05/1/18
雑 18
養性
今年の年賀状のなかで、国川喜祥先生の達筆がひときわ目立ちます。
(参照)文学6 高陽の一酒徒
先生は、昔 私がある会社の係長をしていた時の部下ですが、書が趣味で毎日書道展に連続入選するほどの腕前でした。
あるとき先生が「会社を辞めて書道の師のところに弟子入りします」と言うので、私は「書で飯を食うのは大変だ。会社員をしながら趣味として書を続けたらどうか」と忠告しました。しかし、先生は聴き入れないで、神戸の広津雲仙氏の内弟子になってしまいました。妻子を抱えて30歳からの転進は大変な苦労であったようですが、とうとう今では書道界の大先生の一人になっています。書は根性を養うもののようで、私の忠告は的外れでした。
私は終戦時に日本海軍技術中尉として上海にいましたが、中国海軍軍需部へ連絡係として派遣されました。毎日、中国側の事務所へ出勤するのですが、仕事が殆んどありませんので時間潰しに習字をはじめました。これを見た中国海軍の陳上校(大佐)が何か中国語で言うのですが、分りませんので不審な顔をしていますと、彼は私の筆を取って「養性」と書きました。どうやら中国では習字を精神修養の糧と考えて養性というようです。私が「ミンバイ、ミンバイ」(判った)と答えますと、彼は嬉しそうに大きく頷きました。これも60年前のことになりました。