『新世紀エヴァンゲリオン手話劇場』第八話:心の向こうに を終えて

 

 ことしの5月から書き始めた第八話も、このたびやっと最終話をUPすることができました。毎度々々の拙作を読んでいただいているみなさまに、あらためてお礼申し上げます。

 今までのエヴァ手話と違い、文量も多く、制作時間も非常に長かったこの第八話ですが、このお話は『新世紀エヴァンゲリオン手話劇場』のなかで、重要な位置づけとなりますので、いましばらくここでみなさんのお目を拝借したいと思います。

 

  1. なぜ、車椅子バスケットなのか?

 このエヴァ手話は、書き始めた当初は「手話と聴覚障害」をモチーフにしていました。もちろんそれはいまでも変わらないテーマのつもりです。ただ、やはりわたしたちの生活の中で気がつかないところで、さまざまな問題があることも事実です。そこで、『手話劇場』ではあるけれど、そのほかの、福祉に関わるいろいろなテーマを取り上げることにしました。第伍話あたりからすこしづつそのように書いてきたつもりです。そのなかで生まれた、『高杉シンゴ』というオリジナルキャラクターが私自身結構気に入ってしまい、トウジの妹『鈴原カナエ』との掛け合いを随所に取り入れています。ただ、この二人はあくまでもサブキャラなので、おおっぴらに取り上げることはありませんが、スタンスとしてはシンジとアスカの投影された姿のつもりです。

 そしてトウジと車椅子バスケットの関係についてですが、この『創さんのほめぱげ』にもリンクしていただいている『CREATORS GUILD』の管理者「DARUさん」の作品、『時が走り出す』のなかでほんのわずかですが、トウジが車椅子バスケットをやっているという記述があります。またその続編『ここから始まる僕と彼女の物語』のなかでも、トウジが自分の価値を見つけるために、大学をやめて海外ボランティアに身を投じていきます。そして私自身も高校生の時、車椅子バスケットをやっていた(といっても補欠でしたが…)こともあり、エヴァ手話第伍話「正月だな。ああ、問題無い」・外伝「夕日の熱血バカ」、そしてこの第八話「心の向こうに」を書くことにしました。

 

 

  1. 第八話のテーマについて

 このお話のテーマは「障害の受容」です。ご存知のように障害者のなかには生まれつき(先天性)障害を持った人々とそうでない人々(後天性または中途障害)があります。なかでも中途障害の人たちにとって、自分の障害を受け入れるということは、私たちの想像もつかないくらい大変なことだと思います。私などは生後5ヶ月のときにポリオ(脊髄性小児マヒ)にかかり、その後遺症のため小学校に入学する頃まで歩けませんでした。しかしそれは、逆に物心ついたころにはすでにその状態だったため、「障害を受け入れる」といったこと事体で悩んだことはありません。もっとも障害者であるという事実は否応無しに私にはありましたので、他の健常者と自分を比べてそれなりに葛藤を繰り返したことはあります(苦笑)。

 しかし今まで飛んだり跳ね回ったりすることのできた人が、突然歩けなくなる。または昨日まで耳が聞こえていた人が突然聞こえなくなる…。こういった人たちの苦しみは、私には想像することしかできません。それでもそれを乗り越えてその先もなお活躍しておられる人たちはたくさんいます。『ペンペンの足跡』の常連さんのなかにも、そういった方がおられます。

 そこで14歳の時に左足を無くした鈴原トウジの出番となりました。ただこのエヴァ手話は彼らが成人した後の時間軸のなかで展開していますので、すでにトウジは障害を受けいれ、アスカやシンジたちも立ち直っています。そして彼らが立ち直れたのは、トウジやケンスケ、ヒカリといった旧友たちの励ましがあったから…。それこそチルドレンたちが手話の勉強を始めた要素の一つだから…。

 しかし鈴原トウジはスーパーマンにしたくありませんでした。障害を乗り越えたと思っていたら、実は自分が無意識のうちに避けていた現実が目の前にあった。それが高杉シンゴや、タイガーシャークスとの出会いであったわけです。そしてそれらを正面から受け入れることによって、初めてトウジは自分の障害を受容したことになる。

 そんなトウジをシンジ、ケンスケの3バカトリオ、そしてヒカリ、アスカ、レイの女性陣が見守っていく。そこに絡んでくるカナエとシンゴの2人組。トウジ達は基本的には第3新東京市民ですので、エヴァ手話の中にはときどきしか登場しませんが、みなさんにも彼らを暖かく見守っていただければ幸いです。

 

  1. 登場人物について

 私には幸か不幸か、中学校のころからいまだに付き合いのある連中がいます。その連中は『SHADO』の名の下にいまだに馬鹿なことをやっています。もちろん私も含めてですが…。

 ただ、私自身はあまりアニメには興味が無かったのと、SHADOがSHADOであった時代には宇部にいなかった関係で、私とSHADOとはそれ以外の単純な友達同士の付き合いといった感じでしょうか。もっともいまのSHADOは名前だけしか残っておらず、単に飲み会組織と化してしまいましたが、今年の夏は、『特別展・庵野秀明の世界』をボランティアでコーディネートしました。

 私にとって中学校時代のことはいまでも懐かしい思い出です。私は中学校を卒業してしばらく宇部を離れており、そのまま名古屋の大学に行きましたので、宇部に帰ってきたのはほんとうに久しぶりでした。そこに当時の仲間が残っていて非常にうれしかったことを覚えています。

 実はこのエヴァ手話の登場人物は、それぞれ私に関わりのある人たちがどこかでオーバーラップしています(ほとんどそのままの人もいますが ^^;)。なかでも相田ケンスケは、かつてSHADOの重鎮だったN氏がモデルです。N氏はフォトライターで、Back Offというオフロードバイク雑誌の記事を書いたり、阪神大震災のときにはオフロードバイクの機動性を十二分に発揮して取材や被災者の救援活動にあたりました。彼とは私がこっちに帰ってきてからのつきあいでしたが、周りの人間を台風のように巻き込みながら、それでいてなんとなく憎めないという奇特なキャラクターの男でした。ただ、彼のことを過去形で紹介したのは、すでにN氏は鬼籍に入ってしまったからです…。

 『新世紀エヴァンゲリオン』は庵野秀明のプライベートフィルムだといわれていますが、エヴァ手話は私の世界の投影かもしれません。

(そない、たいそーなもんやおまへんがな…。byトウジ)

 

  1. チルドレン

 そしてこのエヴァ手話の主役である碇シンジ、惣流アスカ・ラングレー、綾波レイの3人のチルドレンですが、彼らはあくまでもエヴァ手話の世界の元チルドレンです。

 EOE(END OF EVANGELION ‘97夏公開)以来、インターネット上のエヴァ関係のHPもある程度淘汰された感もありますが、いまだエヴァSSやファンフィクションは数多く発表されています。このエヴァ手話の設定は、基本的には本編の10年後の世界ですが、いわゆるエヴァの謎(アダム、リリス、人類補完計画等)は、完全に切り捨てています。私自身そんなものには興味が無いので(笑)。ただ、彼らの名前を使ったまったく別のお話(異世界もの)にはしたくなかったので、ところどころTVやコミックの設定を引っ張ってきています。10年前、彼らは確かに汎用人型決戦兵器人造人間エヴァンゲリオンのパイロットでした。その他は、はっきりいって私の都合の良いようにしている状態です。ま、これはどのSSでも多かれ少なかれ同じ事ですね。

 そして登場人物の関係ですが、そのへんはお話を読んでみなさんでご想像ください。

 ただひとつだけ。

 先日、LAS派の方からメールをいただきました。

 そのメールには、エヴァ手話に対する真摯なご意見と感想が書いてあったのですが、それとともに『エヴァ手話はLASな設定なのに、なぜ、LAS系エヴァ小説のリンクにないのか?』といった素朴な疑問がありました。

 確かにエヴァ手話のなかでのアスカとシンジの関係はLASなんでしょうけどねぇ(苦笑)。いや、実際私もアスカ人をカムアウトしていますし、アスカ×シンジなSSは好きですよ。ただ、『ひたすらLASのみ!』といった作品は、ちょっとヒキが入ってしまいます。いちおうこの『新世紀エヴァンゲリオン手話劇場』は、単にLASのために書いているわけではないので、LAS系ということは否定しませんが、その部分だけが誇張されることの無いように書いていきたいと思っています。レイだって大好きなキャラクターですしね。もっともうちのHPのレイはいわゆるアヤナミストの方から見れば、「なんじゃこりゃ!!」ってなことになるでしょうね。とにかく、この『創さんのほめぱげ』自体が異端児ですので、エヴァ手話もエヴァSS界の鬼っ子ですな。

 

最後に

 今回の第八話は、書き始めた時期が年度当初であったということと、7月17日から8月2日まで宇部中央銀天街イベントギャラリーにおいて開催された『特別展・庵野秀明の世界』に深く関わることになり、特に後編については途切れ途切れの更新になってしまい、たいへん申し訳けありませんでした。しかし、後編の車椅子バスケットのシーンは、慌てて書いて雰囲気をぶち壊したりしては大変なことになってしまいますので、その意味では少しづつ書いていったのは正解だったかな、とも思っています。また、今回はほんとうに書きたいことがたくさんあって、このままではいつまで経っても第八話が終わらないので、思い切ってばっさりとカットしました。カットした部分はいずれ今後のエヴァ手話で書いていきたいと思います。最後にこの新世紀エヴァンゲリオン手話劇場第八話:心の向こうに を書くにあたって、

 

物語の設定に快く同意していただいたDARUさん(CREATORS GUILD

 

車椅子バスケットの新しいルールを教えてくださったネットライダーズのみなさん

 

日本車椅子バスケットボール連盟(JWBF)公式HP

 

サブタイトルをつけてくださった『No Fear!友の会』のしもまきさん(へたのよこずき

 

無断友情出演(笑)のしまさん(手話通訳士:From KSS) 

 

下肢障害のことでフォローしてくれた宇部市福祉事務所福祉課障害福祉係のMちゃん

 

中編に登場してくれた山口県手話サークル連絡協議会のみなさん

 

 

そして、毎回感想メールを送っていただいた石龍さんをはじめ、『創さんのほめぱげ』サポーターのみなさんに、

 

心からありがとう!!


‘98.10月21日  創

P.S. これでエヴァ手話が終わるわけじゃないからね。


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