全ては終わっていなかった
 
 全ては終わったハズだったのに
 
 でも現実には
 
 目前に敵がいた
 
 『相手は使徒じゃないのに、同じ人間なのに』
 伊吹マヤはそう言った
 
 『戦略自衛隊』
 同じ人間に対する殺傷のプロの集団として編成された軍隊
 
 日向マコトは言った
 『向こうはそう思っちゃくれないさ』
 
 
 意味無き殺人の代償は
 自分的第25・26話の投稿作品 前編 by 緒方紳一
 
 
 最後の使徒・渚カヲルは死んだ。
 
 今や平和になった、と誰もが思う
 現実は、汚れた世界は違った
 
 自分の望みを叶えるために
 人間の命を何とも思ってない者達がいた
 彼らの望みは『汚れた世界の浄化』だった
 自分が一番汚れてきたのに、汚れているのに
 
 一人の男・碇ゲンドウはそれに反旗を翻した
 彼も自分自身の望み『最愛の女性・碇ユイとの再会』のために
 己の弱さを強さに見せて汚れていった
 そして自分自身の望みを叶えるために
 裏切った
 
 
 12のモノリスはキール議長の『死は君たちに与えよう』の言葉と共に消えた
 
 真相を知る者は少ない
 殆どいないといっても良い
 総理大臣だって知らない
 
 『ネルフが裏で進めていた人類補完計画、全ての人間を消し去るのが目的とは・・・・』
 
 ネルフではない、ゼーレがといった方が正しい
 
 
 真相を知らない者が多く巻き込まれ過ぎた
 訳も解らず、一瞬のうちに後ろから刺され
 連絡不能に首を傾げてるうちに爆弾に巻き込まれて散り
 火炎放射器で焼き殺され
 逃げ遅れて撃たれ
 手をあげたにもかかわらず撃たれた
 
 容赦無し
 
 葛城ミサトは思った
 『ムリもない。皆、人を殺すことになれてないもの』
 
 真実はわからないままだった
 自分たちが正しいと思いこみ戦う両極
 正しいのはどちらかはわからない
 
 N2兵器が直撃し
 芦ノ湖の底は抜けた
 
 その穴の上を旋回するエヴァシリーズ
 母を感じ、復活したアスカを、弐号機を陵辱した
 
 
 その少し前
 
 葛城ミサトは
 碇シンジを確保するために
 3人の戦略自衛隊員を射殺した
 初めてかもしれないのに
 躊躇せずに殺した
 
 そしてシンジを守るために盾になり
 被弾した
 混沌とする意識の中
 シンジとキスを交わした
 唇を重ねるだけではない、大人のキス
 母親の様な優しい微笑みを浮かべてシンジを送り出した
 この時は
 シンジを子供としてではなく大人としてみていた
 
 
 彼女の最後の言葉
 『これで良かったわよね・・加持君・・・・』
 最愛の男性の名を呼び爆破に巻き込まれた
 綾波レイがその姿を見届けたのは誰も知らない
 その綾波レイがATフィールドを張っていたのも
 
 
 『嘘つき』
 セントラルドグマの底で
 赤木リツコは生涯で唯一愛した男に射殺された
 涙を流しながら
 眉間に穴を開けたハズの彼女も綾波レイに見守られながら
 LCLの海に散った
 
 
 射殺した男、碇ゲンドウはリツコに言った
 『本当に・・・・・・・』
 なにを言ったかは分からない
 彼に待っていたのは
 魂を持った綾波レイの裏切りだった
 絶望の淵に立たされて死を、終わりを待つだけ
 彼の右手はもう無かった
 
 
 綾波レイ
 碇ユイに似せられて造られたモノ
 いや、創られた者だろう
 ゲンドウの望みを叶えるために生まれ
 サード・インパクトの鍵として
 ユイの替わりとして生まれ
 最後にゲンドウを見放した
 
 その原因は碇シンジ、サードチルドレンだった。
 
 
 碇シンジはなにも知らない
 自分がよりしろにされることなんかわかる術もない
 まわりに流されて行くだけ
 流されることによってヒトであろう渚カヲルを殺してしまった
 自分の無力を理解したときの無気力
 苦しみが心の中を駆けめぐり
 彼の精神は崩壊に近づいて行く
 最後の頼みであったアスカにも縋れない
 縋るどころか汚した
 
 その状況から救い出したのはミサトだった
 大人のキス・・・・・ただのディープキスだが
 『帰ってきたら続きをしましょう』のセリフは
 シンジを引っ張り上げた
 でもシンジは知っていた
 その続きがないことを
 上から響く爆発音によって
 
 
 惣流・アスカ・ラングレーは病んでいた
 『セカンド・チルドレンたる資格無し・・・』
 この思いこみと
 『加持さんはもういないんだよッ』
 シンジの八つ当たり的なセリフで
 
 精神崩壊
 
 崩れかけた精神に
 とどめを刺すには十分だった
 本当はそれほど強くない
 むしろ脆い彼女の精神
 
 プライドは崩れて行く
 
 病室に寝たきりのままだった
 気が付いたらエヴァに乗ってた
 『生きてる・・・・』
 地底湖の底で
 か細い言葉と共に
 自分の生を確認した
 と、同時に水中に投下された爆弾が爆発し
 痛みを感じ
 死を恐れ
 『まだ死なせないわ』
 エヴァの中に母の存在を感じた
 
 復活
 
 戦略自衛隊の戦車部隊に軍艦を投げつけ
 VTOL機に回し蹴り、かかと落とし・ジャイアントスイングをお見舞いし
 ロケット弾3発を両手と顔面で受け止め
 辺り一面を火の海にした
 
 しかし、エヴァシリーズが彼女の前に舞い降りた
 
 白いケモノが舞い降りた
 オリジナルでないにしろロンギヌスの槍を持ち
 口から涎を垂らし
 まるでケモノ
 
 アスカはそれに立ち向かう
 1対9
 絶対不利の状況で彼女は跳んだ
 
 勝てたと思った
 最後はまとめて二匹
 勝てると思った
 
 が
 
 鈍器が跳んできた
 ATフィールドを張っても無駄だった
 一度とまった鈍器は二股の槍へと姿を変える
 
 ロンギヌスの槍
 
 コピーでも
 フィールドを貫くことが可能だった
 そんなことを知る由もない少女は
 目を貫かれ
 
 叫ぶ
 
 アスカを『死』と云う恐怖と目を貫かれた痛みが一気に襲う
 この時のシンクロ率は限りなく高かった
 暴走を起こすに至るまで
 
 だが喰われた
 捕食された
 体中を引きちぎられて
 咬みちぎられて
 
 さらなる恐怖と痛みがアスカを襲う
 そして暴走
 内部電源は関係なしに動く
 
 最後の悪あがき
 
 そうかもしれない
 だが
 弐号機は目を槍に貫かれたまま
 そして
 11本の槍が彼女に降り注いだ
 
 エヴァがエヴァを喰う
 エヴァによるエヴァへの陵辱
 アスカの復活したばかりの精神を崩すには十分すぎた
 
 
 シンジはまだケイジにいた
 初号機がベークライトに包まれ乗り込めなかった
 S2機関があっても意味がない
 『母さん・・・・』
 力無い呟き
 そして自嘲気味に呟いた
 『だって・・・エヴァに乗れないんだ・・・・どうしようもないんだ・・・』
 
 彼の呟きは初号機に
 母であるユイに届いた
 
 ベークライトを砕きシンジに手を伸ばした
 
 ジオフロントにあがりアスカを見た
 彼の目に映ったのは
 無惨な弐号機の姿だった
 
 狂気
 
 シンジは叫んだ
 現実であって欲しくない
 信じたくない、信じられない
 残酷すぎる
 
 シンジの心はまだ完全に復活をしたわけではない
 どちらかといえば未完成だった
 それを一瞬で崩した
 
 もしどこかに神がいたのなら
 シンジは神を恨んだだろう
 
 でもシンジは知らない
 自分自身が今や神に等しき存在であることを
 
 そして
 汚れた者達の欲望のもたらした結果を



続く



 こんにちは、緒方紳一です。
 僕自身二回目の投稿となる今回は、『劇場版を振り返る』です。
 自分自身、あの劇場版に何を感じたか、僕なりの観点でまずは25話をガスガス描かせていただきました。
 こんな作品を載せてくれる方がいれば、これからも投稿を中心に活動していきたいと思っています。
 まだまだ至らないことが多い僕ですがゆっくり見守ってください。
 この作品は二話構成で行きたいと思ってます。
 もし、使っていただいけたのなら創さんに感謝です。
 まだ僕は成長中なんで今は無理かもしれませんが、そのうち
 「あっ」
 といわせる作品を書きたいと思ってます。
 では後編で会いましょう。
 後編はオリジナルではなくanotherに走るかもしれません

 1999年08月10日00時01分 緒方紳一よりです


創さんのコメント

緒方さんから初投稿をいただきました!まずはありがとうごさいます。

このSSは、緒方さんのコメントにもあるように『劇場版エヴァンゲリオン』の再構成のようですね。こういった作品はあの26話をどう料理するかがポイントだと思います。その意味からすると、後編が非常に楽しみです。なんといっても『成長中の現役高校生』ですから。

今回はまだまだ25話のダイジェストですから、

次回の『あっ』と思わせる作品を期待して待ちませう!!

緒方さんへのメールはこちら

緒方さんのHP「RIDE on AIR」

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