ご存じですか。 医療制度の改悪案について


  ご存じですか。 医療制度の改悪案について
 “治療費のことを心配せずに、誰もが具合の悪いときは医療機関にかか れるように”とつくられたのが、医療保険制度です。この制度は国民すべてが保険で平等な治療が受けられる日本独自の制度で、これは諸外国に誇れる制度だと思います。
 ところが、政府は高齢化社会での毎年の医療費の増加で、医療保険財政の「危機」を強調し、来年度から患者さんの医療費自己負担を平均約2倍以上引き上げる医療制度の改悪を計画しています。
マスコミもほとんど報道しませんし総選挙の争点にもならずご存じないと思います。
 高齢化社会での医療保険財政の「危機」は、高齢化が進めば疾患を持ったお年寄りが増えるのは当然で、医療費の自然増も医療保険財政の「危機」と考えることに問題があります。
 1972年に老人医療の無料化が国の制度として実施されました。
 ところが、10年も経たず80年代に入り、政府は次々と医療制度の改悪を行ってきました。
 特に老人医療費はここ数年、毎年のように自己負担額が増額され、一方国の負担は減額されており、これらは十分な国会での審議もなく、国民にもほとんど知らされずに行われています。
本来の国庫負担を行い、高額な薬価などを改善すれば医療費はそれほど赤字にはなっていないとの資料もあります。自己負担の増額は体のいい医療費の増税と言えます。
 また政府はいままでなおざりにしていた介護・福祉の充実を目的に、「介護保険制度」の創設をめざしています。「介護保険制度」自体は今後必要な制度と考えますが、審議も手だてもまだ不十分で、そこでも介護保険料を徴収する計画で介護、福祉にも自己負担の導入を計画しています。医療保険の財政危機は元々政府が医療保険に支払う国保負担を減らしてきたことにあります。
 国民の福祉を考えるならば介護・福祉の費用は国庫負担(税金)で補うべきものと考えます。しかし、来年度の消費税アップも介護・福祉対策に使われると言う保証は全くありません。

来年度実施予定の改悪メニュー
 1. お年寄りの医療費負担を現在の「定額方式」(通院1か月1020円、入院1日710円から、1割か2割の「定率負担」にする。
  1割負担なら約2.2倍に、2割負担なら約4.3倍に、患者さん負担が増えます。
  (ただし、これは平均の値で、実際に在宅診療を行っている患者さんでは10倍を越すこともありますし、重症入院や手術では大きな負担となります。)
 2. サラリーマンの医療費負担を1割から2割に引き上げ、負担をを2倍にする。
 3. クスリ代については、その3割〜5割を患者さん負担にする。
  クスリ代の負担の方が慢性疾患を持ったお年寄りには、診療費や検査費の1割負担よりもっと負担になります。  4. カゼなどの「軽治療」、入院室料、給食料などは全額患者さん負担とする。
  今年の10月に給食費の自己負担が増額されたばかりです。
などが予定されています。将来は医療費は国民全て3割負担の計画も発表されています。

 医療費の問題は実際に診療中の患者さんでは現実問題ですが、身内に病気にかかっていない人たちには他人事に考えられ易いものです。特に収入のないお年寄りには医療費・介護費の自己負担アップで、十分な診療や介護が受けられない人も出てくると思います。
 今回の保険制度改悪にわれわれ医師会は反対していますが、国会で十分な審議がなされ、国民もこの改革でも仕方ないとの合意ならば従わざるを得ません。
このままで良いのでしょうか。皆さんと一緒に考えましょう。
            平成8年11月   玖珂中央病院 吉岡春紀

この文章は玖珂郡医師会のページにも載せております。
その他 医療制度に関する文章は玖珂郡医師会のページをご覧下さい。


玖珂中央病院ニュースページに戻ります