診療支援システムRS_Baseについて
玖珂中央病院 吉岡春紀
診療支援システムRS_Baseについて、当地の医師会メーリングリストKIMNETに書き込んだものですがその後の経過も含めて紹介します
最近PACSという言葉を良く目にします。
ご存じですか。
私も詳しいことは良く知らないのですが、Picture Archiving and Communication Systemの略で医療画像管理システムのことです。
CR,CT,MRIといった画像撮影装置からの画像データを保管、閲覧、管理することを目的とし、超音波、内視鏡、眼底といった非放射線機器の画像についても、DICOMという共通規格を通じて連携を図ることにより一元管理するシステムとのことです。
大病院だけでなく最近中小病院や診療所などでも導入がされるようになっていますが、個人的には画像だけでなく検査データなど含めて 保管・閲覧できるシステム作りを考えていました。
要するに電子カルテが構築できれば良いのですが多数の医師が使える電子カルテ構築には中小病院では敷居が高く、これまではCRや内視鏡の画像データ・生化学検査データを別々転送するシステムは行っていましたが、メーカーからは転送システムに高額な費用を請求されたり、別々に管理する非効率・無駄に気づき何とかしたいと思うようになりました。
当院の実情を紹介します。
1.CR撮影装置
約10年前に導入。最近WinXPの保守サービス廃止などにより、現在使っているCR撮影装置のメーカーから、保守点検が出来なくなると言うことで、CR撮影装置の管理パソコンの更新のみ行いました。但しOSの変更と新しいパソコンだけの更新でしたが高額なパソコンとなりました。
また、その際に、レントゲン室から外来診察室にデータ転送し診察室で画像閲覧するパソコンも当初のOSはWin2000であり、今後の保守が難しいとのことで2台のパソコンの更新を求められたのですが、市販のパソコンの相場を知っている者からすると更新の見積り価格は信じられない価格表示であり躊躇するというかこのメーカーの対応に呆れていました。
CR撮影装置の導入時は外来で閲覧のパソコンもCR装置のネットワーク全体価格に含まれるものと思って仕方ないと思っていたのですが、時々このパソコンが故障し、修理依頼すると、それこそ新しい市販パソコンが購入できるような価格を請求されます。 昨年この閲覧パソコンが立ち上がらなくなり、原因はバッテリーの劣化と言うことが解りましたが、担当者の修理費見積りはパソコンを持ち帰り修理して30万円とのことでした。
びっくりして、知り合いのパソコン業者にバッテリー交換依頼しましたが、数千円で済みましたし、今も問題なく動いています。
CRのメーカーに問いただしましたが、閲覧のシステムは自社の製品ではなく他の業者に頼んでいるのでメーカーでは対応出来ないというばかりでした。 いかに医療という名のついた機器が、バカ高い価格設定か改めて驚きました。
2.電子内視鏡
その後、同社の電子内視鏡のシステムも、データ保存はMDかフロッピーディスクであり、フロッピーディスクは今や汎用性もなくMDにしていましたが、今後市販のMDは無くなるし、MDを閲覧できるパソコンもなくなるので困っていましたが、このメーカーでは、ハードディスク保存や他の保存法などの新しい提案もなく、パソコンに無知な担当者で話が進まず、これも知り合いのパソコン業者に頼んでみました。
これまでに保存したMDのデータを変換しハードディスクに保存することは出来ましたが、今までの患者情報全て管理することは大変な時間もかかり、このままではデータを検索するには問題があると言うことで、ほぼ諦めていました。
また内視鏡の画像を印刷するSONY製のプリンターも製造販売中止となる予定とのことでしたが、新しいプリンターの提示もありませんでした。
3.生化学自動分析装置
メーカーは違いますが、当院の生化学自動分析装置も11年を経過し故障がちになり、そろそろ機器の更新を考えていました。 当初からこの生化学データを検査室から外来診察室に有線のランで転送するシステムをつくっておりましたが、これも当時はメーカーでは行っていないとのことで、岡山から別の業者が来て、ランの設定や自動分析装置からデータの転送は出来るようになりました。
ただデータの表示やグラフ化など、手直ししたくても、ユーザーで勝手に変更出来ないシステムでした。 当時はこのデータ転送ランのシステムだけの見積り額も知りませんでした。 今回自動分析装置の更新時の見積もりを見て、改めてびっくり。
この転送システムの価格が自動分析装置の価格(自動分析装置の価格は大幅な値引きあるのですが)と比べて驚くような高価格設定でした。画像モニターのような薬事法の規定も無いと思いますし、すでに有線ランは設置しているのに、どうしてこんなに高いのかという値段でした。
1.2.3の諸事情から、この際何とか安くで開業医の満足できるデータのファイリングシステムが出来ないかと思っていました。
そんな時、診療支援システム「RS_Base」を思い出しました。10年以上前に興味があってRS_Baseのメーリングリストのメンバーになっていましたが、院内の導入には私のレベルでは到底難しく諦めていました。
そこで改めてネット検索してみたら、現在メディカル・インという会社組織にしてRS_Baseの販売を含めた保守管理も行われていることを知り、早速連絡してみました。
RS_Baseとは、全国的にも有名で岩国・玖珂にも沢山のユーザーがおられると思いますが、広島で開業されているリバーサイドクリニックの山下郡司先生が開発された、医療データの診療支援ファイリングシステムです。
今回、当院の事情を説明して院内のデータファイリングシステムを見積もって頂きました。CR画像、自動分析装置の生化学データ、内視鏡画像だけで無く、CT画像、心電図、超音波検査画像なども保存出来ることがわかりました。勿論紹介状などの紙データはスキャナーで取り込みます。 今回は対象にしませんでしたが、他にも肺機能や血計などいろんなデータも管理出来るようです。
またもっとすばらしいと思ったのは、受付のメディコムのレセコンと繋ぎ、患者さんの個別のファイルに各データが時系列で保存されることです。
まるで仮想の電子カルテを手に入れたような感じです。
最初述べた、今流行のPACS(医療画像管理システム)に、検査の文字データも管理出来るシステムです。PACSはあまりに高価格で導入を躊躇している診療所や中小病院が多いと思いますが、RS_Baseは、ここでは金額は公開できませんが、市販の汎用パソコンを使って本当にびっくりするくらいの安い価格設定で導入でき驚いています。
近日中に有線ラン工事(使える院内ランもあるのですが、何度も継ぎ足してきたので分かり難く、ラン工事費も良心的な価格なので全て新しいランにしようと思いました。)が始まり、 院内にRS_Baseシステムが出来上がる予定です。
楽しみにしていますが、あまりにいろんなデータが閲覧出来る事は、私だけでなく慣れるまでにしばらくあたふたしそうですしデータ管理には気を付ける必要がありそうです。
と言っても契約したばかりで、まだ自動分析機の更新も出来ていないので、今から紹介するのは本来は早すぎるのですが、中小病院でも可能な価格なので、診療所ならもっと簡単な安いシステム作りが可能だと思いますし、フィルムレスのCR装置導入を考えている方もあるようですが、CR装置以外のネットワークPACSに高額の見積もりもあり、ご参考までにと思って書き込みました。
依頼している会社は、メディカル・インと言い山下先生が設立されたものです。 相談相手は渡辺さんと言いますが、全てに詳しい人で今回の紹介は許可得ています。
メディカル・イン
http://www.rsbase.net/medical-in/
その他RS-Baseで参考にしたサイト
広島県福山市 平井先生のホームページ
間違いだらけの医療情報管理
http://www.hirai.or.jp/joho/index.html
新システムの選択紙カルテへの検査用紙等の貼付不要 Rs_Baseを利用した
診療支援システムの構築
http://www.hirai.or.jp/joho/joho_menu/pg49.html
また実働し始めたら報告したいと思います。 7月掲載
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その後の経過
医療関係のデータをファイリングするソフトRS_Baseについて KIMNETに7月に書き込みましたが、その後新しいランケーブルの 設置もおわり自動分析装置も更新し暫く新旧2台の自動分析装置 でデータの確認作業も終わり、RS_Base用のパソコンも調整が終って10月末当院の院内作業が終了しました。
まだ少し自動生化学分析機の古いデータ入力や過去のCR画像の 転送など調整が残っていますが、ほぼ終了しました。
外来受付・外来診察室3室・生化学検査室・レントゲン室・医局・ 2.3.4各病棟詰め所に新にパソコンを置き、別室のサーバ・パソコンからデータを配信するシステムです。その他内視鏡室・心電図室・超音波検査室にも配線し検査後データは サーバーに保存されます。
現在ファイリングできるのは、CT画像・CR画像・内視鏡・超音波エコー・心電図と、生化学検査・血液検査です。
受付のメディコムのレセコンとも繋がり患者さんIDで個別のファイルに各データが時系列で保存されています。
勿論、紹介状などの紙データはScanSnapで取り込みますし、デジタルカメラの画像なども患者毎に取り込めます。
まだ確かめていませんが紹介時に頂いたCDなども取り込めるようです。
レセコンの診療データだけでなく、健診のテータなどは別のIDでファイリングできますので、便利です。また生化学検査の報告書は渡邊さんが今までの報告書と同じ形式で作ってくれたため、移行もスムースに行きました。
RS_Baseには、とにかく多彩な機能があり、まだその少ししか理解できていませんが、こちらで欲しいなと思う機能はほとんど網羅されています。
「こんな事は出来ますか」と質問すれば、渡辺さんの答えは明快です。
また導入にはメーリングリストに入会しなくてはなりませんが、毎日すごい量のメールの質問があり、それに山下先生が必ず答えておられる姿勢はすばらしい物と思います。
電子カルテとの連携は出来ていませんが、RS_Baseそのものが患者データを元にした仮想電子カルテと言って良いと思います。
診療所・中小病院には本当に役立つシステムだと思いますし、もっと早く取り組んでいたら良かったと思っています。
是非、医療データのファイリングを考えておられる方はご検討されたら良いと思います。
11月19日
当院のRS_Base システム
サーバーパソコン 外来受付 レセコン・メディコムとの連携
検査室 自動分析装置 無停電装置
外来診察室 Scan Snap 外来診察室
画像表示画面
内視鏡画像 レントゲンCR画像
心電図 CT画像
生化学検査経過 超音波検査画像
自動分析装置から