インフルエンザ 2000年 今年の情報

インフルエンザに関して、今年2000年秋から冬(12月)までの情報を掲載します。

変わったこととしては
 1.高齢者のインフルエンザワクチン接種が1回で良くなったこと
 2.ザナミビル(リレンザ)の発売が許可されたこと
 3.インフルエンザの診断に新しい迅速診断キットが認可されたこと
くらいでしょうか。

 インフルエンザの治療薬として期待されていた新薬「ザナミビル(製品名リレンザ)」も昨シーズンにはすでに発売の用意もされ、いつでも使える体制で認可が待たれていましたが、結局昨シーズンは認可されず、1年かかって先日(8日)にやっと発売が許可されました。
 しかし後述する「混合診療禁止」の規定により一般には使えない(使いにくい)薬になっています。今後発売が予定されているインフルエンザの新薬(タミフル)もこの調子では今シーズンの認可は難しいようですね。

 これらの薬は薬価(薬代)がたかく、大流行して全国的に処方されたら医療費がアップして大変だと言うことで保険適応(診療・検査・治療すべてに保険が効く)を外されたのだと思いますが、これも厚生行政なのでしょうか。
 副作用が少なく・良く効く薬なら認可すべきです。それによって急性期に治癒できれば長引いたり、増悪したり、感染が拡がったりする事の二次的な医療費増加の方がもっと医療費がかかると思います。
 もし高すぎる薬価なら、調整して発売すれば良いと思います。
 保険適応できない理由が別にあるならば公表すればいいのです。

関連したニュースをご紹介しておきます。

   平成12年12月11日 吉岡春紀


視点 インフルエンザ ワクチン接種
 日医ニュース 平成12年12月 942号より

 今年もインフルエンザの流行する季節を迎え、「かかる前に予防、こじらす前に治療」のスローガンを掲げ、その予防には有効性が証明されているインフルエンザワクチンの接種が勧められている。
 今シーズンの
主な変更点は、接種回数について、中央薬事審議会から、「二回皮下に注射」を「一回または二回を皮下に注射」に変更された点である。

 一回または二回についての判断は、現場で医師が決定し、実施することになるが、集団で接種することの多い老人福祉施設等での混乱を防ぐために基準を定め、すでに通知したところである。
 すなわち、

 @65歳以上の高齢者に対しては一回接種とすること。
 A3歳末満のものは従来どおり二回接種
 B13歳以上64歳末満のものについては二回接種を原則
とするが、近年、確実にインフルエンザに罹患していたり、毎年インフルエンザワクチン接種を受けていて、医師が基礎免疫があると判断できるものについては、一回接種でも良いとしたこと
 -である。

 今年のインフルエンザワクチンはWHOの推奨を受け、Aソ連型「ニューカレドニア株」、A香港型「パナマ株」、B型「山梨株」を採用しているが、いずれの株も特に成人の抗体保有率が低いという国立感染症研究所からの最近の報告もあり、考慮しなけれはならない。

 予防接種法の改正によるインフルエンザワクチン接種の法制化は今国会では未提出となり、今年は従来どおり任意接種のため全額自己負担で、しかも、健康被害が発生しても医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法による被筈救済の対象とある。

 インフルエンザワクチンの製造量は、昨年のパニックを繰り返さぬよう倍増して760万本を製造・認可を受けている。生産量の算定は、昨年接種者(約320万本)と接種希望して接種できなかった者が、従来どおりの比率で二回接種するものとしてその上限をとったもので、十分量と考えられる。
 しかし、一部での買占めや、流通の不手際があると、地域によっては一時不足の状態が発生することも考えられるので、各医療機関においては、余分なストックをしてシーズン後に返品をすることのないようお願いしたい。
 なお、インフルエンザの治療に際しては、治療薬の開発や、脳炎、脳症発生時の解熱剤投与の影響について、情報の提供をしているところであるが、十分ご検討・ご配慮をお願いする次第である。


ザナミビル、やっと発売
 インフルエンザA・B両型に効く新薬

 インフルエンザの新しい治療薬「ザナミビル(商品名リレンザ)」が8日、発売された。外資系の製薬会社グラクソ・ウエルカム(本社・東京)が輸入する。昨年暮れ、ワクチン不足などが問題となる中で優先審査を受け、厚生省から承認された。医師の診断に基づいて処方されるが、医療保険はまだ適用されず、患者の自己負担になる。

 インフルエンザの治療薬はこれまでアマンタジンだけだった。ただ、B型には効かず、吐き気や幻覚などの副作用があった。A型でも効かないウイルスが増えていた。
 ザナミビルは新しい仕組みの治療薬で、A型とB型の両方に効くという。副作用が少なく、耐性ウイルスもほとんど出ていない。
 厚生省は承認後も副作用や効果の詳しいデータを同社に求めて審議中。インフルエンザに感染すると重症化しやすい高齢者など、保険適用の対象を検討しているとみられ、薬価交渉は進んでいない。
 同社は「深刻な感染症の治療薬は公衆衛生上必要なもので、保険でカバーされるべきだ」と、発売を見合わせていた。だが、医療機関などから供給を求める声が強く、流行シーズンを前に発売を決めた。薬の費用は、欧米は4000円程度。国内でも数千円程度とみられる。

<2000年12月9日朝日新聞より>


「混合診療」

 保険を使った診療と、保険のきかない治療を併用する混合診療。禁止されてはいるが、どのような場合が該当するのか分かりにくい。

【例1】勃起(ぼっき)不全の治療のため通院しているAさん。これまでは保険のきく薬を使っていたが、昨年、新薬のバイアグラが発売され、医師に「処方してほしい」と頼んだ。しかし、バイアグラは保険がきかない。そこで、通常の保険診療のほかに、この薬だけは実費を支払うことになった。

【例2】糖尿病の治療をしているBさん。病気が進み、性機能にも影響が出てきたので、バイアグラの処方を希望し、糖尿病の保険診療とあわせ、バイアグラの処方にかかる費用は別に自費負担で払った。

 これら二つは、混合診療に当たるだろうか。

 東京都保険医協会が発行する雑誌で昨年、「混合診療に該当し、許されないケース」と「問題ないケース」を、具体例を挙げ、○×式で解説する記事を特集した。「高血圧で通院している患者から保険外のインフルエンザワクチン接種を頼まれた時、高血圧の保険診療のほかに、ワクチン接種は自費負担で行う」のは「○」、「自費の人間ドックの内視鏡検査で採取したポリープを、保険で組織検査する」のは一連の診療とみなされ「×」、といった具合だ。

 同協会は「こういう記事が必要なのも、混合診療の解釈が複雑で、医師自身ですら理解していないことが多いため」と言う。

 さて冒頭の二つのケース。同協会によると、例1の方は認められないが、例2は問題ない。前者は勃起不全の治療そのものに保険外の薬を使うため、明らかな混合診療だが、後者では、糖尿病の保険診療とは別扱いとなって混合診療に当たらないからだという。

 しかし、こう説明されても、やはり分かりにくい。混合診療の禁止を直接うたった法令がなく、混合診療とは何か、明文化されていないことが、あいまいさを生む背景になっている。

 治療費と保険負担の問題をどう考えるのか、膨らみ続ける国民医療費の行く末をにらみ、議論は盛んだ。

 納得のいく治療費負担のために、患者側も改革に声をあげていく必要がある。
 <Yomiuri On-line ホームページより一部掲載>


混合診療の問題はこれも一般の方には理解しにくい問題だと思いますが
要するに 保険証を使って診療を受けている日常の診療では「診察・検査・治療」全てに保険点数が決まっており、この範囲内で診療を行ったものについては保険を認める。但し「一部でも保険適応となっていない診療行為や検査・薬剤があれば保険診療と混合した診療として、これは全て認めない」と言うのが混合診療禁止の規定です。
 インフルエンザ以外にもいろんな治療法で混合診療禁止は問題になっています。

 ですから、診察や検査は保険で行い、薬だけ自費で貰うのは認められないことになります。
 例えば、高熱や筋肉痛・咳嗽・倦怠感・食欲不振などで医療機関を受診し、診察を受けインフルエンザの疑いがあり、迅速診断キットで検査をして貰い、インフルエンザと診断されたとします。

 そこで担当医師から「副作用や薬の耐性のないインフルエンザの新薬を使ってみますか」と言われれば普通は「使って下さい」と言うと思います。食欲不振と脱水でその日は点滴をされ、そしてリレンザを1セット5日分とひどい咳に咳止めや高熱の対応に消炎剤が処方されたとします。
 診療機関側も患者さんも前述したように診療所に病気で罹ったのだから、保険に通っていないものだけは自費はやむを得ないが、その他の診療は保険が効くべきだと思うと思います。私もそう思います。
 しかし、混合治療禁止とはこれら診療行為は全て自費で負担しなさいと言うことなのです。
 これでは使いたくても使えないのが実状ですし、一部では患者さんのために診察や検査・他の投薬は保険で申請し、薬代だけ自費とする施設もあるかも知れません。でもこれは厚生省の言う「不正診療行為」なのです。これを行ってくれる施設は、指摘されたら全てその施設の負担となることを覚悟しての行為なのです。

 何かおかしいと思われませんか。

 混合診療を認めることは過去のいろいろな事情から難しいのかも知れませんが、こんな特殊な薬(効果がはっきりして、副作用がないなど)は、その薬に限り薬代だけを自己負担とし、混合診療の規制から外すことも考えて欲しいと思います。
 インフルエンザ以外にもいろいろな薬があると思いますし、これが医療の規制緩和になると思います。
世界的には常識となっている治療法いわゆるグローバルスタンダードの薬は、日本で適応症と薬価が決められるまで、自己負担はやむを得ないとしても全ての診療行為を自己負担とする規制は外して貰いたいものです。

 注・リレンザの価格はそれこそ薬価がないので自由価格となるようですが、一般的な販売価格はイギリス並の3800円程度だと言われています。またリレンザは飲み薬ではありません、付属している特殊な吸入器具を使って薬の粉末を吸入するタイプの薬です。1日2回吸入で5日分が1セットになっています。 また投与対象年齢は13歳以上とされており幼児・小児は対象となっていませんし、これらの子供さんやお年寄りには少し難しい投与方法かもしれませんね。
 タミフルと言う内服の新薬も続けて承認を受けようとしていますが、これまたいつの認可になりますか。


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