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スギ花粉症について


毎年のように、またうっとうしいスギ花粉症の季節になりました。
花粉症は空中に飛散している植物の花粉を抗原として発症するアレルギー性疾患の総称です。
近年注目されている疾患ですが、局所療法などの工夫でかなり症状を緩和する事は可能です。
毎年悩まされている人は多いと思いますので、今回はスギ花粉についてお話しします。

スギ花粉飛散量に影響すると考えられる因子・なぜ近年スギ花粉が多くなったのか
 1.スギ花粉飛散の主役は樹齢20〜50年のスギである。
 2.建築用木材として輸入木材が多用されるようになり,スギ材の使用が減少したため,スギの枝落としなど
  の手入れがされなくなって,花粉量が増加したと言われています。
 3.スギ花粉飛散量に影響する気象
  スギの花芽分化期は7〜9月で,このころの気温が高いと,翌年の花芽の形成が多いと言われています。
  また、1日の日照時間が長いと花粉は飛び出しやすく、曇りゃ雨の日も花粉は飛ばないと言われます。
  飛散距離は気象条件が一定の場合,500m〜100kmくらい飛ぶらしく、100m以内ではほとんど落下しな
  いという報告もあります。
  1日の空中花粉量は,10時頃から飛びはじめ,12〜14時ごろがピークで,16時以降はきわめて少ない。

スギ花粉症の症状
  症状は,花粉の粒子が比較的大きく,抗原としての接触部位が眼,鼻に多いため,眼ではかゆみ,結膜発赤,異物
  感,流涙などがみられます。眼の好発部位は外眼部.ときに視力の低下,飛蚊症をみることがあります。
  鼻では,かゆみ,くしゃみ,水性鼻漏,鼻閉が特徴で、また,咽頭のかゆみ,咳,顔面その他皮膚のかゆみ,腫脹,
  頭痛,集中力の低下,いらいら感などを訴えます。

必要な検査
 一般的にはこの時期の特有な症状だけで診断が出来ます。その他には
  1.一般血液検査;血液像で好酸球増加がみられます。
  2.抗原・抗体検査;皮膚反応,粘膜反応,RASTなどによって検査します。
   また,鼻では鼻汁中のRAST,眼では流涙液中のRASTによって原因抗原を決定できます。

いつまで続くのでしょうか
  花粉飛散の季節が終われば症状は消失します。
  予後は良好ですが,毎年季節性に反復するので,季節前から予防的治療を開始したほうが良いでしょう。
  年中症状がある方ではスギ花粉かどうかの確認が必要です。ほかのアレルギーも考えられます。

治療法ワンポイント・メモ
 一般的な注意;
  花粉抗原の飛散季節には野外へのピクニックやゴルフその他外出を控える。
  外出時にはマスクをかけるのもよい。市販の花粉防除マスクはガーゼのみのものより有効です。
   雨の日以外は日中部屋の窓を閉めておいたほうがよく,風がなければ,夕方日照が弱くなってから窓や戸を
  あけて掃除をする。
  外出から帰ったら、衣服の花粉をはたき室内に花粉を持ち込まない。
  水道水で洗眼する。
 局所療法;
  洗眼、点眼、点鼻治療
   アレルギー性結膜炎の点眼剤 インタール、フルメトロンなど各社
   アレルギー性鼻炎の点鼻剤 フルナーゼ、リノコート、トーク、コールタイジンなど各社
  これらの点眼、点鼻剤でかなり症状か改善できます。
  人によっては効果に差がありますので、色々試して自分にあった薬剤を見つけてもらいましょう。

  実は私も10数年来スギ花粉に悩まされていますが、数年前よりリノコートの点鼻が合い、その後は
  殆どひどい症状がなく経過しています。
  リノコートはカプセルの中に粉末の薬剤が入っており、特殊な器具でハナの中に粉末を吹き付ける
  仕組みですが、簡単に出来ます。
 内服薬;
  局所療法のみで症状が改善しない場合や、アレルギーの初期治療には内服を併用することもあります。
  抗ヒスタミン薬が眼,鼻の花粉症ではよく効きますが眠気や脱力などの副作用もあり車の運転には
  注意が必要です。
  その他抗アレルギー薬(リザベン,ザジテン,アゼプチン,セルテクト,ケタス)などは眼,鼻などの花粉症に
  予防的治療として季節前から投与することもあります。色々な種類のアレルギー剤がありますが
  これも、人によって効果が違いますし、副作用の報告もありますので主治医にご相談下さい。
      (診断指針・1996 IGAKU-SHOIN ・中島重徳より引用)

          平成9年2月  玖珂中央病院  吉岡春紀


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