新型インフルエンザワクチンの問題について


新型インフルエンザが10月に入って全国で急激に増加しています。
テレビや新聞でも、新型インフルエンザワクチンについて盛んに報道されており、多くの医療機関にも皆様から「何時になったら接種出来るのか」という問い合わせが増えてきています。


ただ現在配布されてる国産の新型インフルエンワクチンは合計で、2700万人分(2回接種として)の生産予定ですので圧倒的に生産量が少なく、それもこれから製造される製品もあり、医療機関への配給は11月末までに約590万人分、12月末に760万人分の計1350万分ですので、年内には生産予定の半分程度しか配給されません。
また、輸入ワクチンも年明けから配給予定で、月に1000万人分ずつが予定されていますので、今後多くが1回接種になれば、2月頃にはほとんどの希望者に接種可能になると思いますが、年内は圧倒的に足らないのです。

しかし10月下旬には全国的に新型インフルエンザの流行は進んでおり、ワクチンは早く接種しないと意味がありません
そこで、厚労省はワクチン接種の優先順位を決めましたが、これもまだ医療機関への配給の概数を調査する手続きの段階で、医療機関には全くワクチンは届いているわけではないのです。そして優先順位の希望者に全員接種出来るわけではありません。


基礎疾患を有する人は、国の決めた優先順位は高いのですが、慢性呼吸器疾患、慢性心不全、慢性腎疾患、糖尿病、神経難病などの方でも、かなり病状が進んだ人しか優先的に接種は難しいと思います。 少ないワクチンの取り合いが始まれば本当のに優先して接種すべき患者さんに公平に接種出来るかどうかも危ぶまれています。

当院でも国の優先接種基準を守って接種を考えていますが、果たしてワクチンが必要数手に入るのか、細切れに少しずつ配送されたら誰から接種したらよいのかは決まっておりませんし、現場では混乱するものと考えます。


また接種回数についても、1回か2回かは不明です。専門家の意見も様々で厚労省も1回接種に変更しませんでした。1回接種では効果の薄い小児以外はまず1回目の接種を行い、出来るだけ多くの人に接種すべきだと思います。

正確な情報が入ればお知らせしますが、今のところ国も混乱しており、患者さんや希望者からの予約を受け付けることは出来ませんのでご理解下さい。ただし明らかな基礎疾患で入院・通院されている方にはワクチンの配給が在り次第、接種の希望の有無を聞いて出来るだけ早く接種したいと思います。


ただワクチン接種出来なくても、今のところ高齢者の感染者は少なく感染後の対応をきちんとすれば重症化は防げると思いますのであまりに不安を煽る報道は気にしないで下さい。高齢者はまず季節性インフルエンザワクチンの接種をお勧めします。

そして、新型インフルエンザの現在の感染状況を見ると、圧倒的に10歳以下の幼児ですし、高校生以下の感染が9割を超えているのが現実で、この若年者の感染拡大を防ぐことが最優先ではないかと考えます。

国の優先順位も、現実の感染状態にあった見直しをすべきですし、まず年内の配給ワクチンは医療従事者は接種すんでいますので、その後は妊婦と小学生以下の子供さん達に最優先とし、ついで中高学校での集団接種を考えるべきだと考えます。
                    平成21年10月26日  玖珂中央病院