治療、医療はどのように行われるかの基本的な考え方です。

以下は整形外科医としてあくまでも私個人の考え方をわかりやすく書いているものです。


治療の基本は     痛みの流れ、自然の流れを大切に

     目次
  1.  痛みは警告反応

  2.  痛みを止める、という事は

  3.  なぜ痛みを止めるのか

  4.  痛みを放置しても良いのか  放置するとどうなるのか

  5.  年と共に加齢現象は起るがそれが痛みの原因になるのか

  6.  薬を飲む目的

  7.  牽引や電気治療をする目的

  8.  手術の目的

  9.  治療をする事ともとのように治す事とは異なる場合がある

  10.  症状を取る事と治す事とは異なる場合がある

  11.  何を治して何を治す必要がないのか

  12.  医師の治療の満足度と患者さんの満足度とは異なる

  13.  必要以上に治療をするか最小限の治療をするか

  14.  心配してほしい症状

  1. 痛みは警告反応
    私達が安心してさまざまの物に触れたり、歩いたり、食べたり出来るのは身体には
    種々の警告反応を示してくれるありがたい機能(感覚)があるからです。

    その一つに痛みに対する反応があります。これがもし無いと日常生活がものすごく危険な
    ものになります。何気なくしている事が出来なくまた不自由になってきます。例えば、
    種々の物に気安く触れる事が出来なくなります。料理をしていて熱を帯びている鉄板に
    触れて皮膚変化をみて火傷に始めて気がつくというような状態になりかねません。
    私達はこの機能をうまく利用して安全な生活をしているのです。
    そして何かあればすぐに対応をするとさらに安全で良いのです。

    早期発見、早期治療を心掛けましょう。

    どの部位の痛みがある場合でも痛みを我慢してはいけない、というのが基本です。


    目次に戻る

  2. 痛みを止める、という事は
    痛みを止めるのが直接的に痛みの原因をとる、という事ではありません。前項のように
    痛みを感じる事は必要で、なくてはならない機能です。その痛みを止めても原因の
    除去になるわけではありません。しかし痛みを我慢している状態では良い生活が出来ません。
    痛みを止めるのは、へんに我慢をしないで普通の生活をさせるのが目的と考えてください。
    その我慢を美徳のように思われている方がいらっしゃいますが意味はありません。

    日常生活に不自由がなければ良いのですが無理に我慢しないようにしましょう。


    目次に戻る

  3. なぜ痛みを止めるのか
    痛みがあると日常生活が脅かされます。こうなると肉体的にも精神的にも症状が増して
    いきます。いままで何の症状のないところまでも負担がかかり痛みが出てそれがまた
    他の部位にまで波及する、というような悪循環となるのです。
    あちこちの痛みを訴える人がいます。
    このような症状が出るのは痛みをがまんして動き回っている人に多いようです。

    痛みを止める目的はその悪循環を早く断ち切ると考えてください。良いとこまで悪く
    ならないようにする必要があるわけです。

    痛みを止める一番の目的は早く痛みを除去して元の生活に戻すことです。


    目次に戻る

  4. 痛みを放置しても良いのか  放置するとどうなるのか
    痛みが我慢出来る範囲なら放置しても良いと考えてください。この事は若い人にいえる事で
    中高年以降の人は我慢しないようにしてください。というのは中高年になると思っているより
    体力は弱り対応力もなく回復力も弱っています。そのような状態で無理すると思わぬ状態にな
    ることがあります。我慢して良い事はまずありません。
    がまんしたり放置すると状態が悪くなり治療が困難になります。本来1週間程度で治るところ
    治療に1ヵ月以上かかることにもなります。

    原因によっては回復不可能になる事もありますのでまずは痛みの原因をはっきりさせましょう。


    目次に戻る

  5. 年と共に加齢現象は起るがそれが痛みの原因になるのか
    加齢にともない私達の身体は変化をしてきます。変化は目に見える訳ではありませんし感じる
    ものではありません。しかし必ず変化は起っています。

    腰を打って病院に行きレントゲン撮影の結果、骨に年齢的な変化がでている、と診断を受けた
    人は多いのではないでしょうか。以前より変化はあっても症状として出ていなかったのです。
    加齢変化そのものはその時の身体に合わせて良いように変化をするもので、それが悪いのでは
    なくさらに何らかの負担があると症状として出るのです。

    加齢変化そのものが痛みの原因ではありません。


    目次に戻る

  6. 薬を飲む目的
    痛みは組織の炎症による、という事がわかっていてその炎症を押さえるために消炎炎鎮痛剤や
    シップや塗り薬などの出番になるわけです。
    組織が化膿している場合は原因を取るために薬を飲みます。痛みに対しては炎症を押さ
    え、症状を取るのが目的で原因を取るのではありません。(前項目2参考)
    例えば神経が軟骨などで圧迫されている時は神経は打撲を受けているのと同じで腫れて
    きます。神経は骨の管や筋肉内をはしっていて神経そのものが腫れると周囲からも圧迫
    を受ける状態になります。箱の中で風船を膨らます事を思い浮かべるとわかりやすいと
    思います。そうなるとさらに神経に対して圧迫が強くなり痛みやシビレが続くようにな
    ります。従って風船をふくらまないようにして影響を早く取り除く必要があるのです。

    薬を飲むのは炎症を取り、腫れをひかせることにより痛みを取るのが目的です。

    シップ(温冷湿布ともに)は痛み止めです。暖める冷やすのが目的ではありません。


    目次に戻る

  7. 牽引や電気治療をする目的
    安静を保ったり、筋肉を刺激したり暖める事により血行をよくして痛みを緩和するのが
    目的です。首や腰を引っ張って狭くなったところが広がったり伸びたりはしません。
    それが可能でしたら私の身長は2mぐらいになっていたでしょう。

    牽引や電気治療は安静を保ち、筋肉や腱をほぐすのが目的です。


    目次に戻る

  8. 手術の目的
    私達が手術を決める場合は治療に手術しかない、手術をする事により良くなる可能性
    が高い、手術をしないと悪化の可能性があるなどを考慮します。
    手術以外治療の方法が無い場合は問題はないのですが手術をしなくても治る可能性がある
    時に問題となります。その場合はなによりも本人の困る度合いで判断をする事になります。
    その時は現在だけでなく将来に困る予想などを含め総合的に判断する事になります。

    手術の目的は変化した身体を出来るだけ元のように戻す、症状の悪化を防止する、などです。


    目次に戻る

  9. 治療をする事と、元のようにもどす事とは異なる場合がある
    治療は不都合である症状を取り変化が起きた身体をもとに戻し治す、ことです。
    身体に著しい変化が起るとそれを解剖学的に元に戻すのは困難な場合があります。
    骨折を起こし人工物を使用する、胃潰瘍で胃の一部を切除する、場合などが当てはまります。
    戻す必要もないことですが加齢変化も元には戻りません。若返ることが出来れば別ですが。
    膝の半月板損傷の場合は損傷の部位のみを取り除く手術をします。痛みなどの症状や膝の
    機能は元にもどりますが半月板は元にはもどりません。しかしながら変形性の変化のない
    膝の持ち主は運動は普通に出来ます。

    解剖学的に元に戻らなくても痛みも不自由もなく生活はできる。


    目次に戻る

  10. 症状を取る事と治す事とは異なる場合がある
    頭痛があり頭痛薬を服用するのは症状を取るだけです。その場合、原因は関係ありません。
    そこで原因を調べ、取り除くのが治すとなる訳です。もちろん頭痛を取るだけで治療になる
    場合もあります。

    症状をとるだけでは根本的な治療にはならない場合がある。


    目次に戻る

  11. 何を治して何を治す必要がないのか
    交通事故や転落事故などで起る急激な変化は急いで治す必要がありますが、徐々に
    起る加齢現象などの変化には治す必要がないものがあります。
    急激な変化には骨折や脱臼などがあり、徐々に起る変化としては背柱がずれたり
    (腰椎すべり症)、曲がったりが当てはまります。
    自然に起った変化は逆らえません。しかし変化による痛みなどの症状がある場合はそれを
    取り除くために手術が必要になることがあります。

    背骨がずれているから治す、という事は必ずしも必要はないのです。


    目次に戻る

  12. 医師の治療の満足度と患者さんの満足とは異なる
    お互い都合の良い関係ではなく、信頼関係のある状態でなくてはいけません。
    患者さんからすると希望通りの治療をしてもらえる医師が良い医師と考えるでしょう。
    例えば原因がなんであれ腰が痛いので注射をしてほしいとか牽引より電気をかけたい
    とかある場合などです。
    その時正しい医療を優先するなら説明をして患者さんの希望には添えない事を話します。
    当然の事ながら患者さんのなかには不満のある方がいらっしやいます。
    医業を優先するなら患者さんの希望どおりするのが良いのでしょうが........。
    治療は状態に合わせて一番良いものを行います。どちらでも良いような治療なら問題は
    ありませんが優先順位というものがあります。
    それをわかっていただけない時がよくあります。
    結果的に良くなるか悪くならなければ良いのですが良くならない事が多いのです。
    患者さんの満足だけを考えると私がいなくても良いわけですし私とすれば治療をした、
    という気持ちにはなれないのです。

    患者さんの一方的な希望どおりの治療をするなら私のような医者はいりません。


    目次に戻る

  13. 必要以上の治療をするか最小限の治療をするか
    癌の手術では必要以上に範囲を広げて手術をする場合があります。もちろん医学的根拠が
    あっての事でむやみにする訳ではありません。多くは必要最小限の手術を目標にします。

    手術の場合は良いのですが投薬や血液検査などになると少々考えさせられます。
    予防のためいくつかの検査をしたり、たくさんの投薬をしたりの話をよく聞きます。
    患者さんからみると沢山検査をしてもらい良かったと思われるでしょうが。
    医師サイドの医療なのか医業なのかわからない事もあり問題です。
    予防のために検診制度が行われているのでそれを受けていれば問題はないのです。
    よほどの事が無い限り1年に2〜3回検査を受ければ十分です。
    必要な場合もありますが大量の投薬や検査は無駄な医療費がかかっている、ともいえます。

    たくさん薬を出したり検査をするからといって良い治療をしているとは限らない。


    目次に戻る

  14. 心配してほしい症状
    痛みが強い場合は誰でも困り、どうにかして欲しいと思われますので問題は起りません。
    しかし痛みがない神経麻痺の時に困る事があります。私たちが良くみるのは坐骨神経痛で
    起る麻痺です。初期には激痛が起りその痛みが突然なくなって麻痺がでる事があります。
    激痛の時に受診されると良いのですが痛みが無いために足が不自由になっても放置されて
    いる方がいらっしゃいます。神経に対する刺激が強いと神経の機能が低下し元にもどらな
    くなる事があるので注意が必要です。
    麻痺症状は手ではハシが使いずらい、ボタンを付けるのに時間がかかる、足ではスリッパの
    着脱がスムースにいかない、少しの段差でつっかかり転び易い、などで気がつきます。

    手や足に力が入らない時は要注意。


    目次に戻る


スポーツ障害の目次に戻る。