YSS優勝記
本戦−関田将棋、金沢将棋戦

山下 宏
97/02/19 04:02


 
題名:第50手、▲7六金に△8七銀打です。
後手:関田将棋3(本戦)
後手の持駒:角 

先手:YSS7.0
先手の持駒:角 銀 歩三


 第5戦目は関田将棋3と対戦しました。

 角換わりから、普通に棒銀で攻められて、 普通に悪くなってしまい、この辺はまだまだ 甘いな、と感じさせます。
 図で、▲77金引、と受けて(▲77銀打は▽ 76銀成から▽39角▽48金の筋が嫌だったよう) ▽88角から桂香と銀の交換ではっきり悪くな りました。

 以下、関田将棋が攻め急いでくれたので結 果はこちらに幸いしました。



 
 第6戦目で、いよいよこの大会4連覇中の金沢将棋と互いに全勝でぶつかりまし た。YSS をこの数年改良してきた原動力は、このプログラムに勝ちたい!という一 心だった、といっても過言ではありません。

 特に前回の第6回大会で金沢将棋と対戦して、惨敗したのですが、将棋プログラ ムはここまで強く出来るのか、という感慨というよりむしろ尊敬の念を覚えさえし ました。

 戦型は、もし先手を握ったら3手目角交換で角換わりの将棋に持ち込むつもりで した。しかし、前日の懇親会での振り駒の結果、あいにく後手番。
 前回までの YSS は振飛車には居飛穴に組むようにしていたのですが、今回は調整 が間に合わず、居飛車矢倉のみ、となっており、この時点で振飛車をされたら作戦 負けに陥るな、と覚悟を決めていました。

 しかし、5回戦で金沢−森田戦を見た私は愕然としました。森田さんも金沢将棋 に振飛車をさせては面白くない、と思っていらしたようで、YSS 同様、3手目角交 換を選んでいました。しかし、金沢将棋は明らかにそれを予期していたようで、な んと角交換4間飛車、というマニアック?な戦法を指している!。うーむ・・・。

 しかし予想とは外れるもので、金沢将棋の初手は▲48銀!。金沢さんも前回まで の YSS の棋譜を見て居飛穴を敬遠したそうで結局、角換わりになり序盤は安心しま した。

題名:第29手、△4四歩に▲5五銀です。
後手:YSS7.0
後手の持駒:角 

先手:金沢将棋2
先手の持駒:角 

 まだまだ、駒組の途中だと思っていたのです が、図のいきなりの▲55銀には驚きました。
 単なる歩取りなので▽63銀で簡単に受かり、 その後▽45歩の銀ばさみで殺す筋があるだけに、 1手損だと思っていましたが・・・。
 当然の▽63銀に、なんと先手は悠々と▲88玉! よく読んでみると▽45歩から▽54歩で銀を殺す のは▲44銀!のただ捨てが強烈で、以下▽同銀 ▲71角でしびれます。
 金沢将棋の特徴は以前からこのような相手の ミスを期待する?アルゴリズムが入っているよ うに思えます。



 YSSもしばらくは辛抱していましたが誘惑に耐えきれず▽45歩を決行。以下、強烈 に攻め込まれ、先に攻めたい、と考えていた望みはあっさり消えました。

 途中▲86銀と逃げずに▲45桂から一気に寄せにこられる手を指されなかったは助か っています。



題名:第63手、△5二銀に▲7五歩です。
後手:YSS7.0
後手の持駒:角 銀 桂 

先手:金沢将棋2
先手の持駒:金 歩 

 ここでの▲75歩が金沢将棋の最初の疑問手で、 ここから YSS も▽同歩▲同銀▽74歩▲同銀 ▽75桂▲76金▽67銀▲75金▽39角▲67金▽28角成 と駒損しながら飛車を取ります。

 成立しているかどうかは微妙なところです。



題名:第87手、△4一飛に▲4二金打です。
後手:YSS7.0
後手の持駒:飛 桂 歩二 

先手:金沢将棋2
先手の持駒:歩二


 大局を決定的にしたのが図の▲42金からの 手順でした。
 以下、▽19馬▲52金▽28飛▲78銀▽26飛成 ▲41金▽35龍。銀と飛車を見捨てて上部を厚 くし、入玉模様にしたのが大きく、先手は金 と銀の遊び駒が響いています。


題名:第148手、▲5八金打に△同 龍です。
後手:YSS7.0
後手の持駒:飛 金二 桂 香 歩六 

先手:金沢将棋2
先手の持駒:歩 

 以下、入玉含みで指して安全か、と思ってい たのですが金沢将棋もあらゆる手段を使って怪 しく指してきます。
 いつノータイムで指されるか(詰まされるか) と、緊張しながら操作していたのですが、 134手目、後手の王様が打ち歩詰の形になった 瞬間、YSS は13手詰を宣言しました。

 投了図、1九にある駒が香車ではなく桂馬な のが激戦を感じさせます。
勝ちが決まった瞬間はジンとくるものがあり ました。




藤田の感想

 対金沢将棋戦、まさに感動でした。

 トリッキーな作戦でまず優位を築いたのは金沢将棋。63手目の7五歩が混戦になった原因ですが、この疑問手を誘発したのはYSSの離れ駒を消す我慢でした。
 飛車取りに上部開拓を目指したのには驚きました。アマ初段クラスの人間ならまず100%飛車を切ってしまうことでしょう。

 ついに勝ちが決まった瞬間、私は山下氏の顔を写真に撮ろうとして結局シャッターが押せませんでした。
 「ジンとくるものがあった。」とは、あまりに控え目な表現ですね。>>>山下君


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