学会発表 第100回周南医学会

 −医療現場におけるパーソナルコンピューターの活用− その1
 マッキントッシュによる内視鏡画像の取り込み、保存についての経験

 岩国、玖珂ドクターズMAC同好会
  玖珂中央病院 吉岡春紀、山下秀治、 錦病院 玉田隆一郎、川野 亮
  岩崎内科医院 岩崎皓一、岩国みなみ病院 村山正毅、 木村医院 木村直躬


はじめに

近年、パーソナルコンピューターの進歩はめざましいものがあり、特にマッキントッシュは機種の低価格化、性能の向上、操作のしやすさ、多くの機能を持つこと等により医療現場でも汎用されるようになった。我々も昨年より岩国、玖珂地区のマッキントッシュを使っている有志によるドクターズMAC同好会を結成しお互いに情報交換を行っている。 会員に元々コンピューターに詳しい者はおらず、頭も少し固くなった年令からの出発で、ほとんどすべて初心者の集まりであるが、今回、我々開業医が医療現場でいかに安くまた効率を上げるようにコンピューターを利用しているかを紹介し、経験者のご指導を仰ぎたいと思う。
本論文は我々の経験を述べただけの総論的なもので、論文としての体裁は整っていないし、マッキントッシュのみをあつかった偏ったものであることはお許し願いたい。

パソコンの医療現場での利用

パソコン(マッキントッシュ)の医療現場での利用としては以下のような利用が考えられる。勿論医療現場に限定されるものではないし、機能を発揮するためにはそれに見合うソフトの購入と経験が必要である。
ワープロとして文書作成機能は十分に備えており、多くのワープロソフトも市販されており、患者さんの紹介状、院内案内ほか文書を必要とする書類には必要な機能である。医学論文作成などでは医学辞書なども整っており文書作成に不自由を感じることはない。また、色々なフォントもあり自由な文書の作成が出来、ワープロ専用機にも劣ることはないと思われる。。
次にデータ整理にも利用できる。患者情報のデータベース、疾患の一覧、住所録作成など様々な整理が可能であり各自が自分にあったデータベースを作ることが出来る。
 次にカラースライド作成があげられる。医学会においてスライドによるプレゼンテーションは不可欠であり、簡単にカラースライドが作成可能で、これがマッキントッシュが急速に普及しはじめた原因かも知れない。
その他の機能として英文和訳、和文英訳等の翻訳ソフトもある。市販のソフトのレベルではまだ十分な翻訳とは言えないしし、ソフトも高額であるが利用者が増えてくればより安い正確なソフトも出てくると思われる。
画像取り込みについては今回の発表の主題であるが、医療現場でも画像診断は益々多くなり胸写、CT,MRI、エコー、内視鏡画像、眼底写真等など開業医でも画像の保存には困る時代がくるものと思われる。このような多くの画像を取り込み、保存し、整理する事がマックでは容易である。もちろんまだすべてを保存するためには高額な設備投資が必要であるが、一般開業医としては自分の施設にあった方法を選択すれば良いと思われる。
次にOCRソフトも充実しており、必要な文献や新聞記事などを自分でワープロで入力することなしにスキャナーで取り込み自分の文書として保存する事も出来、文献の整理や情報の整理に有用である。
また、今後の方向として動画の作成等が簡単に行われるようになればスライドによる現在の方法以外にもプレゼンテーションの方法が変わり学会発表の形式も変わるものと思われる。
医療情報通信について、まだ我々同好会でもパソコン通信は行っていないが、愛知県の岡崎市では医師会単位でマックによる通信システムを開発し実用化しているところもあり、山口県医師会でも今後パソコン通信を考えているとのことで、新しい分野だと思われる。

さて内視鏡の画像の記録や保存に関しては、今までは16ミリか35ミリフィルムに記録し保存していた。しかしフィルムの現像に時間がかかり検査当日に患者さんに画像の説明は出来なかった。また、フィルムの保存は長期保存には向いていない。その後、電子内視鏡装置が普及し始め一般の開業医も使用する施設が多くなった。電子内視鏡では画像をモニターに映し出すことが出来、検査後すぐに画像をプリントして患者さんに説明でき、紹介医にもその日に写真を送る事が出来る利点がある。この電子内視鏡の画像の保存に関しては、当初フィルム以外にも2インチのフロッピーディスクに保存が可能であったがフロッピーディスクの単価が比較的高価で、しかも互換性がなくコンピューターへの取り込みは困難であった。また、ビデオテープでは保存も大変で撮影部分の頭出しも迅速に行えず普及はしていない。
最近フジノンが開発したシステムでは市販されている単価の安い3.5インチのフロッピーディスクを使用し、画像も解像度を落とすことなくコンピューターに取り込む事が出来るようになった。保存に関しては3.5インチのフロッピーディスクを大量に保存することも大変であり、将来的には大量のデータ保存は光磁気ディスク、CD-ROM等が普及すると考えている。

マッキントッシュを使った内視鏡画像の取り込みと保存

マッキントッシュを使った内視鏡画像の取り込みと保存について説明する。
使用機材はフジノン電子内視鏡装置、画像保存装置としてフジノン デジタルイメージムファイル、マッキントッシュ本体、3.5インチのフロッピーディスクをマッキントッシュに取り込むためのフジックス メモリーカードプロセッサー、メモリーカードが必要である。マッキントッシュ本体と電子内視鏡装置を除いた画像保存関係の価格は約50万円となる。

図-1 デジタルイメージファイル

内視鏡装置に接続したデジタルイメージファイルに直接画像を取り込み3.5インチのフロッピーディスクに保存する。この装置では中等度の解像度でフロッピーディスクに28枚の画像を記録することが出来るため、フィルムに記録するのと比べても問題はなく、通常は1症例1枚のフロッピーディスクで検査を行っている。勿論カラープリンターですぐにプリントは可能であるし必要なときにプリントが出来る。また、コンピューターへの取り込みが必要ない場合にはこの装置のみでメモリーカードプロセッサーは必要なく、3.5インチのフロッピーディスクは1枚100円以下で購入できることより、従来の16ミリ、35ミリフィルムや2インチのフロッピーディスクの価格より考えても、ランニングコストはかなり軽減できるものと思われる。

図-2 システムの構成

システムの構成を図-2にしめす。マッキントッシュへの画像の取り込みを示すが、取り込んだ画像はデジタルイメージファイルでフロッピーディスクより別のメモリーカードに移し、メモリーカードプロセッサーでマッキントッシュ本体に取り込む。画像取り込みソフトは付属しており、画像は圧縮されて保存できるため、ハードディスクの容量はそれほど必要とはならない。ただし取り込む画像はフロピーディスクをすべて取り込むわけにはゆかず、一度に取り込める画像枚数はメモリーカードには40枚しか出来ないため、必要な画像のみを取り込むのが良いと思われる。
また、このシステムは電子内視鏡以外にも超音波装置、眼底カメラ、顕微鏡装置などモニターに画像出力できるものはすべて可能であるので将来的にはカラー超音波装置に接続すれば超音波画像の保存も容易になると思われる。
問題点はメモリーカードプロセッサーを使用することなく、コンピューターに直接3.5インチのフロッピーディスクが使用できるようになればもっと使用頻度が増すものと思われる。
注;最近はメモリーカードプロセッサーを使用することなく直接マックで画像処理が可能となった。

 

   図-3 胃潰瘍           図-4胃ポリープ


このシステムで取り込んだ胃潰瘍の画像を図-3右に示す。中等度の解像度の画像であるが拡大しても十分に鑑賞に堪えると思われる。
今回の主題からはそれるが、その他、マッキントッシュでは画像の処理が可能で、たとえばのように胃潰瘍と図-3と、胃ポリープ図-4の別々の患者さんがあったとする。
この画像をAdobe Photoshop等の画像処理ソフトで合成すると

図-5 合成画像

図-5のように実在しない潰瘍と腫瘍の合成画像がつくれてしまう。従ってマックによる画像のスライドは処理すればいくらでも画像を作ってしまうことが可能である。
特に白黒のエコー画像などは処理も簡単で、すぐにこのように実際にない肝癌の像が作成可能であり、学会発表などでは発表者のモラルが問われるようになるかもしれない。

  

   原発性肝癌          肝癌合成画像

おわりに

以上一般開業医でも使える装置でのパソコンの利用、特に今回は電子内視鏡画像の保存と処理について述べた。
今後益々医療現場においても画像の記録や保存は多くなるものと思われ、色々な方法で改善されてはいるが今回紹介したフジノンの電子内視鏡画像の記録、保存システムはランニングコストの軽減も図られ、画像の質の劣化もなく、後で自由に画像処理もでき内視鏡以外にもその他の画像保存も可能であり今後普及して行くシステムであると考えられる。
まだこのようなフロッピーディスクを使った記録や保存には医療の保険診療には認められていないが、この面では改善が望まれる。将来はフロッピーディスクに代わって保存容量の大きな光磁気ディスクが主流になると思われるが、開業医レベルへの普及は使いやすさと価格の問題が改善されねばならない。

(平成6年10月 第100回周南医学会 徳山市で発表、平成7年 山口県医学会誌第29号 P 21-24)


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