YSS優勝記
本戦−柿木将棋戦

山下 宏
97/02/16 15:23


 
 第4戦目に互いに全勝で4強の一角の柿木将棋とぶつかりました。正直なところ、 ここまでの相手には勝つだろうと思っていたのですが、上位の3つに対しては序盤 から中盤の分かれである程度の差をつけられると逆転は難しくなるだろう、と感じ ていました。
 コンピュータ将棋の特徴として、序中盤の時点で有利になった方が、人間以上に 有利になる、という気がします。不利になった方は地平線効果の影響もあって形勢 を保つのが難しいのです。

 以前、前哨戦で振飛車をされて負けたことがあったので柿木将棋は今回は飛車を 振ってくるか、と思っていたのですが角換わりの将棋に落ちつきました。


題名:第36手、▲4五歩に△同 歩です。
後手:柿木将棋
後手の持駒:歩 

先手:YSS7.0
先手の持駒:角


 柿木将棋が角を2七に打ち込んできたのが図 の局面。YSS は▲45歩▽同歩▲同銀から▲36銀 で角を殺せる、と思っていたのですが、▲45歩 を▽同歩、と取られてみると▲同銀には▽47歩! の厳しい叩きがあり悪くなります。
YSS は3手目以降の歩叩きは読まず、唯一直前 に動いた押さえられる香と飛車だけ読む仕様だ ったので、こうした悪手を指す可能性は分かっ ていたものの対処出来ませんでした。
 ここから指し手がちぐはぐになり、柿木将棋 に端から攻め込まれることになりました。


題名:第62手、▲4六飛に△3七馬です。
後手:柿木将棋
後手の持駒:桂 香 歩三 

先手:YSS7.0
先手の持駒:角 銀 歩二 


 ここで単に▲16飛と逃げると▽15香▲56飛 ▽64桂!まででしびれるので先に▲11角と王手 をし、▽22桂と使わせてから▲16飛が読みの入った手でした。


題名:第119手、△2二玉に▲8六香打です。
後手:柿木将棋
後手の持駒:角 銀 桂 香 歩七 

先手:YSS7.0
先手の持駒:角 歩二


 この局面で▲86香と打って自玉が堅くなって 好手、と思っていたのですが、局後、大盤解説 をされていた飯田5段より、▽96歩▲同玉▽94 銀!に▲85香は▽95香▲86玉▽97角!までで詰 がある、との指摘があり、良くなかったようで す。
 本譜は単に▽96飛と逃げてくれたので▲96歩 と押さえて前譜の変化よりは良くなりました。


題名:第140手、▲1五銀に△1四銀打です。
後手:柿木将棋
後手の持駒:角 桂 歩七 

先手:YSS7.0
先手の持駒:桂 香 歩二 


 この後、後手から、どこかで詰めろで▽91香 と打たれる筋がこわかったのですが、▲44馬の 王手の合駒で▽22香と打ってくれたので安心し ました。
 図の局面あたりは YSS は30分の持ち時間の内 27分を使っておりほぼ2、3秒のノータイムで指 すモードに入っていました。
 通信だと指し手がバタバタ進むので対局中は よく分からなかったのですが、図の▽14銀に、 ▲25桂▽同銀、と捨てて▲21飛成と入ったのが 上手い寄せで勝ちになりました。


 今回、YSS の時間の使い方は上手くいった、と思ってます。20分までは反復深化 法の8手探索で40秒で打切、20分を過ぎたら25秒で打切、26分30秒から5手探索の3秒 打切、29分から4手探索にする、というもので、全体的に20分から25分程度の消費時 間を使っていました。
 対して柿木将棋は思考時間が YSS の半分近くで、マシンの速度差(約2倍)と合 わせると4分の1程度の時間しか使っておらず、この辺りが勝敗を分けたのではな いか、と思っています。YSS の場合は6倍の時間をかけるとほぼ1手深く探索出来 るのでこの差は大きいです。


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