準。
 要介護2
  排泄、入浴、清潔・整容等に、一部介助または全介助が必要になる状態であり、
  かなりのリハの働きかけが出来る様、週三回の通所リハまたは通所介護を含め
  毎日何らかのサービスが利用できる水準。
 要介護3
  排泄、入浴についての全介助のほか、清潔・整容、衣服の着脱に全介助が必要に
  なることから、夜間(または早朝)の巡回訪問介護を含め、一日二回のサービスが
  利用できる水準。 痴呆についてはかなりの問題行動が見られることから、週四回
  の通所リハまたは 通所介護を含め、毎日、サービスが利用できる水準。
 要介護4
  入浴、排泄、衣服の着脱、清潔・整容等の全般について全面的な介助が必要に
  なることから、夜間(または早朝)の巡回訪問介護を含め、一日二〜三回の サービス
  が利用できる水準。医療の必要度が高い場合に、週三回の訪問看護サービスが 利用
  できる水準。痴呆については、問題行動が一層増えることから、週五回の通所リハ
  または 通所介護を含め、毎日サービスが利用できる水準。
 要介護5
  生活全般にわたって全面的な介助が必要になることから、早朝、夜間の巡回訪問
  介護を含め、一日三〜四回程度のサービスが利用できる水準。 医療の必要度が高い
  場合に、週三回の訪問看護サービスが 利用できる水準。



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