果たして今のままのディケア・デイサービスが必要なのか
老人の医療福祉費の高騰は目に見えている
在宅医療の推進の目的でディケア・デイサービスなどの老人医療事業が各地で盛んになりました。この目的自体は今後の高齢化社会に社会的入院を減らし、医療費を削減し患者さんの在宅医療を導入するためには必要な施設であることに異論はありません。
しかし、ある地区ではこれらの施設が入り乱れて患者の争奪戦を行い、かかりつけ医との信頼関係を乱している事も報告されています。
また、医療費も高騰し果たしてこのままでよいのかと言う疑問があります。
ディケアとは老人保健法に基づき、痴呆等の精神障害を有する患者さんまたは脳血管疾患に起因する運動障害を有する患者さんの心身機能回復・維持の目的で医療機関が行うサービスと、在宅の寝たきり老人などやその家族に対する支援のため老人保健施設が行うサービスのことです。
患者さん1人あたり標準4時間以上の介護サービス、リハビリ、食事サービスなど行い、送迎サービスもあり、老人保健診療費より医療機関に支払われます。
6時間以上のサービスで送迎がある場合(送迎中に機能訓練を行う場合とされていますが、果たして送迎の車の中で何をするのでしょうか)1日当たりの医療費は1028点(10280円)、ない場合780点(7800円)です。
老人保健施設のディケアは他に入浴サービスなどもあり施設療養費から支払われ、送迎有り9930円、なし7450円です。食事、入浴、娯楽費は実費です。
一方ディサービスとは老人福祉法に基づき在宅の虚弱老人、寝たきり老人などに対し、自立生活の助長、心身機能の維持、向上を目的で自治体や社会福祉法人が行うサービスです。特別養護老人ホームのサービスなどはこれに当たります。
要するにディケア、ディサービスの違いは運営母体の差と監督法律が違うことでディケアではリハビリをディサービスは日常の生活援助が主になると言うことだと言えます。
患者さんの家族にとっては、送迎があり、日中施設で過ごし入浴サービス、昼食サービスもあり、日々の介護の手が離れて自由な時間が作れ有意義な施設サービスであることには間違いありませんが、一方施設間競争も激しくなり、一人で複数の施設を利用したり、土日を除き週5回利用している例もあり、制限がありません。また在宅で寝たきりやそれに近い病態の方が対象となりますが、現在はこれを認定する事もなく施設側の判断と患者側の希望で、対象疾患以外の一見元気なお年寄り達が娯楽施設の感覚で利用されていることも事実です。
家族にとっても家でぶらぶらされるより「ディケアセンターに行きなさい」などとの感覚もあります。老人の憩いの施設化(宅老化)している事も事実でしょう。
これらの使用料は前述したように老人保健診療費や施設療養費から支払われ1日約1万円となり、週5回利用者では月20万円を越すこともあり、利用の規制はまだ無く医療費の削減よりむしろ医療費の増加が心配です。
問題は施設側の対応と利用者の意識の低下もあると思います。
これでは医療費がいくらかかるか知れたものではありません。
社会的入院を減らすための在宅サービスが医療費を圧迫することは目に見えていますが、厚生省も今の所何の反応も示していませんし黙認状態と言えます。
また、今後医療関係者以外のサービス業の参入も、規制緩和される可能性もあり、老人を食い物にする老人医療産業の進出も懸念されます。
もう一つの混乱はかかりつけ医とのつながりです。これらの施設では基本的にはかかりつけ医の紹介や病状の報告がないときちんとしたディケア、ディサービスは行えませんが、現状はほとんど守られていませんし、かかりつけ医に連絡もないことがあります。
勝手なディケア、ディサービスが行われ、その結果患者さんはかかりつけ医より離れて行くのです。これは地域医療の混乱に繋がりますし現実に混乱を起こしている地域が出ています。
こんな制度が必要なのでしょうか。
早急に手を打たないと医療保険より福祉費に名目が移ったとしても介護保険料のアップは避けられず、本来の障害者や家族を保護するための目的は失われて行くものと考えます。
今一度考え直してみる必要があるのではないでしょうか。
平成9年3月 玖珂中央病院 院長 吉岡春紀
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