かけらになる時

その1





燃え盛る炎を見つめ

ひとり 立っていた

中にいるであろう

父と 母を

思いながら

街は 戦いにより

砕かれ 焼かれ

やがて 消え去った

彼の国を恨むつもりはない

我が国の兵も

同じ事をしたと聞く

これは その報いなのだ

悲しき思いが満ちる街に

勇ましき軍が やって来た

いつしか その一人と

見つめ 語らい 口づけ

心を通わす仲になっていた

安らかなとき 安らかな場所

国は違えど 心は同じ

彼になら どこまでもついて行く

感じたその時

皮肉にも 我が国の兵

無情にも 我が街に帰る

心許せし 彼は

土煙にまかれ

彼方へ去っていった

其を求めるは 尊大か

其を求めるは 叶わぬか

悟りて 我は

戦いの中に 身を置いた

我と同じものを 生み出すため

我と同じものを 見たいがため

幾たびか 街を襲い

あまたの 心を葬る

されど その終わりは来る

敵に混じる 一つの光

それは 心許せし彼

彼も気付き 我が方を見る

その刹那

彼を 我が兵が貫き

我を 敵兵が貫いた

彼が 最期に残した言葉

「フランチェスカ・・・」

そう それこそが

私の名前だった



<前へ><次へ><戻る>