巻頭言   



医師会員の連帯を・・・


                      大竹市医師会会長    荒田寿彦


 この5月にミャンマーを襲ったサイクロンによる死者、行方不明者は13万人以上と言われている。引き続いて起こった中国四川省の大地震では約500万人の人達が家を失った。多くの人が死亡し、二次災害による被災者はさらに増え続けているようだ。

 遠い異国の出来事と高を括っている人も多いがこれらの大災害は私達の大竹市でも起こりうる。近くに小瀬川活断層がある。町は弥栄ダムに守られているといいながらこれが決壊しないという保証はない。海岸洽いには石油コンビナートが拡がり爆発火災事故など起こる可能性もある。隣町岩国は基地の町で不測の事態が発生する不安もある。

 インドネシア、中国では鳥インフルエンザが原因となり300人以上の死亡者が出ている。つい先日、日本でも十和田湖、北海道で大ハクチョウの死骸からあるいはニワトリから鳥インフルエンザ(H5N1)が認められた。これらの報道は鳥インフルエンザウイルスが極めて高い致死率を呈す人インフルエンザに変異し、あっという問に日本国全土をパニックに落しいれる不安を掻き立てる。怖いのは多くの市民がこの感染症の恐怖を恐怖として自覚していない現実である。

 国は大災害あるいは大規模な感染症に対して、起こりうるかもしれない、ではなくて、現実に起こるものであることを市民に周知させ、日常的に備え対処する必要がある。

 医師は、それら惨事の発生した際に、市民の健康と生命を守る立場にある者として社会的な責任が必然として問われることになる。したがって、地域の医師会は社会的使命として具体的にどの役割分担を任い、何を為すべきか日頃から明確にしておく必要がある。その目的で、消防署、行政、警察、近隣の他の医師会、救急病院などと常に連絡を取り合い、検討を繰返し、いつでも有事の時に連携できる体勢を構築しておかねばならない。せっかちに結論を求めるのであれば一見無意味なようで徒労に終わると思えるような会合も、対話をする、ということで一歩前進となっている事実を評価したい。

 得られた情報は会合に出席した会員のみの情報ではなく、遍く他の医師会員に還元されなければならない。幸福なことに大竹市医師会では、月例会、外科会、内科会、大竹エコー会、さらに四季の会、ドクターズ21の会など多くの機会が準備されている。会員には率先して参加し研讃を積み、親睦を回りながら模の繋がりを密に保つことが期待される。

 すべての会員は情報を共有することにより、それぞれが医師会の広報担当者になっていただきたい。外来診療を通じ市民に対して、いかなるメディアのその場限りの報道よりも正確に私達医師会活動の現実、医療現場の真実、今何を為すべきかを伝えることができるはずである。 会員80数名の小さな医師会ではある。それは全体がまとまり易いことを意味しており、逆に大きく力強い医師会になる可能性を示唆しているのではあるまいか。

 私達大竹市医師会会員の連帯を今まで以上に大切にしたいと思う。

 (平成20年4月)