新型インフルエンザの対策見直しが、簡単にできない理由

 今回のブタインフルエンザの実態が少しずつはっきりしており、弱毒性で、海外でのハイリスク以外は死亡率も、重症化も稀であり、高齢者の感染が少ないなど、季節性のインフルエンザに近いか、むしろ季節性インフルエンザより臨床症状は軽いと考えられるようになっています。
 そのため、この新型インフルエンザ対策を見直して、せめて、しばらくの間季節性インフルエンザと同じような対策がとれたら、国民の混乱も沈静化するでしょうし、万一の強毒化や鳥インフルエンザの新型発生に備えて、対応も出来ますし、なんと言っても、PPEやマスクなどの整備も薬の備蓄も準備できます。

さてここまで解っても、季節性インフルエンザ同等の対応がとれない理由の一つは感染症新法にあります。

 感染症新法では、インフルエンザは2つに分類され,鳥インフルエンザは、二類感染症、季節性インフルエンザは五類感染症に分類されます。
 元々ブタインフルエンザはどちらにも入っていませんでした。

二類感染症は
 急性灰白髄炎、結核、ジフテリア、重症急性呼吸器症候群(病原体がコロナウイルス属SARSコロナウイルスであるものに限る。)、鳥インフルエンザ(病原体がインフルエンザA属イン
フルエンザAウイルスであってその血清亜型がH5N1であるものに限る)の5疾患と定められ、
 政令で定められた結核、重症急性呼吸器症候群、鳥インフルエンザの擬似症患者についても患者として、法で定める強制措置の対象となります。

五類感染症
 インフルエンザ定点把握(小児科・内科)
 インフルエンザ(鳥インフルエンザを除く)

 今回のインフルエンザは、「新たに人から人に伝染する能力を有することとなったウイルスを病原体とするインフルエンザであって、一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものを新型インフルエンザ等感染症と定義され、ブタインフルエンザ(H1N1亜型)は「新型インフルエンザ等感染症」として取り扱う。」とされました。
 そして、WHOでも新型インフルエンザに指定し、フェーズ分類もフェーズ4から5へと指定されたため、日本国内だけでの変更も難しいのが現実です。

 これからも国内では、地域での少数の感染拡大はあるかも知れませんが半年先の第2波までは、突然強毒化して重症化するとは考えにくくそれまでは、対応を見直して、貴重な資源を温存する方が良いと思います。
 世界的には、これから南半球での感染の広がりや、アフリカ・東南アジアなど医療整備の整っていない地域で感染が広がれば、その地域の国民にとって重大な影響は否定できず、新型の認定を下げられないのかも知れません。
 世界的に見れば、そんな国に、防御や治療の手をさしのべで感染拡大を防ぐ方が日本の進む方向ではないでしょうか。

 国内基準だけでも、二類感染症を外して、五類のインフルエンザに指定し、但し届け出の義務だけでも、定点施設から全医療機関に出来ないのでしょうか。

 も一つの外せない理由は、

 新型インフルエンザの疫学的な研究、サーベイランスにあると思います。


 世界で初めてのヒト-ヒト感染の豚インフルエンザのウイルス的な特徴や臨床症状・感染経路・予後などを知るためには、全数調査が必要ですし、それが出来るのは先進国だけです。多くの研究者はサーベイランスを望んでいると思います。精細な調査が今後の感染症の研究に必要だと言うことは論を待ちません。


 しかし、WHOが新型インフルエンザと認定しても、今回の新型インフルエンザの全数調査を続けている国は、今のところ日本だけと聞きます。
 それだけ、診療態勢・治療態勢・検査態勢全てにカネ・ヒト・モノがかかるのです。
 意義あることは否定しませんが、サーベイランスを続けることは効率化の面から言えば疑問もあります。


 前述しましたように、ある程度の国内発生でこのウイルスの今の正体が見えた状況で、次の時期を考え、国内のサーベイランスも見直しても良いのではないかと考えます。

以上新型インフルエンザの対策見直しが簡単にできない理由を考察してみました。