禁煙外来の保険適応について 

禁煙の希望者に医療機関でニコチンパッチが保険で使えるという報道が先行し、患者さんはどこの医療機関でも保険治療できると思って受診されるケースも増え、現場では少し混乱しています。

先日も5月から自費診療で、禁煙外来を行っている方から、「6月になったらニコチンパッチは保険が聞くようになるのですね」という質問をうけました。

たとえば、5月24日のマスコミ報道 共同通信では

6月から保険適用 禁煙ニコチンパッチ

『4月の診療報酬改定でニコチン依存症患者の禁煙治療に公的医療保険が適用されたことに伴い、厚生労働省は24日、禁煙治療の際、禁断症状を軽くするために使うニコチンパッチを保険対象とするよう中央社会保険医療協議会に提案、了承された。6月1日から適用される。

 治療期間中に使うパッチ代の自己負担は原則3割となる。従来通り医師の処方せんが必要。現在、8週間で使うパッチ代は2万円強となっている。

 パッチが保険対象外だったため、4月から保険適用された禁煙治療にパッチを併用すると、「(保険と保険外の)混合診療」に該当し、カウンセリング 部分(5回で約1万円)も含め全額が患者負担になる。

 対象は、禁煙治療プログラムを受けたいと希望する人で、ニコチン依存度 テストで「依存症」と判定された人。同省のモデルでは、2または4週間に1 回通院してカウンセリングを受けるほか、肌にはったパッチからニコチンを吸収する置換療法を受ける。約3カ月で初診も含め計5回ほどの通院を想定している。』

 このように、対象者の簡単な記載はありますが、禁煙指導の出来る医療機関についての説明は全くありませんので、この記事を見た人はどの医療機関でも禁煙指導出来るものと思います。

マスコミによっては少し詳しい説明を加えたところもあり東京新聞では

ニコチンパッチ 月内に保険適用 東京新聞

 『川崎二郎厚生労働相は十二日の衆院厚生労働委員会で、禁煙時に体内のニコチン濃度が低下する際の禁断症状を抑える「ニコチンパッチ」を公的保険の対象とすることを明らかにした。近く医薬品の保険適用の可否を検討する中央社会保険医療協議会を開き、今月中に保険薬とする。

 禁煙治療については、四月から公的医療保険の対象となったが、パッチが保険適用外であることから、パッチを使うと違法な「混合診療」に該当。厚労省は四月二十八日の医療機関向け通知で「使えば禁煙指導全体が(全額自己負担の)自由診療となる」と明確にしていた。保険適用を急いだのは、医療現場の混乱や禁煙学会から批判を受けたためとみられる。

 禁煙指導は四月の診療報酬改定で、ニコチン依存症と診断された患者に日本循環器学会などが作成した標準手順書に基づく治療をした場合の保険適用が認められた。

 学会の手順書がパッチ使用を前提としているため、パッチ自体は保険適用外でも、その分を患者が負担すれば、検査や問診には保険を適用できると判断して禁煙治療した医療機関が相次いだ。ところが、パッチ分だけの自己負担は認められず、地域の医師会が注意を促すなど、医療現場に混乱が起きていた。

 日本禁煙学会は「治療が手順書を前提としながら、パッチを使えば、保険の適用外となるのは自己矛盾だ」として、四月にさかのぼってパッチを保険適用することを求めている。』

 と書かれており4月実施された禁煙指導がパッチを使うと違法と判断された理由などの説明はあります。しかしこれにも6月から実施される医療機関の説明はありません。

4月から診療報酬として設定された「ニコチン依存症管理料」は次のような制限があります。

ニコチン依存症管理料
 ニコチン依存症と診断された患者のうち禁煙の希望がある者に対する 一定期間の禁煙指導について、新たに評価を行う。

 初回(1週目) 230点
 2回目、3回目及び4回目(2週目、4週目、及び8週目) 184点
 5回目(最終回)(12週目) 180点

〔対象患者〕
 以下のすべての要件を満たす者であること
 ・ニコチン依存症によるスクリーニングテスト(TDS)でニコチン依存症と診断された者であること
 ・ブリンクマン指数(=1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上の者であること
 ・直ちに禁煙することを希望し、「禁煙治療のための標準手順書」(日本循環器学会、日本肺癌学会及び日本癌学会により作成)に則った禁煙治療プ ログラム(12週間にわたり計5回の禁煙治療を行うプログラム)について説明を受け、当該プログラムへの参加について文書により同意している者であること

〔施設基準〕
 ・禁煙治療を行っている旨を医療機関内に掲示していること
 ・禁煙治療の経験を有する医師が1名以上勤務していること
 ・禁煙治療に係る専任の看護職員を1名以上配置していること
 ・呼気一酸化炭素濃度測定器を備えていること 
 ・医療機関の構内が禁煙であること

〔算定要件〕
 ・「禁煙治療のための標準手順書」(日本循環器学会、日本肺癌学会及 び日本癌学会により作成)に則った禁煙治療を行うこと
 ・本管理料を算定した患者について、禁煙の成功率を地方社会保険事務 局長へ報告すること
 ・初回算定日より1年を超えた日からでなければ、再度算定することはで きないこととする。

これを見て、保険診療をおこなう禁煙外来の仕組みが少しわかっていただけたと思います。

ニコチンパッチを保険診療で使うことの出来る禁煙外来は、施設基準を申請して認定された医療機関が、ニコチン依存症と診断された、喫煙歴の長い患者さんに、本人の禁煙の誓約の元に処方した場合に認められるもので、どの医療機関でも保険適応になるわけではないのです。


 そこで 当院のお知らせとお願い。


「禁煙補助剤としてニコチンパッチは6月から薬価収載され保険薬になり、どの医療機関の外来でも処方できるようになる」と、どこでも貰えるようにマスコミで報道されていますが、これは正しい報道ではありません。
 ニコチンパッチを保険を使って処方できるのは、禁煙指導の経験のある医師が、喫煙の程度をチェックするCO測定器を購入し、保険診療指定を国に届け出た医療機関だけであり、また患者さんもニコチン依存症と診断された患者さんだけに処方できるのです。
 届け出の内容には「施設内全面禁煙」など厳しい基準がありますので病院などでは簡単に申請できず、周辺の病院でも申請施設は少ないようです。
 そのため、当院では希望者にはしばらくは今まで通りの自由診療として禁煙外来は続けますが、医療保険は使えませんのでご理解ください。
 保険での診療をご希望の方は、保健所などで禁煙認定施設をお確かめの上、受診してください。

              平成18年5月28日 玖珂中央病院 院長