惣流アスカ・ラングレーというアニメキャラクターがいます。

 このHPにも出てきますが、本来は『新世紀エヴァンゲリオン』という作品のキャラクターです。

 幼くして母親と死に別れ、義母とも馴染めず、その悲しみをひたすらに隠しつづけた彼女は、「プライド」という鎧を心に纏い、汎用人型決戦兵器人造人間エヴァンゲリオンのパイロットとして14歳のときにエヴァ弐号機とともに来日します。しかし、彼女を待っていたのは、あまりにも過酷な運命でした。

 今回投稿していただいたムーさんは役者さんです。手話の勉強もしておられます。

 そのムーさんのHPに連載されている『向こう側』というエッセイの番外編を、無理を言って書いていただきました。そう、ムーさんも「アスカ人」です。




 ムーさんの心の向こう側にいる惣流アスカ・ラングレーは、どんな少女なのでしょうか












by ムー


私は気の強い女性が好きだ。

気の強さは心の脆さの裏返しだからだ。

エヴァンゲリオンと言うアニメがあって、その中にアスカ・ラングレーと言う名の女

の子が登場する。

いつも自信満々で気位が高く、主人公の少年はいつも怒られてばかりいる。

しかし彼女もまた、幼児期の心の傷を抱えていて、それを気取られない為に常に回り

に対しては突っ張って生きているのである。

その姿はいじらしくて、私の父性本能をくすぐってやまない。

今回は、そんなアスカに似た私の友人の話をしてみよう。

彼女はろう者だ。イヤ、正確には中途失聴者らしい。

中学校の頃から徐々に聞こえなくなって、現在では補聴器を付けてもほとんど聞こえ

ない。

大学に入ってから手話を習い始めたのだが、持ち前の負けん気の強さと陽気な行動力

で、4年間の在籍中に一気に習得した。

しかし一般社会での風当たりは厳しい。

職場では彼女の聴覚障害に全く理解がなく、なまじ普通に話せるし彼女の必死な努力

によって読話も可能なので、回りの人間は誰も気遣ってさえくれない。

仕事が終わり帰宅する車両の中では、ぐったりと疲れてしまい、フッと弱気になる事

もしばしばだ。

「なんで私だけ、こんなに努力しなくちゃいけないのよー?」

「ったく、後ろから話し掛けられても、分からないっちゅーの!」

学生時代には常に回りの注目を集め、グループの輪の中心にいた彼女にとって、これ

ほど屈辱的な状況は初めてで、何故自分がここにいなくてはならないのか、自分の存

在価値が全く見出せないで、出口のない悩みを抱え、眠れない日々が続いた。

そんなある日、彼女はある運命的な出会いをする。

学生時代の手話グループの仲間に誘われて観に行った「ろう者劇団」で、その主宰者

を紹介されたのだ。

Yと言う名前の主宰者は、彼女を見て一目で気に入ったらしく、のっけから一緒に芝

居をやらないかと誘って来た。

「えー?私はただのOLですから…」

「でも、君はその生活に満足してるの?」

「…そ、それは…、でも芝居なんて考えても見なかったから…」

「まあ、今度一度稽古場にでも遊びにいらっしゃい!」

一週間後、芝居に誘ってくれた友人と一緒に行った劇団の稽古場では、20人位のろ

う者がいて彼女達の訪問を歓迎してくれた。

当然の事だが、そこでは手話が飛び交い、パントマイムが混じり、リズムに合わせた

ダンスが披露された。

いつのまにかその輪の中で踊っている自分を発見し、ビックリしながらも彼女は久し

ぶりに本来の明るさを取り戻していたのだ。そして何より、回りの劇団員みんながイ

キイキと輝いてる事に言いようのない衝撃を受けたのだった。

翌日には職場に辞表を提出し、晴れて劇団に入団する事にした。

実はこの話、後に彼女から聞いた話で、私が彼女に会った時、彼女はすでに劇団の中

堅の女優になっていた。

私の彼女に対する最初の印象は、「どうしようもないお転婆娘で、これほどあっけら

かんと生きている人物に会うのは久しぶりだ。」というものだった。

それに、彼女は自分が教えている手話学習者に対しては、ことのほか厳しくて、私な

どいつも怒られてばかりで…。

「あんたバカー?何度言ったらわかるのよー!」

そう、私にとってはアスカとおんなじなのだ。

しかし、そんな彼女から劇団に入った時のいきさつを聞かされた時、彼女の朗らかな

横顔にフッと翳のようなものが走るのを見逃さなかった。

私はアスカの事をまだ何も知らないのかもしれない。


−fin−

(注:この物語はフィクションです。)



創さんのコメント

 正に創さんのほめぱげにピッタリの投稿作品です!『おとなのエヴァの楽しみ方』って感じですな。これ、絶対に続きが読みたいな。皆さんもそう思いませんか?

 このムーさんの独特の世界観が体験できる『向こう側』。絆のページの紹介文だけでは「何のことやら?」と思われるかもしれませんが、騙されたと思っていちど読んでみてください。これ、マジっす。読まれた方は、ぜひムーさんに感想をどうぞ!!そしてこの続編を書いてもらいましょー!

ムーさんのHPはこちらです。

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