深き虚空からの伝承



第三章の2


初めて見た 小さな命

その命は はかなく
他のものにもてあそばれる

彼女は誓った

この命 守ってみせる
この命 大きくしてみせると

あらゆる心をかどわかし
あらゆる心をたぶらかし
小さき命の心まで
変えていった

命は育ち 大きくなり
他の命すら もてあそぶ

その命さえ よければいい
他の命が 小さくても

以前の その命のようだったとしても

彼女は決して
後悔しなかった
その命を 消したくなくて
その命を 慈しみたくて

彼女に唯一できなかったこと
そのことを 成し遂げる者が現れた

その命は その者だけに従い
彼女もまた その者に従う

彼女の心は 常にその命と共にあり

彼女の名は「マリス」。
比類無き知謀に長けた
愛を成し遂げようとした女性。


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