180日超の長期入院の入院基本料の特定療養費化について

 厚労省は「入院医療の必要性が低いが患者側の事情により長期にわたり入院している者への対応を図る観点から、通算対象入院料を算定する保険医療機関への180日を超える入院については、患者の自己の選択に係るものとして、その費用を患者から徴収することができる」事としました。そしてこの10月から一般病棟、療養病棟、老人病等、有床診療所療養病床等への入院期間が180日を超える患者については、入院基本料の基本点数等の15%は患者負担となります。ただし、経過措置があるため、平成14年3月31日以前の入院期間を有する患者は対象から除外されたりしていますので負担の開始時期や負担割合も違います。平成16年4月より全ての6ヶ月(180日)超入院患者の入院基本料が特定療養費化されることになります。

【特定療養費とは】
 特定療養費制度とは、「健康保険法等の改正法により、それまで、診療の中に保険が適用されないものが含まれると原則としてその診療全体が保険給付外とされていた(混合診療の禁止)のを改めて、新しい医療技術の出現や患者のニーズの多様化等に対応し高度先進医療や特別のサービス等について保険給付との調整を図るために創設されたものです。特定療養費の基本的考え方は、特に定められた特別のサービス(アメニティ部分)や高度医療を含んだ療養については、療養全体にかかる費用のうち基礎的部分については保険給付をし、特別サービス部分を自己負担とすることによって患者の選択の幅を広げようとするものです。」と記載されていますが、要するに医療での給付を減らして自己負担を増やすものです。
 そして今回の180日超の入院患者に「特定療養費」を持ち込んだことは、アメニティ部分のに求めるとしたこの制度を、再診料や入院基本料などの医療本体にまでに拡大したことであり、金のあるなしで医療に差を付け、金の払えない者は出ていけという制度でもあり問題の多い制度だと思いますます。

 特定療養費の種類、
 現在、下記の通りであり、実際の自費負担にあたってはそれぞれにルールが定められています。

 1. 特別の療養環境の提供(特別室)
 2. 前歯部の金属材料差額
 3. 金属床総義歯
 4. 200床以上の病院についての初診
 5. 200床以上の病院についての再診
 6. 予約診療
 7. 診療時間外の診療
 8. 治験に関する診療(*)
 9. う触患者の指導管理
 10. 薬事法に基づく承認を受けた医薬品の授与
 11. 入院期間が180日をこえる入院
 12. 高度先進医療

そして、特定療養費については、概略次のような取扱が定められています。

1.取扱医療機関の掲示
 特別サービスのアメニティ部分などを自費負担することで、患者の選択の幅を広げようというものであり、この制度を取り扱う医療機関は、院内の患者の見やすい場所に特別サービスの内容と費用等について掲示をして、患者が選択しやすいようにする。

2.患者の同意
 特定療養費制度による特別料金方式は、患者の自由な選択によるものであり、医療機関は、事前に治療内容や負担金額等を患者に説明をし、同意を得ることになっている。患者サイドでも、特別サービスについての院内掲示をよく見たり説明を聞くなどして納得したうえで同意することが必要となる。

3.領収書の発行
 特定療養費に係る特別料金部分については、領収書を発行する。


 この様な取り扱い規定があるのですが、この様な規定を作りながら、一方では特定療養費の料金設定や徴収の有無などは医療機関の自由であるとも言われ、医療機関の裁量で徴収したり、しなかったりの、曖昧な制度になっています。矛盾していると思います。
 また本来は患者の同意を得ることが必要だとされていますが、同意されない場合の決まりはありません。アメニティ部分なら、例えば個室を出ていただくことは可能でしょうが、金を払えない人は退院していただくのでしょうか、医療機関が未収金として補填するのでしょうか。

【対象患者は】

 180日を超える入院患者は一般病棟・老人病棟・療養型病棟・診療所の入院すべてが対象になっています。この中で精神病棟や結核病棟の入院は対象から外されているようですので、精神科や結核の長期入院は徴収されないと思います。社会的入院と言われる高齢者以外の長期入院は主に精神科入院ですが、ここには手を付けていないようです。ただ老人だけでなく、若年者でも長期入院患者には適応されると言うことです。

【入院期間の算定】

 「退院の日から起算して3ケ月以上(悪性腫瘍又は「特定疾患」に罹患している患者については1ヶ月以上)の期間、同一傷病について、いずれの保険医療機関に入院することなく経過した後に、入院した場合は、現に入院している保険医療機関において通算対象入院料を算定していた期間を通算するものであること。」と定義されています。分かり難い表現ですが、要するに3ヶ月以上の期間、どの医療施設にも入院していなければ、入院期間の算定はリセットされ、新たな入院となるという事です。そしてこの算定期間は「同一傷病について」とされていますので、退院後別の新たな傷病で入院した場合には通算されないと言うことでもあります。

 また今回は、「同一の保険医療機関内の介護療養病床等に3ケ月以上(悪性腫瘍又は「特定疾患」に罹患している患者については1ヶ月以上)の期間入院した場合については保険医療機関の入院だけで介護療養病床の入所はカウントされない」とされていますし、その他の介護福祉施設・介護保健施設など介護施設入所の期間もカウントされない様です。従って介護施設に3ヶ月以上入所されて、急病や急変で病院に転院した場合には、新たな入院となりますので特定療養費の負担は発生しないと思います。

 しかし他の医療機関からの転院の場合には、入院日数は過去の病院の入院日数を通算して入院日数を算定することになっていますので、注意が必要です。特に数カ所の医療機関を転々としたり、転院や入退院を繰り返したりしていると日数算定は複雑になります。
 特に事務の現場で問題になっているのが、レセプトの請求時にこの入院期間の通算をコンピューター処理が出来るのか、どのように入力するのか、レセコン業者の対応もまだ出来ていないようです。

【転院時の診療報酬の請求方法】

 他院から紹介されて転院した場合の入院料の算定については、転院先の医療機関では入院の日より新たな入院として通常の計算で入院料や治療料を算定できますが、紹介先ですでに180日を超えて転院した場合には、入院基本料の15%は個人への請求となります。
 急性期病院への転院の場合などでは、一般病棟の入院は入院費のうち純粋な入院基本料の15%ですが、療養型病床など包括化病棟では治療・検査・処置なども入院基本料に含まれているため、これらの治療・検査・処置を含んだ入院基本料の15%となり、入院基本料15%の負担という事自体にも色々矛盾があります。緩和ケア病棟などに転院した場合では包括化された入院基本料は1日38000円と高額ですが、同じく15%なのでしょうか。緩和ケア病棟は除外されるのでしょうか。

 例えば療養型病床に1年以上入院している方が、新たに骨折や手術が必要となって一般病院に転院したときには、転院先の病院の診療報酬請求額は、「新たな傷病」とすれば、特定療養費として自己負担の請求はありませんが、すでに診断されて治療している癌の悪化や、心不全の悪化など同じ病気の悪化の場合に転院したときなどは、主病の継続と言うことで転院先の病院は入院基本料の15%は保険請求できませんので、患者さんにその病院の入院基本料の15%を請求することになります。
 説明していてもこんがらがってしまいますが、どれが主病なのか、新たな傷病の入院なのか判断は難しいものと思いますしレセプトだけで判断出来るのでしょうか。

【実施の方法と経過措置

 激変緩和をはかるため、特定療養費としての負担割合は平成14年10月からは入院基本料の5%、平成15年4月以降は入院基本料の10%、平成16年4月より全面適用となり入院基本料の15%負担となっています。

 入院基本料は病棟の体制や看護配置によって差がありますが、15%の負担の場合、金額にすると1ヶ月で普通5〜6万円程度の負担増になります。
 但し包括化された病棟では治療・検査・処置を含めた医療費の15%が個人負担となります。緩和ケア病棟なら17万円程度の自己負担が増えることになります。勿論この負担金は一般の医療費と違って混合診療分ですので高額医療費の還付が受けられるものではありません。

【経過措置

 平成16年4月からは180日を超えた入院患者は入院基本料の15%を特定療養費として自己負担するわけですが、前述の負担割合の額とともに、入院期間でも経過措置が設けられています。

 この制度が制定された平成14年3月31日以前の入院者については、下記のような経過措置が設けられており、経過措置対象者といいます。

 但し平成14年4月1日以降の入院の場合については、特段の経過措置は設けられていません。

 平成14年3月31日以前に入院した事が確認された場合には、少し複雑な措置が決められています。

 経過措置の対象者は
 @ 平成15年3月31日までの間は、選定療養には該当せず、特別の料金を徴収することは認められないこと。

 A 平成15年4月1日から平成15年9月30日までの間は、経過措置対象者については、入院期間が3年を超える入院のみが選定療養に該当し、入院期間が3年を超えない患者からは、特別の料金を徴収することは認められないこと。

B 平成15年10月1日から平成16年3月31日までの間は、経過措置対象者については、入院期間が2年を超える入院のみが選定療養に該当するものであり、入院期間が2年を超えない患者からは、特別の料金を徴収することは認められないこと。

この通達の解釈がまだ十分に確認され、支払基金に問い合わせていますが厚労省に確認中とのことです。

表-1に、表してみます。 経過措置対象が3つに分かれ負担発生時から赤棒にしています。

表-1

180日超える入院患者の特定療養費化

負担率の経過措置期間

過去の
入院期間

平成14年

平成15年

平成16年

4月1日

10月1日

4月1日

10月1日

4月1日

自己負担割合

自己負担5%
自己負担10%

自己負担15%

経過措置対象者

3年超え

2年超え

2年未満

経過措置対象外

4月1日以降

 最下段の平成14年4月1日以降に入院された方は、経過措置対象から外れ10月1日以降に通算して入院が180日を超えた時点で自己負担が発生します。まず負担は5%からで、15年4月から10%になり、16年4月から15%となります。

 経過措置対象者(14年3月31日以前からの入院)は15年4月までは自己負担はありませんが、15年4月1日から9月31日までの間は、入院期間が3年を超えた場合に徴収する事になっています。この3年を超える時の解釈に問題があり、14年4月1日時点で3年なのか、15年4月1日から9月31日までの間に3年になる者なのかが不明瞭です。この期間に3年を迎える者と考えるべきだと思います。
 経過措置対象者を設定した14年3月31日の時点での3年・2年超える入院ではないと考えます。

 しかし、経過措置は14年3月31日時点で判断するのなら分かり易いのですが、上記の文では理解不明です。
 例えば14年3月31日の時点で入院2年超え、1年超え、1年未満の3ランクに分けてそのまま上の経過措置の対象とするならば分かり易いと思います。

 または、経過措置の対象は外して、全員180日を超えた時点で負担金だけ14年度は5%、15年度10%とする方が理解されやすいのではないでしょうか。非常にわかりにくい経過措置ですし、今後また確認が必要です。

 問題は14年3月31日の入院なら10月初めには180日を超えますが、16年4月1日までは自己負担はないと言うことです、しかし翌日の14年4月1日に入院された方は10月1日から5%の負担があるということで、たった1日の差で1年半も負担があったり、無かったりで経過措置自体が意味不明で、説明不能です。

 また4月1日時点の入院期間の算定についても、自院の入院や、直前の紹介入院は把握できますが、それ以前の数年間の入院期間算定はかなり難しいものもあり、その間に入退院でもあれば退院期間を算定に加えるのか暦の期間とするのか、現場では問題があると思います。

【選定療養の対象者】

 下の表-2に示す疾患は選定療養に該当せず、特別な料金を徴収することは出来ないとされています。この基準は90日を超える高齢者の一般病院入院の基準にも示されていますが、特定療養費の説明では但し書きが添えられており、現場では混乱しています。

 例えば3の重度の肢体不自由者などの説明では
「C 重度の肢体不自由者については、「障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準」の活用についてにおいてランクB以上に該当するものが対象となるものであり、ランクB以上に該当する旨を診療報酬明細書に記載すること。」となっていますが、寝たきり度のBランクを重度の肢体不自由とするのかどうかは臨床の現場・介護の現場ではとらえ方が異なります。90日超えの場合にはこのランクが対象となる説明はありません。

 勿論Bランク以上の自立度なら特定療養費の対象から外されることになり、多くの方が選定の対象外となる可能性があるので歓迎すべきですが、問題は身体障害・肢体不自由の少ない内臓疾患患者です。この方たちは身の回りの事は何とか出来るが、在宅の自立した生活は困難な場合が多く、心不全にしろ、呼吸不全にしろ身体障害者の認定を受けても自立度はJ-Aランクが普通でBランクに届かない事の方が多く、これらの慢性疾患で治療の継続が必要な患者をどうするのかが大きな問題だと思います。内臓疾患の要介護度が実状を反映していないことは、動ける痴呆の要介護認定と同じく介護保険の要介護認定ソフトの欠陥として問題になっていることですが、特定療養費の決定にも、肢体不自由が主体の生活自立度判定だけが取り上げられたことは問題だと考えます。

 4.の悪性腫瘍なども一部は対象から外されていますが、それは「重篤な副作用を有する抗癌剤を投与している場合」だけが対象で、これも大きな問題です。例えば肝臓癌などは癌の存在自体も重要ですが、基本に肝硬変や肝不全の存在、腹水・食道静脈瘤なども合併することが多く在宅治療が出来ない場合も多くありますし、肺癌の呼吸不全などでも「患者側の事情により長期にわたり入院している者」と言われても、看護環境が整わない場合には入院継続しかないのが現実です。

 高齢化が進めば、その時重度の内臓疾患を持つ患者は在宅での生活そのものが身体的に負担となります。見た目には動ける内臓疾患は「社会的入院」、車いすの肢体不自由はBランクで「対象外」と割り切ることは出来ません。患者さんにとっても、軽度の肢体不自由は自己負担は不要、重度の悪性腫瘍や心不全、呼吸不全は自己負担が必要など、誰がどのように説明すればいいのでしょうか。

 介護保険からも見放され、自己負担増に耐えられない方たちを「社会的入院の排除」という名目で切り捨てる制度が必要なのでしょうか。
 180日超えの長期入院を特定療養費にしてしまったこと自体納得できない制度でもあり、こんな医療や事務の現場泣かせの制度は早急に廃止を望みます。

 本来の社会的入院の削減についてはもっと受け皿づくりからはじめるべきだと思います。

              平成14年8月21日   吉岡春紀


追加情報 23日日医ニュースから

 中医協(星野進保会長)は8月21日の総会で、180日超の長期入院に係る入院基本料の特定療養費化で、末期の悪性新生物患者など4項目を除外規定とする方針を了承した。 長期入院患者の入院基本料の特定療養費化について厚労省が提示した「除外規定」は、(1)麻薬投与または神経ブロックによる疼痛管理が実施されている末期の悪性新生物患者(2)気管内挿管、気管切開または酸素吸入の呼吸管理が実施されている患者・常時頻回の喀痰吸入を実施している患者(3)抗生物質が投与されている患者(4)強心剤(注射薬)が投与されている先天性心疾患などの患者−。診療側は、栄養管理を要する患者も対象とするよう求めたが、栄養管理を行っている患者の多くは、重度の肢体不自由者や重度の意識障害者として特定療養費化の対象から除外されるため、「除外規定」には盛り込まなかった。


資料 改訂診療報酬点数表参考資料 より

入院期間が180日を超える入院に関する事項

(1)入院医療の必要性が低いが患者側の事情により長期にわたり入院している者への対応を図る観点から、通算対象入院料を算定する保険医療機関への180日を超える入院((6)に定める患者の入院を除く。)については、患者の自己の選択に係るものとして、その費用を患者から徴収することができることとしたものである。

(2)入院期間は、以下の方法により計算されるものであり、医科点数表の例により計算されるものではないことに留意すること。

 1.保険医療機関を退院した後、同一の疾病又は負傷により、当該保険医療機関又は他の保険医療機関に入院した場合(当該疾病又は負傷が一旦治癒し、又は治癒に近い状態(寛解状態を含む)になった後に入院した場合を除く)にあっては、これらの保険医療機関において通算対象入院料を算定していた期間を通算する。

 2.1.の場合以外の場合にあっては、現に入院している保険医療機関において通算対象入院料を算定していた期間を通算する。

(3)退院の日から起算して3ケ月以上(悪性腫瘍又は「特定疾患治療研究事業について」の別紙の第3に掲げる疾病に罹患している患者については1ヶ月以上)の期間、同一傷病について、いずれの保険医療機関に入院することなく経過した後に、当該保険医療機関又は他の保険医療機関に入院した場合は、(2)の2.に該当するものであり、入院期間の計算方法は、現に入院している保険医療機関において通算対象入院料を算定して いた期間を通算するものであること。

 また、同一の保険医療機関内の介護療養病床等に3ケ月以上(悪性腫瘍又は「特定疾患治療 研究事業について」の別紙の第3に掲げる疾病に罹患している患者については1ヶ月以上)の期間入院した場合についても(2)の2.に準じて取り扱うものとし、当該介護療養病床等から通算対象入院料を算定する病棟に転棟した場合における入院期間は、当該転棟の日から起算して計算するものであること。

(4)入院期間の確認については、「診療報酬点数表及び老人診療報酬点数表の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)」に従うものであること。なお、平成14年4月1日以降、入院する者で、平成14年3月31日以前の入院が入院期間に通算されるか否かは、患者等に対して過去3ケ月以内の入院の有無等を照会することにより確認すること。

(5)特定療養費の支給額は、所定点数から通算対象入院料の基本点数(平成15年3月31日までの間は基本点数の3分の1、同年4月1日から平成16年3月31日までの間は基本点数の3分の2)の100分の15に相当する点数を控除した点数をもとに計算されるものであるが、通算対象入院料の基本点数とは、それぞれの区分の注1(特別入院基本料の場合は注2又は注3、老人特定入院基本料の場合は注5、老人一般病棟入院医療管理料については当該区分)に掲げられている点数であるものである。

(6)当該制度は、入院医療の必要性が低いが患者側の事情により入院しているものへの対応を図るためものであることから、以下の表の左欄に掲げる状態等にあって、中欄の診療報酬点数に係る療養のいずれかについて、右欄に定める期間等において実施している患者の入院については、選定療養には該当せず、特別の料金を徴収することは認められないものである。なお、左欄に掲げる状態等にある患者が、退院等により右欄に定める実施期間等を満たさない場合においては、当該月の前月において選定療養に該当していない場合に限り、当該月においても同様に取扱う。他の病院から転院してきた患者についても同様の取扱いとする。

表-2

下記の状態にある患者については、選定療養に該当せず特別の料金を徴収する ことは、認められない。
(4月1日現在における基準)

状態等
診療報酬点数
実施の期間

1 難病患者等入院診療加算を算定す   る患者

難病患者等入院診療加算

当該加算を算定している期間

2 重症者等療養環境特別加算を算定する患者

重症者等療養環境特別加算

当該加算を算定している期間

3 重度の肢体不自由者、脊椎損傷等 の重度障害者、重度の意識障害者、 筋ジストロフィー患者、難病患者等

左欄の状態にある期間 (別に注記あり)

4 悪性新生物に対する腫瘍用薬(重篤 な副作用を有するものに限る。)を 投与している状態

動脈注射

左欄治療により、集中的な入院加療を 要する期間

抗悪性腫瘍剤動脈内持続注入

点滴注射

中心静脈注射

骨髄内注射

5 悪性新生物に対する放射線治療を実施している状態

放射線治療(エックス線表在 治療又は血液照射を除く。)

6 ドレーン法又は胸腔若しくは腹腔の洗浄を実施している状態

ドレーン法(ドレナージ)

当該月において2週間以上実施していること

胸腔・腹腔穿刺

7 人工呼吸器を使用している状態

間歇的陽圧吸入法

当該月において1週間以上実施していること

人工呼吸

8 人工腎臓又は血漿交換療法を実施 している状態

人工腎臓

週2日以上実施していること

血漿交換療法

当該月に2日以上実施していること

9 全身麻酔その他これに準ずる麻酔を用いる手術を実施し、当該疾病に係る治療を継続している状態

脊椎麻酔

開放点滴式全身麻酔

マスク又は気管内挿管による

閉鎖循環式全身麻酔

注1 3の左欄に掲げる状態等にある患者は具体的には以下のような状態等にあるものをいうものであること。

  a 重度の肢体不自由者、脊髄損傷等の重度障害者及び重度の意識障害者
  b 以下の疾患に罹患している患者
   筋ジストロフィー、多発性硬化症、重症筋無力症、スモン、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病(ヤールの臨床的症度分類のステージ3以上でかつ生活機能重症度度又は。度のものに限る。)、シャイ・ドレーガー症候群、クロイツフェルト・ヤコブ病及び亜急性硬化性全脳炎

  c 重度の肢体不自由者については、「障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準」の活用について(平成3年11月18日老健第102−2号)においてランクB以上に 該当するものが対象となるものであり、ランクB以上に該当する旨を診療報酬明細書に記載すること。

 2 4の「重篤な副作用を有するもの」とは、肝障害、問質性肺炎、骨髄抑制、心筋障害等の生命予後に影響を与えうる臓器障害を有する腫瘍用薬であること。

 3 6に係る胸腔穿刺又は腹腔穿刺を算定した場合は、当該胸腔穿刺又は腹腔穿刺に閲し洗浄を行った旨を診療報酬明細書に記載すること。

 4 8の「人工腎臓を実施している状態」にある患者については、「障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準」の活用について(平成3年11月18日老健第102−2号)においてランクB以上に該当するものが対象となるものであり、ランクB以上に該当する旨を診療報酬明細書に記載すること。

 5 医薬品等告示第4号に規定する「ロからヌまでに掲げる状態に準ずる状態にある患者」に関する事項は、入院医療の必要性についての医学的な判断基準という観点から検討の上別途通知する。

(7)急性増悪のため、通算対象入院料を算定する病棟又は介護療養病床等から、一般病棟に転棟させた場合(一般病棟に入院中の患者が急性増悪した場合を含む。)は当該転棟の日(一般病棟に入院中の患者については急性増悪の日)から30日間は、特別の料金を徴収することは認められない取扱いとするものであること。ただし、30日間を経過した後は、(6)に規定する基準に従い、当該患者の入院が選定療養となるか否かを判断するものであること。なお、この場合においては、一般病棟に転棟させた理由を診療報酬明細書に詳細に記載すること。

(8)特別の料金を徴収しようとする場合は、患者への十分な情報提供が前提とされるものであり、特別の料金の額等に関する情報を文書により提供しなければならないものとする。

(9)特別の料金については、その徴収の対象となる療養に要するものとして社会的にみて妥当適切な範囲の額とし、通算対象入院料の基本点数(平成15年3月31日までの間は基本点数の3分の1、同年4月1日から平成16年3月31日までの間は基本点数の3分の2)の100分の15に相当する点数をもとに計算される額を標準とする。

(10) 特別の料金等の内容を定め又は変更しようとする場合は、別紙様式10により地方社会保険事務局長にその都度報告するものとする。また、患者から特別の料金を徴収した保険医療機関については、毎年の定例報告の際に、その実施状況について、別紙様式10により地方社会保険事務局長に報告するものとすること。

(11)(2)に規定する方法により入院期間を計算した場合に、平成14年3月31日以前の入院期間が入院期間に通算されることとなる者(以下「経過措置対象者」という。)については、次のような経過措置が設けられているので留意すること(入院期間の計算に係る起算日が平成14年4月1日以降の者については、特段の経過措置は設けられていない。)。なお、平成14年3月31日以前の入院期間が入院期間に通算されるか否かは、患者等に対して過去3ケ月以内の入院の有無等を紹介することにより確認すること。

 @ 平成15年3月31日までの間は、当該患者の入院は選定療養には該当せず、特別の料金を徴収することは認められないこと。

 A 平成15年4月1日から平成15年9月30日までの間は、経過措置対象者については、入院期間が3年を超える入院のみが選定療養に該当するものであり、経過措置対象者のうち入院期間が3年を超えない患者からは、特別の料金を徴収することは認められないこと。

B 平成15年10月1日から平成18年3月31日までの間は、経過措置対象者については、入院期間が2年を超える入院のみが選定療養に該当するものであり、経過措置対象者のうち入院期間が2年を超えない患者からは、特別の料金を徴収することは認められないこと。


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