新型インフルエンザ対策の見直し
 早期に現在の「新型インフルエンザ対応」の対策変更を

 神戸市内及び大阪府内(北摂地域を中心)に新型インフルエンザの事例が発生し、毎日のように感染者が増えています。昨日は関東地区でもアメリカから帰国した高校生の感染も報告され、記者発表の場面までライブ中継されていました。

 前日発熱がありながら成田の検疫をくぐり抜けて、自宅に帰っていたということですが、いかに空港での検疫が難しいかを示した事例でもあります。

 兵庫県・大阪市でも関係者の必死の対応が行われていますが、発熱外来の受診者の増加・入院ベット不足などで、軽症者の退院や一般診療所での診察が行われるようになっています。

 しかし、新型インフルエンザは今の国の対策指針に従えば、感染力・致死率の高い鳥インフルエンザの対策であり、海外発生期・国内発生期・拡大期。まん延期など、その時期にあわせた対応をとるように決められており、かってな診療は出来なくなっています。

 国内発生期・感染拡大期では、地域で指定された発熱外来を受診し、新型の疑いがあれば、隔離、PCR(遺伝子検査)で新型インフルエンザと確診されれば措置入院。と決まっています。

 しかし、アメリカでの症例報告などから、今回のブタインフルエンザは、弱毒性で、感染力は高いが、重症化や死亡率は低いことが知られ、季節性のインフルエンザと同じ対応で良いとも言われています。

 昨日国立感染症センター・神戸市から、今回の新型インフルエンザの臨床像が発表されました。

 それによると措置入院となった43例では、ほとんどが10代の若者であり、重度の基礎疾患を持っている人が少なかったこともあり、ほぼ全員が軽症で入院の必要は無かったことが報告されています。

 当地でも、国内発生・拡大を機に医療圏の緊急対策協議会が開催され、検討を行っていますが、行政側は「今回の新型インフルエンザが低病原性であることを踏まえ、基本的な考えとして、「今回は」通常の季節性インフルエンザと同様に対応できればと思っています。」というスタンスに変わって来ました。しかし、これはまん延期の対応であり、まん延期はこれまでの鳥インフルエンザでも、これ以上定点での発熱外来では対応できなくなり、どうしようもなくなった時に、地域の一般診療所に任せると言った発想であり、この時期には感染地域の医療は崩壊していることが予測されます。

 もし季節性のインフルエンザと同じ対策で良いと言うならば、当初からその対策をとらないと、市民は大混乱すると思います。

 毎日、完全防護服での空港での検疫や発熱外来の診察風景をテレビで見せつけられ、毎日発生数が増えていることが報道され、マスコミに散々危機感を煽られて、新型インフルエンザの恐怖を植え付けられた市民にとって、ある日突然、「このインフルエンザは弱毒で命の心配はないから、発熱外来は止めて近くの診療所で診てもらいなさい」と言うようなものです。


 国が、感染の拡がる前から、「国内や海外の発生状況を調べても、このインフルエンザは普通の季節性インフルエンザと変わらないし、初期の感染隔離や入院は必要なく、一般の診療所で診察できますので冷静に対応して下さい。」ときちんと説明を続けるなら、市民も少しずつ不安が少なくなると思います。

 一方、関西では初期の対応はトリインフルエンザの対応でしたが、現実に軽症者の入院が相次ぎ、発熱相談センターの電話の応対もパンクし、定点での発熱外来も受診者の増加で対応が困難になり、対策時期を「まん延期」に準じることにして、一般診療所対応に変わりました。
しかし、心配した問題点が沢山でており、途中から「まん延期」の対策変更も難しい事が報告されています。

兵庫県医師会の足立先生の報告では

 ・発熱外来協力病院は未公表でありながら、準備不足の上、直接受診等もあり十分機

  能できなくなっている。各地区での同外来拡大等が追いついていない。
 ・電話相談センターに電話がつながらない状態となっており、医療機関からの問合せ

  にも答えられない状況である。
   同発熱外来・専門医療機関の整備拡充は継続されるべき。
 ・薬と診断キット、さらにはマスク等の供給が一般医療機関には途絶えている(この

  状態のまま、一般の医療機関に患者が押し寄せれば大混乱  となる)
 ・拡大期としての努力を十分にせぬまま、蔓延期宣言で一般医療機関まる投げで良いのか。
 ・エビデンスもなく、「季節性インフルエンザ」同等と断定して、そのしっかりした

  把握や対策を怠るならば、次の波にも対応できない
 ・このままでは、対応できない一般医療機関が非難の対象となるだけ。
 ・限られた試薬やタミフルを有効に使うためにも拠点ごとの集約型治療が必要
 ・例え蔓延期となっても、医療機関を感染拡大の場にしてはいけない!
などがあげられています。

また
「まん延期」宣言を出す前提として、それまでに整えていただくべき条件として
 1、薬、検査キットの安定供給
 2、電話相談センターの回線数や対応者数を増やし機能強化
 3、協力病院の公表と機能強化
 4、医療従事者に対しての感染予防装備のガイドラインの提示
  (最低推奨装備)
 5、これまでの症例の詳細提示(今後の診断治療の参考)
 6、市民への広報の充実 (電話対応等の後受診を)(患者の分離のため)

が示されています。

 このように、新型インフルエンザ対策の変更は必要だと思いますが、これらをきちんと話し合い了解した上での対策変更だと思います。

ある日突然、総理大臣が冷静な対応を訴えても、市民は安心できません。


 問題点を挙げてみますと
○抗ウイルス薬のタミフル・リレンザの備蓄の流通配送システムを会員に周知徹底すること。
○一般診療所での発熱外来は手あげ・登録制になるのか、ならないのか
○備蓄タミフルは登録した医療機関だけに販売するとのことであるが調剤薬局には原則卸さないようで、インフルエンザの診療は院外処方の場合のどう対応するのか、院内処方と院外処方の区別
○手上げした医療機関には診療する職員の感染予防のタミフル処方は可能なのか。
○10代の小児には季節性インフルエンザのタミフルは原則禁止がまだ解けていないが、それならリレンザは供給出来るのか
○診断の補助となる、迅速検査セットも一般の診療所や病院では、季節性のインフルエンザが終わった今、在庫はそんなに置いていないと思いますし、新たな注文も出来ません。インフルエンザとしての検査はどうするのか。
○感染防護についても、感染拡大期までは新たな新型を発見するために完全な防御が必要とされていますが、一般診療所には完全なPPEを配置している診療所はほぼ皆無だと思います。マスク・消毒薬の確保も在庫不足です。
○完全な対応をしなければ新たな患者が発生したとき、診療医は濃厚感染者として1週間の業務停止となるならやはり、診療協力に尻込みしてしまいますし、医療機関閉鎖の時の補償も無いのが現実です。自分の身を守ることも大切ですがサージカルマスクで対応可能なのか示されていません。

 市民生活においても、拡大期・まん延期には国の新型インフルエンザ対策は大きな制限があり学校の休校措置や企業の対応など社会生活にも大きな影響があります。普通のインフルエンザと同じ対応でよいなら、市民も安心できます。

そして、もっと大切なのは、今回は致死率も高くない・比較的軽い症状の新型インフルエンザでしたが、今後ウイルス変異での強毒化や、これまでの鳥インフルエンザの新型化も否定できませんし、これまたいつ起こるのかは誰も予測できません。


なら、今ある新型インフルエンザ対策用の、「ヒト・カネ・モノ」の資源を軽症のインフルエンザに湯水のように使うことはどうなのか、みんなで考えるべきです。次に起こるかも知れない危機に備えて、残しておくことを考えるべきです。


 人の問題では、特に空港での飛行機内の検疫は、世界的にもあまり効果が少ないことは解っていますが、全国から医師や看護師を強制的に集めて、完全防御での対応を続ています。もはや感染の時期を遅らせる意味もないと思います。早急に止めて、一番大事なヒト・医師・看護師を地元に帰すべきです。

 新型インフルエンザの感染力は、季節性よりも少し高いとの報告もあり感染者が増えると思われますし、全てに季節性の対応とはいなかいとおもいます。

ハイリスクの人たちに感染させないことは最低限の対策です。

慌てず冷静に対応すれば、克服できるものと考えます。

 5月21日