「いさなとる」 作品評

批評文:磯野好司 (ビデオヤング・1988年1月号より)

…谷口悌三監督作品「いさなとる」はドラマの構築と“鯨”という動物をキーワードとして、
さまざまなイメージを抱いている人物達を登場させ、まだ見ぬ鯨のイメージを作ろうとする作品だ。
約70分の上映時間の中で、カメラワークがさながら海上を走る舟を追いかけるかのように動いたり、
視線の動きを追うように見せたりしている。
そのカメラワークで作られた画面の中に、たとえばモノカラーの中で一色が浮かび出すような配色のバランスなど
計算された画面作りに好感が持てる。
セリフでも、あくまで観客のイメージが、自由に固定できるように考案され、セリフによって受ける情報器が
イメージを限定しないように作り出されている。
この構造は一種のゲーム盤における物語ゲームとも見ることができる。
観客の持っている持ちコマはホーシとヒララという二人のキャラクターだ。
そのキャラクターの行く先々に、さまざまな場所とそれにまつわるルールが待っている。
そのルールの中でそれぞれが持っているキーワードを組み合わせていく様が、
この映画を魅力的に見せる要因である。
しかし、この独特のリズムは、全体像を読み切ったところからスタートしていない観客にとって苦痛になってしまう。
いかに早く「いさなとる」という映画ゲームのルールを知るかが映画をより面白く見るコツなのだ。



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