デフレ時代の資産活用を考えるときに (Vol.1)
● 現在の日本のデフレは
現在の日本のデフレは、IT革命によるコストダウンやリストラ、
海外への生産拠点の移転などといった物流の効率化や生産性の向上
などによって物価が下落する「良いデフレ」と、収入減や失業、将来
への不安からの買い控えなど需要不足を背景にした「悪いデフレ」が
混在しており、企業にとっては売上高が伸びず、実質的な債務の大き
さや実質的な金利が上昇するというデメリットの影響を受けて倒産、
大量解雇に陥るところが少なくない。
一般消費者にとっては、グローバル化のおかげで、これまで国際的に
見て高すぎた物価が安くなるという恩恵に浴することができるメリット
もあるが、その同じ消費者たちが企業からの給与所得者であったり、
または商工業の経営者である場合には、「値下げ競争」とそのための
「コストダウン競争」の厳しい中にあって失業や収入減というサイクル
(デフレ・スパイラル)に乗って、楽しくお買い物という訳にはいかなくなる。
● このデフレが、一時的なものなのか
問題は、このデフレが、一時的なものなのか、中長期的に継続、拡大して
いくものなのかを見極めることが大切であろう。
少なくとも、土地の公示価格は10年間下がり続けており、相続税の財産
評価となる路線価も9年連続で下がると見込まれている。
バブルが異常だったというのは簡単であるが、約30年前の昭和45年から
土地の価格(公示価格)をみれば、20年ちょっとで約7倍から10倍に
上昇した末に、この10年間でその3割から5割下がったのである。
つまり、およそ30年前からみても、土地はバブル後、現在でも3倍から
5倍にはなっていることになる(高値を知っている地主さんには何の慰み
にもならないが・・・)。
● これが土地の底値か
これが土地の底値かというと、どうも材料的には、もっと下がる要因が
多いのも事実だろう。
何よりも、この不景気の中、個人レベルで長期のローンを組んでまで土地
を買う意欲は衰退気味であり、企業とて、投資として土地を買う企業は
もちろんないし、なによりも銀行がそんな融資をしないのである。
広大な土地を必要とする生産分野(工業や農漁業まで)では、中国など
土地も人件費も安い海外へ拠点を移さないと国際競争に勝てない昨今だ。
「ナイキ現象」という言葉があるが、アメリカの有名なシューズ・メイカー
であるが、なんと生産は中国、その他、欧米の有名ブランドは殆どが生産
拠点を既にアジアに移しているのだ。
そう、土地はむしろ、工場などの撤退と社員の厚生設備(社宅や保養施設)
の売却ラッシュであり、本社ビル売却という決断も珍しくない昨今である。
一度「宅地化」した土地は、二度と農地や山林には戻らない。つまり、宅地
だけは、増え続けてきたということだ。
ダメ押しの「少子高齢化」こそが、最強の伏兵ともいえる地価の将来的な
下落要因となれば、どうにも「今が底値」とは到底いえない気がする。
● 不良債権処理と地価の下落の関係は
銀行といえば、不良債権と化した融資先から担保としてとっている土地
が、この値下がりの結果、担保割れ(担保不足)になっており、金融当局
から融資先の「退場」(自主廃業または倒産)も辞さないで回収すなわち
担保物件の処分と回収不能額の切り捨て(債権放棄と損金処理)を銀行自身
が迫られており、失敗すれば、それこそ銀行そのものが「退場」という
瀬戸際なのである。
ということは、これから、担保物件である多くの土地、それも、けっこう
優良な物件が続々と放出されることになるであろうから、地価は当然下落
する可能性が高い。
さらに、この企業の切り捨てといもいえる「退場」劇で大量に生じる失業者
は、生き残り企業のコストダウン競争で生じるリストラと併せて相当な数に
上るであろうから、それらの元社員、元経営者の自宅(その多くがローンを
抱えている担保物件そのもの)も含めて個人レベルでの破綻による土地の
市場への流入が伴うことは必定であり、さらなる土地が値下がる「買い手
市場」になるのではないか。
● デフレの時代の対策はどういうスタンスか
そこで、地主さんや資産家(将来、相続税がかかる人という意味です)が、
このデフレの時代にどういうスタンスで対策を立てるべきかを考えていきたい
と思います。
(続く)
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