皆様もすでにご存知だと思いますが、国は「社会的入院の解消」を名目に、病院の療養病床(ベッド)削減を打ち出し大問題になっています。削減数は2012年までに何と半分以上の23万床と言われています。医療型25万床を15万床に、介護保険適用の介護型13万床は全廃すると言うのです。日本の慢性期医療や介護を行っている病床を、今後ますます高齢化社会がきて必要になると思われ、今でも入院や入所がすぐに出来ず、全国的に余っているわけでも無いのに今の38万床から23万床を削減し15万床にすると言うのです。これらの入院費用が国の医療費を圧迫するため医療費削減の目的で削減するのです。
当然入院や入所されている患者さんは退院を勧告されますが、現実には医療の継続が出来るような介護施設などの受け皿も全く考えられていません。
それと同時に7月から慢性入院患者さんの療養病床入院費が大幅に変更になりました。そのため7月分の入院費は、これまでと大きく変わる方もあると思いますのでお知らせします。
療養病床の入院費は、その病棟の看護基準(看護師・補助看護師の数)によって、病棟毎に決められた定額制で算定していましたが、7月からは患者さんの医療の必要度?に応じた「医療区分」によって入院費が決められるようになりました。この医療区分の決め方は、我々医療関係者も理解できないような分類であり、「脳梗塞などで重度の意識障害があり手足が動かなくなり、食事もできなくなって胃ろうをつくった方たち」も「心不全を繰り返す寝たきりの方」も「腹水のある肝硬変や肝がんの方」も一番医療区分の低い分類なのです。こんな大変な人を「社会的入院だ」「医療の必要はない」と決めつけて、病院から追い出す政策なのです。受け皿も示さず独居や老老の家庭でどうやって在宅で看護・介護しろというのでしょうか。
入院費は、その「医療区分」で算定されますが、分類が複雑かつ不明確で、日によって医療区分が変わったり、同じ症状でも患者さんによっては医療区分が異なることもあります。
そのため7月分はかなり減額になった方や、あまり変わらなかった方など色々あると思います。国はその詳しい説明を病院で行えと言いますが、不可解な理解できない医療制度の説明を現場に押し付けられてもたまりません。ご理解できにくい事もあると思います。
今回、かなり入院費が安くなった方も3-4割おられると思います。
入院費が安くなったことは患者さんにとっては好ましいことですが、安くなった「医療区分1」の方達は、国は医療はあまり必要がなく長期入院の必要がないと考えているのです。実際にこの入院費は介護施設の入所費よりも低い入院費に設定されているのです。
病院にとっては、「医療区分1」の入院費はこれまでの入院費の30-40%以上の減収となり、今後大きな経営危機となります。安定した経営を守る為には、入院費の安い「医療区分1」の患者さんには退院を勧告することも考えられますし、全国では「医療区分1」の方たちの退院勧告やも急性期病院からの転院拒否もおこっています。
当院としては受け皿の無いまま、退院を求めても皆様はどうしようもないことは理解していますし、入院患者さんの混乱を避けるには、当分の間は減収は覚悟で強制的な退院勧告は行いませんのでご安心ください。
それに加えて10月から、国は「医療区分1」の患者さんたちには療養病床の食費や居住費の自己負担増も予定しています。今の入院費に加えて月2-3万円の別の負担増加なのです。
病院の収入が増えるのではありません、国の出費を減らし、患者さんの負担が増えるだけなのです。
国の医療費を削減する為に、自立の出来ない障害を持った多くのお年寄りを、受け皿の無いまま療養病床から追い出し「医療難民」をつくる小泉内閣の政策に、我々医療関係者も反対してきましたが、医療費削減のためには障害を持ったお年寄りには見向きもされていないのが現実です。
数年先には病床そのものが削減されてしまうのです。今でも慢性の医療を行う病床は少なく、介護施設も入所待機者が多く、急性期病院から退院を勧告され困っている家族も多いのに、療養病床を今の半数以下に削減するというのです。この政策は、一般の方達にはほとんど知られていません。自分が病気になったとき・身内が病気になったとき初めて大変なことが解るのです。
団塊の世代が70歳を超える10年先には、日本にはお年寄りの慢性期医療を行う病院は無くなっているでしょう。
当分の間、入院費の請求について、請求金額が月によって変わることや同じような状態でも医療区分が違うことなど多々おこると思います。出来るだけ窓口でご説明はいたしますが、何とぞご了承くださいますようお願いします。
平成18年8月
玖珂中央病院 院長