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寄せられた相談事例から(木原事務所はこう考えます)
● ご相談者のプライバシー保護のため人物や場所を特定できないよう変更してあります

 父亡き後、母の相続が発生して、跡取りである長男(上に姉3名の末っ子)が他の姉妹に遺産分けについて相談したところ、相当額の要求をされて困っているとのご相談。


◆ お話し合いが行き詰まっている背景
 
 15年前に父が亡くなり、そのときは母も元気で長男たち子供も若いこともあり、母が大半を相続して長男が農地の一部を取得、姉達は現金を100万円ずつもらいました。

 長男は妻とともに跡取りとして地域や親戚付き合いの行事、寝たきりになった母の介護などに尽くして、姉達とも円満な関係の中で、母の相続が発生しました。

 土地は昔は農地として亡父とともに耕作していましたが、しだいに市街地となり、固定資産税の負担も大変で、母の介護で農業もままならないため、長男はサラリーマンとして働き、銀行借入でアパート経営を始めていました。

 姉達は結婚後、住宅ローンや子供の教育費、結婚費用などを考えると「もらえるものは戴きたいし、家族も知人もそう言っている」とのこと。

 長男は、姉達が「形見分け」程度か、気持程度のお金で遺産分割協議書に判をついてくれるものと思っていたところ、姉達が団結したように「お父さんのときに少ししかもらっていないし、遺産としては、これで最後の機会だから、みんなで公平に分けてほしい」と土地か相当額のお金を要求してきました。

◆ このままだとどうなりそうか?
 
 長男と姉達との話し合いがつかず、相続税の申告期限(相続発生から10ヶ月目)を迎えてしまうと、法定相続分(子供は均等)で申告納税することになります。


 その際に問題となるのは・・・


「小規模宅地の特例などの税金が安くなる恩典が受けられず税額が大きくなること」


「長男や姉達全員が均等に遺産を取得したものとして、相続税が発生、申告期限までに納付するお金の準備が必要」


「それぞれ各自で納税資金を準備できれば問題ないが、準備できず亡母の遺産である預貯金を充てる必要があっても、金融機関の預貯金は凍結され出し入れが不可」


「遺産である土地を担保に金融機関から納税資金を借り入れようとしても未分割では担保にならず不可」


「農地で残った土地について『納税猶予』を受けようとしても未分割では不可で現金納付が必要となる」


「相続人(長男と姉達)自身の預貯金も含め、資金繰りが困難で土地等での『物納』をしたくても未分割では不可」


「話し合いがつかず、未分割のまま3年を経過してしまうと遺産の土地を譲渡した時の特例『相続税の取得費加算』が受けられない」


「相続人全員が相続税の申告手続等に一致協力して足並みを揃えられないと、各自で税理士を依頼して申告するなど費用がかさむ」


「申告に必要なデータが一部の相続人の非協力で提供されず、財産評価等に支障が出て誤った申告になったり、申告ができず、後日ペナルティや延滞利息、滞納処分を受ける」


「相続人の誰かが家庭裁判所に調停や裁判の申立をすると、時間や費用、労力、精神的負担のほか、何よりも大切なこれまでの人間関係がこわれる可能性もある」



◆ 木原事務所では、このような考え方でお手伝いしています
 
 それぞれの家庭や個人の考え方、抱えている事情などで、すべての事案で異なるのが相続と遺産分割です。

  家や跡取りといった感覚も、法律や権利(本当は義務とセットなのですが)を当然とする考え方も、実はどちらも正しいから困るのです。

 お話し合いが行き詰まり対立しそうになったときに、お互いの主張をぶつけあっても多くの場合は解決どころか、エスカレートしがちです。

 客観的かつ冷静に事柄を判断して、どこから手をつけ、解決を試みるのが効果的で無駄がないかなど、相続や遺産分割へのアドバイスは特殊な世界だけに経験と各分野への専門知識、そしてそれを実行できるプロ達のネットワークが不可欠です。

 税務の現場での仕事(税務署での調査指導および資産税専門の税理士)に携わって30年間の経験の中で、本当に多くのご家庭、ご家族のみなさんに接してきた今思いますことは、単に土地など財産の評価をしたり、申告書を作成するのが私ども相続アドバイザーの仕事ではなく、むしろ、お客様が抱えておられる根本的な問題についてガイドし、お気付きいただくことが、円満かつ理想的な遺産分割や相続税の申告の実現になると信じています。

 もちろん、知識や技術能力的な面でも、常に一流たらんと日々業務の中で研鑽に努めており、多くの税理士の先生方や異業種の方々と業務提携や情報交換をいただいて参りました。

 少しでも相続問題でご心配な場合には、どうかお早めにご相談下さい、相続と不動産の専門家集団、専門アドバイザーとして、きっと、お力になります。

 
 
※ 因みに、このご相談事例の場合、姉達から調停申立をされましたが、私どもでご長男には「他事案における調停及び審判の結果」やその間の多くの実話やエピソード、当事案での見込(弁護士の見解等)を伝えるとともに、姉達とも時間をかけて面談し「家を守り、跡取りとしての苦労の具体的な事例や長男の妻の苦労話」、「未分割での税務上のデメリット」等をお話しするとともに亡母上が残されたメモ(遺言ではないが、遺産に関する希望らしき日記)をご覧いただくなどした結果、それぞれに譲歩され、調停は取り下げられました。分割協議の成立が相続税の申告には間に合いませんでしたが、3年以内で各種の特例を活用されることができました。

なかなか、みんな満足とはいきませんが、何年も争う悲惨なご家庭も多い中、ひとまず一件落着!


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