高退教ホームページへ戻る

 

駄菓子屋ばあばと子どもたち

岡山・元駄菓子屋、今子ども食堂  花田千春

全教「クレスコ」2021年4月号 より

 


退職後、ひょんなことから駄菓子屋を始め、その後、子ども食堂を手伝っている。 八百屋だった空き家を手づくりで改装した駄菓子屋には、ソファ、畳敷きに火鉢、大きな古箪笥、ボンポン時計が飾ってある。 壁には大きな黒板、けん玉、オセロゲーム、将棋などの遊びものも置いてあるので、子どもたちは店にやってきて遊んで帰る。

ある日の夕方、小学4、5年生の男子数人でやってきて、 駄菓子を食べながら黒板に何やら描きはじめた。
短い棒のようなものが描いてあって「ちんちん」だという。 一人が突然くるっと振り返るなり、真剣な顔で聞いてきた。「おばちゃん、童貞なん?」突然の質間にあせったが、それから「ばあばの性教育講室」が始まった。
暑い夏の昼どき、家じゅうの1円玉を袋いっぱいかき集めて、かき氷を食べに来た小学2 年の男の子。並べて一緒に数えると160円あった。 かき氷は一杯100円。氷の山をひと匙ひと匙おいしそうに食べて 「ありがと」と帰って行った。お母さんは夜昼かけ持ちの仕事で働いていて、疲れて寝ているという。そっと出てきたらしい。
3月のある日、6年生の男の子が一人、畳の端に腰かけ不安そうに駄菓子を食べている。
「中学になるんじゃね」と声をかけると「中学校に行ったら成績が悪かったら高校に行けれんって聞いたけえ心配なんじゃ」 と思いつめた表情で言う。 何回か来た子でまじめな感じの子だが、 そんなに不安に思つているのかと、いじらしくてたまらなくなった。競争と選別を強める敦育の波が、子どもたちを大きな不安に陥れている。
学校がある時間だと思うある日の昼前、2歳くらいの小さな弟を連れて小学生の女の子がやってきた。ブタメンを2つ頼んだので、お湯を入れてやる。 冷ましながら少しずつ弟にも食べさせて、駄菓子を少し買い、帰って行つた。本当によく弟の世話をするのに感心した。兄弟が多く不登校ぎみだと先生方から聞いていたので、「よう世話してえらいね。またおいで」と見送った。 小さなブタメンは今日の昼ごはんだったのだろうか。
小学校や児童センターの先生方も訪ねてくださって、子どもたちの話をする。今の時代を一生懸命生きている子どもたちが、けなげでたまらなくなる。 時に、横断歩道の向こうからばあばを見つけて手を振つてくれたりすると、嬉しくてならない。
(1954年生まれ/はなだ・ちはる)

高退教ホームページへ