オーストラリアでの一件以来、時間はあっという間に過ぎて行き
 日本に住む人達は、久しぶりに、または初めて味わう冬の寒さに苦労していた。
 当然、シンジとアスカは、生まれてから四季という概念に触れたことはなかった。

 そして12月も半ばを過ぎ
 気がついたら24日を迎えていた。

 その間、ネルフでは冬月指令、加持副指令が葛城三佐によって「質問」を受け、エライ目にあったとかなんとか。
 特に副指令はアメリカから帰ってくるなり拉致され、帰ってきたときには襤褸雑巾だった。

 そして、葛城亭の住人、シンジとアスカはずっと休日のような状態のため、時間は余り
 勉強する必要も殆ど二人にはないので、シンジがアスカに料理の手ほどきをするなど
 そうやって時間を潰してきた。

 だが、24日
 せっかくのクリスマス
 実際はキリストの誕生日でしかないのだが、そこはお祭り好きな葛城ミサト
 こじつけでパーティーをすることにした。
 そこで、シンジやアスカの友人も呼んで、楽しくやろうということになった。
 といっても、この二人の友人といったら、トウジ、ケンスケにヒカリぐらいだが

 

 

 君と僕があるために
 第十三話 面倒なこと
 wrote by Ogata

 

 

 「ねぇシンジ?」

 「なに、アスカ?」

 「髪の毛のブラッシング、いい?」

 「良いよ、じゃぁ椅子に座って」

 アスカはテーブルの椅子に腰掛け、シンジは器用にアスカの長い髪を軽く手ぐしで分けると、ブラシを掛け始める
 最初は長い髪に馴れなくて、手こずったが今ではお手の物だ。

 「そういえばさー、今日ヒカリが来るのよね?」

 「うん・・・・委員長だけじゃなくてケンスケも来るけど、それがどうかしたの?」

 「大丈夫かな、って思ってサ・・・・・ヒカリのパパ・・・・・・・」

 「そう・・・・・・だったね。」



 そう、ヒカリの父も・・・・というより、第3新東京市に住む人の殆どがネルフか官庁関係。
 もちろん、LCLに還元し、帰ってきた人もいるが、運悪く帰ってこれなかった人も居たわけで
 ミサトの様に、ある幸運が重なりに重なって爆風を浴びても、上半身が虫の息でいいから生きていれば・・・・
 という希な例もあったり、トドメをさされず遺体の損傷度も酷くなく、なにより、トウジの父がそうであったように
 頭を一撃で打ち抜かれてしまえばもうどうにもならない。
 ただ、側に綾波(?)が立った人間は殆ど帰ってきたのだが。
 んで、ヒカリのパパ・・・父親は当然ネルフ職員で、妻は先立っており、
 先の戦略自衛隊の侵略では、頭部に40口径を二発打ち込まれ思考力など一瞬にして永遠にあの世行きだった。
 他にも、代表的なのはトウジの父で、開発部であるが故、工具で戦略自衛隊員と戦い、
 捻った作戦で相手を動揺・各欄させるも最終的にはマシンガンを頭に浴びてサヨウナラだった。
 だが、その戦いぶりは朧気ながら、覚えている者がおり、監視カメラにもその一部始終が映っていたので
 ある意味伝説と化している 

 まぁ、そんなわけで、二人とも保護者が居なくなってしまった。
 幸い、その賠償金などは日本政府からばっちりとっておいてあるのでその心配はない。
 ただ、まだ第三新東京市は他の都市・地域からの訪問は、復興中はネルフが制限をしていたので
 疎開以来初の上京となる。

 しかし、親を失うことの精神的ダメージがどれだけ大きいかは、シンジもアスカも良く知っている。
 だからこそ、痛い。
 会うのが怖い
 なんと言って良いか分からない。


 勿論、本人達は知っている。
 今月の始めには通知が届いていたはずだ。



 「でも・・・・・大丈夫・・・・・僕だって強くなれたんだし。」

 シンジがやや自嘲気味に言った。

 「そうね。」

 アスカが優しい笑みを浮かべながら言った。


 だが、子供達がが悩んでいる場所とは別な場所で悩んでいる女性がいる。
 当然、葛城ミサト嬢(?)である。
 つい先日、加持を追いアメリカに新婚旅行でなければ婚前旅行でもない、詰問という名称のハンティングに行った際、
 ネルフドイツ支部の空爆の原因、ドイツ支部のネルフに対する背任行為、ゼーレへの資金・技術協力並びに機密情報の垂れ流しなど
 幾らネルフの上位組織と言っても、本来は本部を通して行うモノで、ドイツ支部の、敵対勢力への肩入れ行為は本部に対する立派な背任である。
 それに、各国の意見も重なり、国連制裁としてドイツ支部を空爆したわけであったという。
 だが、事前に噂を流しておき、B級勤務者以下嘘の退避命令を出して一人も居らず、
 実際の被害者は加担した黒幕と思われる者のみだった。。
 まぁ、ドイツ支部と心中した形で、見せしめのための生け贄になったわけである。
 もっというなら、立派な証拠隠滅でもあるが。
 だが、それを知った場所はワシントンDCの白い館であり、教えてくれた相手はアメリカ合衆国大統領だった。
 その時、加持は既にぼろ雑巾だったため、喋ることすら出来なかった。
 その時の様子を、当時の大統領はこう語った。 

 『あれがニッポンで有名なオニヨメなのかい?ホント怖いね、殺気立ってるよ。彼女がワイフじゃリョージも大変だ!』

 結局、ホワイトハウスの一部を損壊させ、ネルフのオニヨメは帰国した。
 加持リョウジが目覚めた時には、領収書が一枚、額に貼ってあった。

 『3万ドル也 byMisato』

 「カローラ2台分か・・・・・トホホ」

 領収書を見て、加持は力無く呟いた。

 

 ミサトは、今更だが冬月の隠し球を、帰国してすぐに知らされた。
 連れて行かれた場所は『まだあったのね』的なターミナル・ドグマ
 その十字架の下に広がるLCLの池の中

 それはどっからどう見てもプロフェッショナルモデル
 赤い機体
 四つ目
 ア○トニオ猪木やミハエル・シュー○ッハにも劣らない顎

 まさしく弐号機


 「実はだね、弐号機の再建造が完全に終わっていてね」


 この言葉を聞かされたときほど、ミサトはネルフの中の各部の関係をもっと密接にしようと思ったことはなかった。

 「でも、アスカが・・・・・・・」

 「勿論彼女は知らない。ところがだね、伊吹君がコアからキョウコ君のサルベージ計画を・・・・・・」

 「サ、サルベージですか?しかし、今はもう必要性が・・・・・・」

 「彼女が『どうしても』と懇願するのでね。まぁ、今更やっても、という感じだが・・・・・」

 「アスカの意見は反映されないんですか?」

 「だから、それを君に聞いてきて欲しいわけだよ。」

 この時、ミサトは冬月に「してやられた」ことを痛感した。
 完璧に、面倒なことを押しつけられた。



 その頃、トウジは第3新東京駅の政府専用列車専用ホームにいた。
 その格好は、いつもと変わらないジャージ・・ではなく、やや寒いため、ウインドブレーカー着用。

 今日の彼の任務は、疎開先からやってくる友人の迎え&案内役である。
 第3も以前と比べ、区画整備がものすごいスピードで進み、大型ビルは殆どが今でも建造中が多い。

 「そろそろやな」

 そう呟き、時計を見た。
 時刻は午前から午後に移る。

 『間もなく、18番線に、政府専用特別急行列車が到着します。危険ですので・・・・・・・・・』

 トウジの手の中には熱い生茶が握られている

 そのうち、リニアがホームに入ってきて、風がトウジの髪を揺らした。



 さて、碇家・・・じゃなくて、葛城家では、キッチンが戦場となっていた。
 少なくとも十人分近い料理に、ケーキまで付いて、手間が掛かる。
 それに追い打ちをかけるように、アスカがやってしまった。

 ガシャンッ!!

 「痛っ!」

 当然、その声はシンジにも聞こえるわけで、慌てて駆けつける。
 だが、台所には結構な枚数の皿が、床一面に木っ端微塵になって散らばっていた。

 「あっアスカ!、大丈夫!?」
 かなり心配そうな顔でシンジがキッチンの食器棚の所に駆け込んだ。

 「大丈夫じゃないわよっ!」
 周囲が皿の破片の中、小さくうずくまるアスカの即答

 結構間抜けだ

 速攻で帰ってきた即答に苦笑し、シンジが散らばった破片を見渡すと、アスカの右の素足が目に入った。
 履いていたスリッパを脱いでいたようだ。
 それで良く分かったが、右足の甲が赤く張れていた。
 どうやら、足の甲の上に皿を一枚落として・・・後は片手に持っていた皿を連鎖的に落としたようだ。

 「アスカ・・・・・足、腫れてるから冷やさないと。」

 アスカはシンジの言葉に頷いて、呟いた。

 「馴れない事はするものじゃないわね」


 んで、リビング
 ソファーの上で、氷水を張ったバケツに右足を突っ込んでおく。

 「しばらくそうしていなよ。片づけは僕がやっておくから。」

 「お願い・・・・・」

 シンジは苦笑しながら、アスカの返答を背中で聞いた。

 「何がおかしいのよ!」

 「いや、さ、アスカも普通の女の子だって思って・・・・」

 「今更なに言ってンのよ!」
 この時、シンジにアスカの顔が赤くなっていたことを知る由はない。

 そして、罵声と共に、シンジの後頭部をクッションが襲った。
 そのクッションは見事にシンジの後頭部を命中した。

 

 それと同時に、玄関の呼び鈴が鳴った。

 

 続く

 


 アトガキ2001

 うわぁぁぁぁ
 本当に申し訳ないです。
 遅すぎです、俺
 しかも約半年
 おまけにこの話の終わり方に迷いが。
 ってか、誰か私を脅してでも続きを書かせて下さい。
 本当に申し訳ありません。>創さん


 緒方紳一


創さんのこめんと 2001(笑)

さて、新世紀初の投稿は、緒方伸一さんの連載です。

とりあえず4月以降の身の振り方が確定された緒方さん。今後の制作は余裕のよっちゃんか?

これからも夜露死苦(爆)


緒方さんへのメールはこちら

緒方さんのHP「KEEP on RIDING」

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