経皮内視鏡的胃瘻造設
(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy:PEG)
について


 最近、脳卒中などの後遺症で経口摂取が出来ない患者さんに、経鼻栄養に変わり内 視鏡的胃瘻造設が行われるようになりました。
 経皮内視鏡的胃瘻造設術(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy:PEG)とは、胃内視鏡を使って行う小手術で、お腹に小さな穴 を開けて、そこから栄養補給を行うチューブを胃に固定します。お腹から栄養剤を与 えて全身状態を改善させることが目的です。以前は手術による胃瘻造設もありました が、内視鏡を使って行う事で、より簡単に行うことが出来るようになりました。

 脳血管障害の後遺症などで食事や内服の経口摂取が出来なくなると、一般には 鼻腔栄養と言う、鼻から胃へチューブを挿入して栄養を与えるか、中心静脈栄養と言 って、高カロリーの点滴を24時間連続で行う事をしていました。しかし、鼻腔栄養は 患者さんの違和感が強く、手が動く方は無意識でもすぐに自分で抜いてしまうために 手足を縛られたり、痰が出しにくく嚥下性肺炎を繰り返すなどの患者さんも多く、安 定した栄養管理が出来ない患者さんもおられます。また何より鼻からチューブを入れ られている姿は良いものとは言えませんでした。
 中心静脈栄養は点滴だけで栄養を補給するため24時間点滴を持続する必要があり自 由が利かず、栄養の面・管理の面でも数ヶ月に及ぶ長期の施行は困難でした。
 PEGによる経腸栄養は、安定した栄養管理が可能になります。痴呆の軽減、嚥下機 能の回復、長期間臥床患者が歩行可能となるなど機能回復を示す患者さんが多く見受 けられ、在宅医療へと移行出来る方もみられる様になりました。

 そこで当院でも、今まで鼻腔栄養で栄養管理を行っていた方にもPEGを、積極的に行ってゆこうと考えております。
 胃瘻造設の方法・合併症・管理の方法などは主治医や看護婦がご説明しますので、 ご理解とご了解いただければ、当院で手術を行います。

PEGの適応
 
前述したように脳血管障害の後遺症などで意識障害や嚥下障害があり食事 や内服の経口摂取が出来ない症例です。鼻腔栄養を行っている患者さんと思って下さ い。

PEG造設日までに行うこと
 出来れば1週間くらい前に、内視鏡検査を行い、胃瘻造設のための内視鏡が行える か・胃内の活動性病変がないかを確認しておきます。
 手術後数日間は胃瘻の栄養補給は出来ませんので、手術前日夕より絶飲食とし、点 滴や中心静脈栄養を開始し、全身の栄養状態を維持させます。

PEGの出来ない症例
 
胃瘻造設のための内視鏡が行えない例・胃内の活動性病変がある症例。
 高度の肥満・腹水貯留・開腹手術後などは当院では見合わせます。
 
PEG
 当院では基本的には午後から行います。
 内視鏡室で鎮静剤の注射をする事もありますが、普通は喉の噴霧式局所麻酔と、腹 部の局所麻酔のみで約15-20分でPEG造設は完了します。
PEG造設法
 PULL法と言われる方法で胃瘻を造設します 。他にPUSH法・イントロデューサー法などもあります。

  
 1.まず、内視鏡を挿入し、胃内の穿刺部位を決めます、腹壁から穿刺針を刺し、針 の中に
  ガイドワイヤーという紐を挿入します。
 2.その紐を内視鏡で掴みます。(上の図)
 3.内視鏡を引き出すと共にガイドワイヤーも口から引き出されます。
  その紐の先に胃瘻チューブを結びます。(下の図)

  
 4.今度は逆に腹壁から胃瘻チューブの付いた紐を引っ張ります。(上の図)
 5.チューブは胃内に固定され、内視鏡で確認します。(下の図)
  これで終了です。
            (pull法の図はエキスパート・ナース7月号より)

実際の写真
  
77歳 女性 くも膜下出血後の意識障害で脳外科より転院されました。
  1年以上鼻腔栄養を行っていました。

     
     施行中写真              胃瘻完成

    
    左上は穿刺部位を確認。腹壁から指先で押さえたりします。
    右上は穿刺針が胃内にのぞいたところ。
    左下はガイドワイヤー紐を内視鏡で掴んでいるところ。
    右下は胃瘻完成・固定を確認。

PEGの問題点
 PEG造設後早期には感染することもありますので毎日消毒が必要です。
 自己抜去も可能性はありますが、胃瘻が安定するまでは腹帯などで自己抜去を予防 します。造設後早期に抜去されると腹膜炎などの合併症を起こす危険があり、その際 は外科的な開腹手術を考える必要もありますので、外科医師と連携します。

PEG造設後経腸栄養が開始されるまで
 腹帯をしてPEG造設部位の安静を保ちます。PEG造設後2から3日目に経腸栄養を開始 できます。ツインラインという栄養剤を少しずつ胃瘻から注入します。静脈栄養から 経腸栄養主体の栄養管理に移行するまでにはPEG造設後4日から7日を要します。
 その後消化不良などなく安定すれば、ツインラインから病院では流動食に切り替え る場合もあります。
 内服薬なども必要ならこの時期から粉末にして胃瘻から注入できます。
 在宅へ帰られる患者では、流動食を家庭で作ることは出来ませんのでツインライン などの栄養剤を続けます。

PEGの交換
 胃瘻チューブ交換は、下の図のようにいろんなタイプがありますが、通常は交換が 簡単なバルン型の栄養チューブを使用しますので約10秒で出来ます。PEGが不要にな ったときは、ボタン型のチューブにしておけば、必要になったときにまた利用できま す。本当に必要なくなれば、抜いてしまえば1日で胃瘻は閉じてしまうようです。2-3 カ月に1度の栄養チューブ交換で十分です。

  
  胃瘻交換チューブのいろいろです。
  最初の設置は左から2番目のタイプが主に行われます。

 以上の説明でおわかりにならないことがあれば、主治医にご質問下さい。


                   平成11年6月 玖珂中央病院 吉岡春紀

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