少年の二重螺旋図の中に残っていた一つの螺旋

 その覚醒

 少年は力を手に入れた

 その遺伝子は人間の肉体を手に入れた

 

 目の前にいるモノは

 白い悪魔、エヴァシリーズ

 所々汚れ、黒ずんでいる

 それ故にカラスにも見えるかもしれない

 

 君と僕があるために
 第10話 覚醒

 

 エヴァ七号機
 拾いモノ
 部品の品質を向上させた半量産機

 だが、パターンは
 すなわち「使徒」

 エントリープラグの中のトウジ
 意識はちゃんとある・・・

 だが、興奮状態
 視野狭窄と言うべきか
 自分の感情をバルディエルの言葉によって操作され
 怒りの感情が増幅している

 バルディエルの遺伝子を介してのエヴァとの接続はシンクロ率を大幅に向上させた

 「ほな

 いくでぇぇぇぇぇぇぇ

 そしてゴング 

 トウジの叫び声と共に空中に身を躍らせるエヴァ七号機

 その戦いは動物対人間と言うべきであろうか

 ダミープラグによって獣のような行動しかとれないエヴァシリーズ

 いかにトウジといえど、喧嘩慣れした人間

 そして天井が無いとも思えるような、エヴァとの一体感の向上

 

 いかにコストダウンをした機体であっても、エヴァはエヴァ
 整体部品にケチらなかった結果か、運動性能は正式タイプの弐号機にも負けなかった。

 それだけの動きをトウジとエヴァはこなしていた

 

 様に見えた

 

 『ブチッ』

 突然スピーカーに響く鈍い音

 「右足のアキレス腱、損傷!」
 マヤが叫ぶ

 だが、トウジは怯まない

 「これで終いや!」

 筋の切れた右足で相手を蹴倒す
 倒れたところで相手の武器、ロンギヌスの槍を

 『ザグッ』

 突き刺す。

 一度だけでは終わらない

 何度も何度も繰り返す

 赤い血が噴き出し、機体に返り血を浴びても

 右足アキレス腱がどんなに痛んでも

 

 一度突き刺すたびに強い振動が地表を襲う

 それでも止めない

 腹部、脚、腕を潰し、周囲は赤一色に染まる

 そして頭を潰す

 「うっ」

 マヤの嗚咽

 周りの者は言葉が出てこない

 「トウジ君・・・・」

 ミサトでさえも彼の名前を呼ぶのがやっとだった

 

 最後にプラグを握りつぶす七号機

 プラグを握りつぶすと、七号機は動かなくなった

 「プラグとの通信、回復します・・・」
 青葉が確認するようにゆっくりと通達する

 

 「パイロットの意識がありません、心音は正常。」

 健康状態を確認したマコト、無事だと分かり一息。

 

 「回収急いで・・・・」
 ミサトのようやく絞り出したような声
 
 
 「碇、これもお前のシナリオのなのか?」
 冬月の誰にも聞こえないような呟き
 
 
 回収班がエントリープラグを強制射出させ、レーザーカッターで中をこじ開けた。
 
 中にいたトウジの瞳の焦点が定まっていなかった。
 
 ただ、トウジは一言だけ呟いた
 
 「ワシは強いんや・・・・力を手に入れたんや」

 

 七号機は暴走することもなく、無事回収された。

 そして、一度解体され、バルディエルによる汚染などの影響を探しすことになった。

 しかし、更に問題なトウジは遺伝子のチェックなどのために強制収容となった。

 故にシンジとアスカ、更には冬月の隠し球も出番無し。

 だから、死にそうな思いまでして急いでやってきた二人の出番はなし!

 

 「エヴァシリーズは、トウジ君搭乗の七号機によって完全に抹消したわ」
 ミサトの結果の説明

 「まさか・・・トウジがですか?」
 シンジの驚き

 今回のトウジの出撃のデータもミサトから二人に伝えられた。

 「あのバカが・・・・・」
 アスカにいたっては言うことが見つからない

 データを見ればそれも頷けるだろう。

 

 戦闘時間
 約3分

 機体損傷
 右足脚部損傷(アキレス腱損傷)

 パイロットの健康状態
 右足足首を負傷
 他は極めて良好、だが精神的に不安定 

 シンクロ率
 98%オーバー

 「ま、ざっとこんなもんねぇ。
 ただ・・・・」

 「ただ、なんですか?」
 珍しくシンジが質問に突っ込んだ。

 アスカは出し抜かれてしまい、シンジの太股の部分をつねる

 シンジ、苦痛を声にならない叫びで表現する。

 ミサト、呆れる

 「こっからが大事なのよ。

  トウジ君から使徒の遺伝子が発見されたわ。」

 「「どういうこと(ですかっ)(なの)」」

 言葉は違えど見事にハモる二人

 「トウジ君、3号機に乗ったとき、使徒に占有されたわよね?

 その時に、トウジ君の体内にその使徒が浸食をしようとしたのよ・・・多分ね。

 ま、その時はなんにも発見できなかったんだけどね。

 今になって出てきたワケ。」


 『トウジは使徒』

 

 「そんな・・・・」
 シンジ、絶句

 親友が使徒と化してしまい、これで二人目の親友を失うのか

 その恐怖がまた胸の中に広がる

 「で、どうするつもりなの、ミサトは?」
 アスカは以外にも冷静だった。

 「どうすればいい、と思う?」

 「決まってんじゃない!

 消滅させなきゃ、使徒なんでしょ、ヤツが!」

 何とも過激な意見
 だがまともでもある意見

 

 「そう・・・やっぱそう思うかしら

 シンジ君はどう思う?」

 シンジに振るミサト

 「トウジが助かる方法はないんですか?」

 何ともシンジらしい意見

 「そうよね・・・それが先よね。

 せっかく生き残ったんだから、今死んじゃったら悲しいわよね。」

 何とか生き残るための方法を探す。

 少年を『エヴァのパイロット』という犠牲にしてまで生きているのだったら
 なんとしてでも助ける方法を探さねばならない

 

 それは大人達に課せられた義務だろう。

 たとえ、どんな状況であっても
 出来る限りのことを尽くすべきである。

 

 それはミサトもよく分かっていた。

 だが、相手は使徒と同化している

 

 「葛城さんっ!」
 マコトが突然部屋に入ってきてミサトを呼ぶ

 「トウジ君の意識が戻りました。」

 「そう、すぐ行くわ。

 あなた達は・・・来る?」

 聞くまでもないことを聞くミサト
 明らかに動揺している

 相手は使徒の遺伝子を持った少年

 使徒とは断定できないが

 「行きます」
 「当然行くわよ」

 返ってきたのは予想していたとおりの答え

 その予想していた答えにミサトは安堵した

 『もし来なかったら』

 それを考えるとゾッとする

 それはトウジに対する拒絶を意味するから

 だが、少年と少女は拒絶をしなかった

 むしろ、この二人なら受け入れてくれるだろうと

 最悪の場合、シンジだけでもトウジを受け入れてくれるだろう

 そう踏んでいた

 だからこその安堵

 

 

 加持の乗った爆撃機は北西の方角へ向かっていた

 浜松基地から飛び立った黒い機体は中国大陸の上空を飛行していた。

 目的地はネルフのドイツ支部

 後片づけ役として

 

 街は、壊滅とまでは言わないが新吉祥寺駅ビルを中心とした直径100mの範囲は完全に壊滅

 被害額は甚大

 「また援助がいるな・・・・まだでるかね?」
 冬月は疲れた。

 各国のお偉いさんと話をし、機嫌を損ねないように煽ててネルフの立場を守ることに

 だが、それも教え子の夫婦との約束

 守らないわけにはいかなかった。

 

 「よう、シンジ。」

 かなり腑抜けた

 「どないしたんや?みな固まってもうたで。」

 そりゃ、誰だって驚くだろう。

 さっきまで

 トウジは緋室と将棋を指していた。

 「う〜ん、ここまでかなぁ。」

 医者、中学生に完敗宣言

 「ワシの勝ちですか。」

 「うん、相当強いね。頭の回転が僕よりも良いのかな?」

 「んなアホな!」

 目の前で医者と半使徒化した少年との漫才が繰り広げられる。

 「冬月先生と一局やってみたらどうだい?

 先生が喜ぶぞ。」

 「副指令が?

 止めときますわ、ワシ、副指令が苦手なんですわ。」

 

 「いい加減にしなさいっ!!」

 漫才に飽きた、というか呆れてなにも言えなかったアスカの鬱憤、爆発

 故にアスカ、本性が出る。

 トウジ、完全にノック・アウト

 

 「それで、どうなのトウジ君。今の体の感じは?」
 マヤの質問

 周りにいるのは冬月、マヤ、ミサト一家、緋室の計6人

 「別に、いつもと変わりはあらへんのです。

 ただ、エヴァに乗っとると・・・なんちゅうかこみあげてくるちゅーんですか?

 そんな感じですわ」

 リツコがいれば狂気狂乱とは言えないが

 『ニヤリ』

 ぐらいはしただろう。

 「大丈夫なんですか、トウジは?」
 シンジ、積極的に口を開く

 「エヴァの整体部品に使徒の遺伝子は見つからなかったわ。

 けど、さっき血液・皮膚のDNA検査をしたんだけどそれらしい遺伝子は皆無。

 全部正常だったのよ。」

 嬉しい答え

 でも、それは謎を深めるばかり

 「じゃぁ、あのパターン青が出たのは一体何?」
 アスカの質問

 「そうね・・・エヴァとのシンクロの時にだけ目覚めるようなモノなのかしら?」

 「なぁんてインチキ!」
 ミサトの率直な感想

 「で、ワシはどうなるんですか?」

 「ハッキリとはまだ分からないわ。

 もう一度シンクロテストして、原因を探さなきゃならないけど・・・

 もうちょっと入院が長引くけど良いかな?」

 可愛いお姉さん系に頼まれたトウジ

 マヤの一撃でなんなく陥落

 もっとも、右足の足首にはギブスが装着されているが・・・・ 

 「そうだ、トウジ君

 私とも一局相手してくれんかね?」
 副指令のお願い

 これはトウジの中の『年功序列』の文化が働き断ることが出来なかった。

 結果

 トウジ、僅差で勝利

 「トウジ君、君は相当頭がいいようだね。」

 「ワシがですか、んなアホな。氷室さんもいうておりましたわ

 それに、将棋は爺ちゃんとようやっただけですよ。」

 「勉強のできの善し悪しと頭の善し悪しは、必ず結びつくモノじゃないよ。

 君は勉強を嫌っている、そうだろう。

 だが、遊びなんかでは頭を使うことが苦痛ではないだろう。

 例えば、君がやってたバスケットボール。

 あれはゲームメイクにかなり頭を使うが、君は周りの状況を確実に把握してゲームを創っていた。

 パスも考えて出していたようだしな。そうだろう?」

 トウジ、見事に図星

 冬月は4thチルドレンに関する資料を読んだときに大体のことを把握していた。
 だからこれだけのセリフガスラスラと出てくる

 「ホンマですか・・・・。

 ワシが頭良いなんて・・・・」

 『他人から言われるのは初めてやな・・・』

 心の中でしまい込んだ

 「それでは・・・もう一局お願いできるかね?

 冬月、リベンジ

 トウジは集中力が切れて完敗

 

 すでに緊急避難警報はとかれ、本部待機の必要もなくなったシンジとアスカと夕食の買い出しに出ていた。

 誰も乗っていないバスに乗り、自宅の近くで降りると近所のスーパーまで歩く。

 歩いているのは二人しかいない。

 時刻は既に16時半を越え、陽は沈みかけている。

 風は凍てつくように冷たく、コートがなかったらと思うと恐ろしい。

 「で、今晩の夕食は何なの、シンジ?」
 下からののぞき込むようにシンジの顔を眺めるアスカ

 「うーん、おでんにしようと思ったけど、ミサトさんが残業だから鍋焼きうどんにしようと思って・・・」
 真剣に考え込む主夫、シンジ

 でも、今の状況を考えてみると結構恥ずかしいモノがある。

 「シンジ、もしかして背伸びてる?」
 アスカ、直立してシンジと比べる

 「少しね。

 最近伸びてきたんだ。」
 あくまでも素のシンジ

 「そう・・・・・伸び盛りだもんね」
 『少しじゃないわよ』

 少しではない。
 最初、あった頃にはアスカの方が高いくらいだったのが、今では完全に逆転していた。

 『ちょっと悔しいかも』

 でも、それは本心ではない。

 そう思いながらシンジの方に寄り添った。

 それは「寒い」から

 でも

 「ちょ、ちょっとア、アスカ・・・」

 うろたえるシンジがまた面白い

 だから、もうちょっとだけからかうことにした。

 背を抜かれた腹いせも込めて

 

 幸せ者もいれば、不幸な者もいるのが世の定め

 

 「飯がたらんのやぁぁぁぁ

 イインチョ、助けてぇぇぇぇ」
 トウジ、入院食の量の少なさに号泣

 

 「シンジ君の手料理がぁぁぁぁぁ」
 ミサト、久しぶりの専属シェフの料理にありつける機会を残業によって失う

 

 ネルフには『夕食』で号泣する者が二人

 何はともあれ、15年ぶりに訪れた冬は過ぎて行く

 

続く(まだあるの


アトガキ

本当にご久しぶりです。
前回よりちょっとだけ長め
次回はこれを越えるベシ(15kbオーバー
何とか一ヶ月を免れることは出来ました(でも、ほぼ一ヶ月>極刑モノ
目標の週一連載はどこへいったのでしょう?

出来れば忘れてやって下さい
冬休みになればペースも上がると思うんで(多分

暗いのは此処までにして
そろそろご希望通り明るくしていきます。
タイトル通りに(そうですよね、創さん


そのたうり!!

希望なんだよ(byカヲル)

んではメールのリクエストどおり葉っぱをかけてあげましょー(笑)

はっぱ・・・なんちゃって・・・

緒方さんへのメールはこちら

緒方さんのHP「KEEP on RIDING」

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