CPRと止血法の基礎知識

応急手当の必要性

自分の愛する家族が、友人やキャンプ仲間が目の前で倒れた時、あなた(by stander/側にいる健常者)はどうするのか?救急隊が到着するまでの最大限の努力!!・・・それがCPRです。救命率を高めるには「救命のための 鎖」次の4つの輪が効率的に機能しなければなりません。それは、すなわち

(1)迅速な連絡(的確な119番通報/by stander)
(2)迅速な一次救命処置(CPR/by stander)  
(3)迅速な除細動(救急救命士)         
(4)迅速な二次救命処置(医師等医療機関)    
です。

CPRとはCardio-Pulmonary Resusitationの略語で心肺蘇生法のことです。

一般的に・・・我々、人間の脳組織は4〜6分の血流の停止に依り不可逆的(元には戻らないこと)な変化を来たすと言われています。又、大凡10分を 越えると救命率は致命的に下がります。心肺蘇生法は心臓と肺の機能を他動的に維持させることで脳の機能を 維持、回復させることが目的であることから心肺脳蘇生法(CPCR Cardio-Pulmonary Cerebral Resusitation)とも言われます。救急車は、119番を受けてから救急事故の現場に到着するまでには、全国平均6分かかります。しかし、脳が酸 素なしで生きていられる時間はわずか3〜4分といわれており、たとえ医師に引き継いでも脳を回復させることは、非常に困難です。
観察法

観察とは
 応急手当は、病気やけがの原因を調べて、その原因に応じて行うのではなく、傷病者の状態に応じて行うものです。
 適切な応急手当を行うためには、傷病者の状態や訴えを把握することが必要となります。
 観察とは、この傷病者の状態や訴えをよく把握するために行うものです。

観察の区分

 観察には大きく分けて、「傷病者に近づきながらの観察」と傷病者に「接してからの観察」とがあります。

傷病者に近づきながらの観察
 これには、「@周囲の状況」、「A大出血の有無」、「B嘔吐の有無」、「C顔色、表情」、「D失禁の有無」、そして「E四肢の変形の有無」の6項目の観 察があります。
@の「周囲の状況」は、二次的災害発生の危険がある場合には、傷病者を至急その場から移動させなければなりません。
Aの「大出血の有無」は、大出血していると放置すれば失血死の危険があるため、直ちに止血処置をしなければなりません。
Bの「嘔吐の有無」は、喉に詰まると窒息死の危険があり、嘔吐物を除去する必要があります。
Cの「顔色・表情」は、蒼白ならばショック、紅潮ならば脳出血などが疑われます。
Dの「尿失禁の有無」は、失禁していれば意識障害があると判断でき、気道確保が必要となります。
Eの「四肢の変形の有無」は、骨折があれば、固定処置が必要となります。

傷病者に接してからの観察
 これには、「@意識の有無」、「A口腔内の異物の有無」、「B気道確保、呼吸の有無」、「C脈拍の有無」があります。
@の「意識の有無」は、意識がなければ直ちに大きな声で協力者を呼び、119番への通報を依頼し、救急車を要請します。
  傷病者に意識がある状態であれば、傷病者の訴えをよく聞き、症状に応じた応急手当を行います。
Aの「口腔内の異物の有無」は、食べ物や嘔吐物などがあれば取り除きます。
Bの「気道確保、呼吸の観察」は、気道確保を行い、呼吸を5秒間観察します。
  呼吸が感じられなければ、直ちに人工呼吸を行います。
Cの「脈拍の有無」は、頚動脈にふれて、脈拍の有無を5秒間観察します。
  脈拍がなければ心臓マッサージを開始します。

呼びかけながら倒れている人に近づき左手を倒れている人のおでこの所に当てながら相手のまぶたを見ながら、耳元で名前を呼ぶと同時に肩を叩いて様子を見ま す。名前を知らない人の場合「もしもし?」「大丈夫ですか?」「わかりますか?」等と呼びかけてみる。反応が無ければ徐々に大きな声で呼びかける。肩をた たく強さも徐々に強くする。全く反応がない時は「この人は今、意識が無い」と判断する。ここでは、  

  (a)おでこに手を当てる。=相手の体温が解る。「暖かい、冷たい。」
  (b)呼びかける=呼びかけ反応。
  (c)肩をたたく=痛み刺激反応。

これらの反応を同時に見ています。まぶたを見るのはこれらの刺激ではまぶたがいち早く反応し動いたりするからです。


迅速な通報(的確な119番通報)

意識がなければすぐにまわりの人に大きな声で助けを求める。
「そこの○○さん、この人は意識がありません。119番に電話して救急車を呼ん で!」ここで必ず3つのキーワードを入れましょう。
              (a)意識が無い
              (b)119番
              (c)救急車
以上の3つです。(b)(c)は言う必要の無い事かも知れませんが、咄嗟の判断で○○さんは医者でも呼びにマラソンを始めるかも知れません。危急時には自 信を持って的確な指示を出せば従ってくれます。知人なら名前で呼び、知らない人なら、「そこのお兄さん!(あるいは、お母さん!)」指名して相手に「俺 (私)のことだな!」と分かるように指名して指示をします。貴方の目の前に電話が無い場合は必ず「119したらまたここへ戻ってきて!」の一言を付け加え ればちゃんと119番したか確認できるし、また以後のCPRを手伝ってもらえるかもしれないし、救急車が近づいてきた時の案内人になってくれます。
  1. 119番通報の方法
    日本では、119番通報で救急隊を呼ぶことが出来ます。ですが、慌てているときは110番(警察)へ電話したりしてその間にも貴重な時間が刻々と過ぎてし まいます。救急車は119番です。119番通報をすると消防の指令担当が対応します。焦る余り、通報者が一方的にしゃべりまくっても消防が知りたい重要な 情 報が聞き取れない場合が多々あります。慣れない場合は(大抵の人は慣れてません)最短時間で救急隊を呼ぶ為に指令担当の指示、質問だけに答えるようにしま す。

  2. ☆119番に電話
    消防署「はい、119番です。火事ですか?救急車ですか?」
    あなた「あっ!あの、救急車!お願いします。」

  3. ☆ 救急の発生場所(住所、目立つ目標物など)
    消防署「場所(住所)はどこですか?」
    あなた「○○町のABCオートキャンプ場の場内です。」

    消防所の検索装置は住所、付近の目標物(商店や通りの名称など)世帯主名、電話番号などから発生場所を絞り込み検索を行います。

  4. ☆ 今かけている電話番号
    消防署「電話番号は何番ですか?」
    あなた「キャンプ場の公衆電話なので判りません。」

    携帯電話の場合は、他の消防本部へ入電して、それから所轄消防へ転送されます。途中で切れることもありますので必ず電話番号と市町村名を伝えて下さい。

  5. ☆どの様な事態か?心臓発作か交通事故か?
    消防署「どうしましたか?」
    あなた「キャンプに来ていた友人の××さんが倒れました。体を揺すっても反応がありません。早く来て下  い!」

  6. ★この時点で既に救急出動指令をかける。→→救急隊出動!

  7. ☆ 傷病者の状態
    消防署「救急車はすでに出動しました。落ち着いて質問に答えて下さい。呼吸と脈はありますか?」
    あなた「呼吸と脈は無いみたいで別の人が今人工呼吸と心臓マッサージをやっています。」

  8. ☆今どの様な処置をしているか
    消防署「すでに心肺蘇生法をやってるんですね?」
    あなた「そーです。講習を受けたことがあるそうです。」
  9. ★無線第1報として傷病者はCPA状態であり、隣人による心肺蘇生法が実施されていることを救急車に乘務する救急救命士に無線連絡をす る。

  10. ☆その他、質問に答える。
    消防署「何かの病気を持っていたり、どこか病院へ通院していましたか?」
    あなた「単なる友人で・・・良く判りません。奧さんに聞いてみます・・・」

    あなた「特に持病等は無いそうです」

  11. ★無線第2報として傷病者には持病は無く、かかりつけ病院も無い事を救急車に無線連絡をする。

    消防署「判りました。それでは心肺蘇生法をそのまま救急隊が行くまでがんばって続けて下さい。あなた は、救急車の音が近づいてきたなら救急隊を誘導して 下さい。」
    あなた「わかりました。」

    サイレンが近づいたからといって心肺蘇生法をやめないよう救急隊が傷病者の位置に着くまで継続させる。救 急車の誘導があれば分かり易い(救急車を止める位置も重要な要素です)。密集した一般家屋ではGPSの画面では特定が難しいし、大きな建物ではドコに傷病 者がいるのか隊員には全く判りませんので尚更です。




気道確保・異物除去

口腔内の確認

119番通報をした後は口腔内(口の中)の確認をします。口の開け方は、指を交差させて親指を上の歯に、人差し指を下の歯に当てて開口します。(ガマグチ を開ける要領・ 指交差法といいます。)

 

  指交差法

唾液、血液、食べたものなどがつまって気道(空気の通り道)を塞いでいないか見る訳です。 口の周囲や衣服に、吐物などが付着している場合は特に注意 して確認しましょう。もしも何かが詰まっていたら、指拭法・背部叩打法で除去します。
  1. 指拭法(ししきほう)
    口の中を見て、吐いた物、唾液や、血液などが見えたらまず 首をゆっくりと横に(自分の方に)向け、(生体反射で咬まれる恐れがあるので)手にハンカチなどを利き手の指に巻いて掻き出します。反対の手は、上下の歯 に親指とひとさし指を交差させ(指交差)、指をひねるようにしてこじ開けます。
  2. 背部叩打法(はいぶこうだほう)
    固形異物の場合で指を入れてもとれない場合、背中(肩甲骨と肩甲骨の 間)を叩いてみます。自分の太ももあるいは片方の膝を立て、傷病者を自分の方へ向けて側臥位(横向き)にして顎を突き出させ肩甲骨と肩甲骨の間を5回力強 く叩打する。固形異物で意識がある場合はまず咳による自己排出を努力させる。うまく咳ができない場合は背部叩打法等を実施する。
                    
    背部叩打法      ハイムリック法(上腹部圧迫法)

ハイムリック法は、傷病者の上腹部を圧迫して異物を除去する方法です。片方の手でこぶ しを作り、脇の下から傷病者の心窩部に当てます。もう一方の手で片方の手のこぶしを握り、体を密着させて素早く上・内側方向に向かって圧迫 するように押し上げます。 

気道確保とは
 気道確保とは、意識障害時の舌根沈下や吐物、食物塊などの異物により空気の通り道がふさがれ、気道が閉塞状態になっているのを取り除くために行う手当の ことです。

                
     正常           舌根沈下の状態     異物による閉塞状態


用手による気道確保
 顎先を引き上げながら頭部を後屈させる(頭部後屈顎先挙上法)か、両手で下顎を引き上げる(下顎挙上法)方法で気道を確保し、呼吸を観察します。 口腔内の確認が済んだら、必ず気道確保をします(Airway・・・口から肺までの空気の通り道をつくること)。 片方の手を傷病者の額に当て頭を反らせ、もう一方の手の人差し指と中指で顎先 を上方へ持ち上げる。この方法を顎先挙上法、あるいは、顎先を頤部(おとがいぶ)挙上法と言います。

   

そして目で胸、腹の動きを見て、自分の耳と頬を相手の口と鼻に近づけ耳で空気の出入りを聞いて、頬で吐息 を感じて呼吸の有無を調べます。以上を注意深く5秒間観察し、 胸の動きが無く、吐息を感じない時は「呼吸が無い」と判断します。  

人間は意識を失うと首の筋肉がゆるみ顎のコントロールができなくなる。 そうなると下顎に付いている舌がのどの奥の方に落ち込んで 空気の通り道をふさいでしまいます。これを舌根沈下(ぜっこんちんか)と言います。(飲酒後のヒドイ鼾はコレの軽い状態です。昏睡に移行する時もコノ種の 鼾が出る場合があります。)舌根沈下を改善させるには気道確保が必要です。鼾の対策にも舌根沈下の抑止が一番です(^^ゞ 呼 吸があれば、傷病者の体を横に向けた姿勢(側臥位)とし、さらに気道確保が維持できる昏睡体位をとらせます。                
       昏睡体位

        


  • 心肺蘇生法(CPR) 

    心肺蘇生法とは
     心肺蘇生法とは、傷病者が意識障害あるいは呼吸・循環機能が停止、もしくはこれに近い状態に陥ったときに、呼吸と循環を確保するため気道を確保し、人工 呼吸と心臓マッサージを行い、傷病者を救命するための手当をいい、英語でCPRといっています。 心肺蘇生法の対象者は、呼吸と心臓の両方が止まっている 傷病者です。

    人工呼吸

    人工呼吸の対象者は、呼吸を5秒間観察して、呼吸が感じられない人です。人工呼吸の仕方は、成人の場合は5秒に1回の割合で、1回 当たり800〜1200ml吹き込みます。また、吹き込む時間は1.5秒〜2秒とします。小児の場合は4秒に1回、乳幼児の場合は3秒に1回、それぞれ胸 が軽く膨らむ程度とします。また、吹き込む時間は、小児の場合は、成人と同様1.5秒〜2秒とし、乳幼児ではこれよりも時間を短くします。

    先ず、額に当てていた手の親指と人差し指で鼻をつまみながら自分の口で相手の口をふさいで息を1回の吹き込みに1.5〜2秒かけて2回吹 き込む。量は傷病 者の胸が軽く膨らむ程度。(この時点では試しに吹き込むので量は少なくて良い)
     
    *ここで、重要なことは息を吹き込んだ時に傷病者の胸が上下するかどうか確認することです。(抵抗なく息が入って抜けたか?)1回目で胸が上下すれば自分 の吹き込んだ息が傷病者の肺まで届いていると 判断出来ます。講習会等では1回目の吹き込みの後「気道閉塞なし!」と呼称して確認しています。




    もし1回目で息が入らない、胸が上がらないならば気道確保が不完全かも知れません。もう一度、顎の位置や頭の位置をチェックしてみます。まさか・・・、鼻 をつまみ忘れてはいませんよね(^^ゞ 。そしてもう一度息を吹き込んでみる。それでも息が入らない、胸が上がらないらば気道に何か物がつまっていないか もう一度、背部叩打法で除去を試みます。

     

    人工呼吸がうまくいかない時のチェックポイント

      1. 気道内に異物が残っていないかを確認します。異物があれば背部叩打法や指式法などで除去します。
      2. 正しい気道確保がなされているかを確認します。特に、頭部の後屈度と顎先の引き上げ方、下顎の柔らかいところを指で押さえつけていないか で す。
      3. 傷病者の鼻をつまんでいるか。傷病者の鼻をつまみ、鼻孔を完全に閉じないと、空気が漏れて有効な人工呼吸は行えません。
      4. 傷病者の口と実施者の口の気密は保たれているか。傷病者の口を実施者の口で完全に覆い、気密させて吹き込みます。これが完全でないと十分 な量 の空気は吹き込めません。
    心臓マッサー ジ
    心臓マッサージの対象者は、心臓の拍動が感じられない傷病者です。脈拍の観察は、成人・小児の場合は頚動脈に、乳幼児の場合は上腕動脈に指先を当てて、5 秒間観察します。これで触れなければ、心臓は止まっていると判断 します。

    脈拍の確認は首の動脈(頸動脈)で確かめるのが普通です。位置は、男性の場合ノドボトケの所から指を3cm位、真下の方へずらした位置で 測定できます。これに掛けられる時間は5秒間程度。自分の首の所を触ってみてだいたいの位置をつかんでおくといいでしょう。と、言うモノの、実は慣れな い人には分かり難いんです。予め、夫婦や友人の頸動脈の脈動を確認して置く方が良いでしょうネ。 脈拍確認のポイントひたいに手を当てた まま気道確保をし、もう一方の手で(人差し指と中指の2本)頸部にあてる。5秒 間観察する。*乳児(1歳未満)の場合は上腕動脈(肘と脇の中間ぐらい)で観察する。


    圧迫の深さ
    成人では3.5cmから5cm、小児では2.5cm〜3.5cmとし、成人、小児とも早さは1分間に80〜100回の早さで圧迫します。
    乳幼児の場合は、圧迫の深さを1.5cm〜2.5cm、早さを1分間に100〜120回とします。
    注:圧迫の深さは3.5〜5cmと言うモノの・・・固い床の上でなければ効果が半減されてしまいます。柔らかいベッドの上などの場合は床に移すか、或い は、固い厚みのある板を背中に敷きましょう

    圧迫位置
    心臓マッサージを行うためには、正しい心臓の位置を知らなければなりません。心臓マッサージを誤った位置で行うと、肋骨骨折などの危険が生じます。心臓の 位置は、胸の中央にある胸骨の、やや左側に位置しています。心臓マッサージの圧迫位置は、成人・小児の場合、剣状突起と肋骨縁でできる切痕の指1本分、頭 側の位置を圧迫位置の下限とします。乳幼児(1歳以下)では、左右の乳頭線と胸骨とが交差する部位より指1本分、足側の位置を圧迫位置とします。 胸骨下半分が正しい圧迫部位であり剣状突起部の圧迫は避けます。傷病者の肋骨の一番下から自分の人差し指と中指で移動させていくと中指が剣状突起部に当た ります。横桟の肋骨に対しタテ桟の先端部分の事です。人差し指の置かれた胸骨のすぐ上の部分に片手を置きさらにもう一方の手の平を重ね指を組みます。そし て手のひらの根本の部分のみ胸に当てるようにして真上から押します。

    圧迫の方法
    成人の場合は両手で、小児の場合は肩手で両肘を曲げず、体重をかけて垂直に圧迫します。
    乳幼児の場合は2指で圧迫します。


       心臓マッサージのポイント
    傷病者に対して覆い被さるようにして肘を伸ばし、垂直に圧迫します。肘が曲がっていると力が自分の肘に吸収され正確に伝わらないし、 腕が斜めになっていると圧迫点がずれます。

    心肺蘇生法(CPR)
    呼吸も脈拍も止まっている傷病者には、人工呼吸と心臓マッサージを併せて行う心肺蘇生法(CPR)を行います。
    心肺蘇生法には、一人で行う方法と二人で行う方法があります。成人の場合、一人法では、心臓マッサージを15回行ったあと人工呼吸を2回、二人法では、心 臓マッサージ5回に人工呼吸1回の割合で行います。小児・乳幼児の場合は、一人法、二人法とも、心臓マッサージ5回に人工呼吸1回の割合で行います。

    これを救急隊が来るまで頑張って続けます。CPR開始1分後(だいたい4サイクル)にもう一度、脈拍の有無を観察し ます。

       CPRのポイント
    CPR(心肺蘇生法)を実施していると人工呼吸時に鼻をつまむことや心臓マッサージの圧迫点の確認を忘れがちです。その都度、鼻をつまみ息が漏れないよう に。また人工呼吸から心臓マッサージへ移るときの圧迫点の確認を怠らぬように注意しましょう。


    *心臓マッサージの練習は、生体では絶対に行ってはいけません。

    心肺蘇生法のまとめ

             

    成  人
    (10歳以上)

    小  児
    (1〜10歳)

    乳  児
    (1歳未満)

    心 マの回数

    80〜100回/分

    100〜120回/分

    心 マ:呼吸

    1人 法 15:2
    2人法 5:1

    1人 法・2人法
    共に 5:1

    心 マの深さ

    3.5〜5.0 cm

    2.5 〜3.5 cm

    1.5 〜2.5 cm

    心 マの部位

    胸骨の下半分
    切痕より指1本分、頭側の位置が圧迫の下限

    乳頭線より一横指下
    (足側)

    心 マの方法

    両 手で圧迫

    片手 で圧迫

    指2 本で圧迫

    脈 の触知

    頚動 脈

    上腕 動脈又は
    大腿動脈

    人工呼吸のみ

    5 秒:1
    (10〜12回/分)

    4 秒:1回
    (15回/分)

    3 秒:1回
    (20回/分)



      このCPRを持ってしても、100%傷病者が 助かるわけではない、と言う悲しい事実を認識すべきです。しかし、心臓が止まってから4分以上経つと不可逆的(元には戻らないこと)な変化を来たすと言わ れています。これは、生命が失われたり、仮に心臓の動きが戻っても脳にダメージが残り麻痺や言葉が言えなくなったり植物人間の状態になることもあり素早く 行動することが大事です。CPRは万能では無い、しかし、目の前にいる傷病者がCPRに拠って救われるか救われないのかは、素人の私達には判りません。助 かる筈の傷病者を助けない法は有りません。
      米国等でCPRが普及している国でも30%位の蘇生率で、日本では残念ながらまだまだそこまでの数字には至っておりません。目の前に倒れている家族や友人 等の尊い命を放置して置くと命の砂時計は確実に減っていきその先に待っているのは・・・・「死」そのものです。もし、あなたが手をさしのべるなら、助かる 可能性がまだまだ持続し救急 隊は適切な処置をしながら病院へ搬送することが出来ます。

      以上の例は、その場に複数の人が居合わせた場合を想定しています。が、その場に貴方1人しか居ない場合も 想定すべきでしょう。次に1人法のCPRの目安を記しておきます。

        大人の場合(おおよそ10歳以上の小児から)
      1. 傷病者へ呼びかけ「○○さん、解りますか?」
      2. 他の人へ助けを呼ぶ「意識が無い・119番・救急車」
      3. 口の中を見る。
      4. 呼吸の確認5秒〜吹き込み2回
         (1回の吹き込みに1.5〜2秒かける。)
      5. 脈拍の確認5秒〜心臓マッサージ15回
      6. CPR(心マ:人工呼吸)〜15:2
        小児の場合(1歳〜10歳)
      1. 傷病者へ呼びかけ「僕、だいじょうぶ?」
      2. 大声で他の人へ助けを呼ぶ(誰かが気付いてくれるかもしれない)
      3. 口の中を見る。
      4. 呼吸の確認5秒〜初回だけ吹き込み2回
         (1回の吹き込みに1〜1.5秒かける。)
      5. 脈拍の確認5秒〜心臓マッサージ5回(片手で圧迫)
      6. CPR(心臓マッサージ:人工呼吸)〜5:1
      7. CPRを約1分間実施した後、電話をかける。「119番・救急車」
        乳児の場合(1歳未満)
      1. 呼びかけながら足の裏をたたく。(あるいは背中をさする。)
      2. 大声で他の人へ助けを呼ぶ(誰かが気付いてくれるかもしれない)
      3. 口の中を見る。
      4. 呼吸の確認5秒〜初回だけ吹き込み2回
          口・鼻を同時にふさぐ(1回の吹き込みに1〜1.5秒かける。)
      5. 脈拍の確認5秒〜心臓マッサージ5回、
          上腕動脈で確認し、心マは指2本で行う
      6. CPR(心臓マッサージ:人工呼吸)〜5:1
      7. CPRを約1分間実施した後、電話をかける。「119番・救急車」

      乳児、小児では成人の場合の心室性不整脈よりもむしろ呼吸機能の低下から来る 低酸素血症の出現に引き続いて心拍停止や心肺停止が出現しやすい(迷走神経が未完成な為、心臓の励起部位の低酸素状態で拍動が杜絶えがち)ので約1分間 の蘇生法の実施によって効果的な酸素化と換気を取り戻し、傷病者が心停止状態 に進行することを防げる可能性がある。
      それと、貴方以外の人が現場に居ない場合で、救急隊への連絡の為に患者の側を離れる場合は、外傷等が無ければ顔を横向きあるいは昏睡体位にする。体重が軽 く、電話が近い場合は、(頭、頸部に注意しながら)電話口まで運べば消防署の通信指令担当よりCPRの口頭指導を受けられる可能性があります。誰も居ない 状態で1人でCPRを続ける事は貴方自身のストレスともなりますし、一般人のCPRは応急措置に過ぎません。脳への血流を維持しながら一刻も早く救急隊の 手に委ねる・・・この見極めが大切です。
      又、いずれの場合も1分後に脈拍の確認をします。脈拍の確認(5秒)をして、感じられたら更に橈骨動脈(手首の所)等で10秒の観察をする。例えば10秒 間で9回の拍動があったなら9回×6=54回となります。 脈拍が1分間でおよそ50回以上のペースであったなら心臓マッサージは中止してもよいが再度止まる可能性もあるので救急隊が着くまでチェックを継続すべき です。その後、呼吸も観察して1分間で10回以上くらいなら人工呼吸も中止していいでしょう。

      CPRの雑学・その他

      乳児や頸部損傷の恐れのある場合の気道確保
      下顎挙上法。倒れている人の頭部の上方に位置し、親指を除く指を両側の下顎角( 耳の下の下顎付け根付近)の前に人差し指、中指を、下顎角の後ろに薬指、小指をあて持ち上げる。下顎の歯列が上顎の歯列より前に出て受け口になるまで押し 出す。開口が不十分なら両親指を顎先に当てて口を開かせる。特に小指、薬指で下顎を持ち上げる使い方がポイントです。乳児(1歳未満)や頸部損傷の疑いの ある傷病者では最も安全な気道確保方法です。

       呼び掛けに反応しない(意識はない)が、呼吸・脈拍がある場合は?
      昏睡体位という姿勢をとらせます。頭と体を横向きにしてそのまま頭を反らせた格好の事です。こうすることにより舌根沈下を防ぎ、嘔吐した場合でも仰向けに 比べ 口の中に嘔吐物が溜まる事態が少なくなるわけです。意識もうろうとした状態から昏睡体位にしておくことで意識消失した場合に備えることもできます。

       人工呼吸での感染症の罹患の可能性
      他人に人工呼吸をするときB型肝炎、AIDS等のウイルス感染等の危険は当然伴います。基本的に、これらは血液などの体液で感染することが多く十分に口の 回りの血液や吐物をふき取りハンカチなどを口に当てて直接、口 と口を付けないようにする工夫も大事です。一般人がマウスピースを持ち歩く習慣が日本には有りませんので何とも言い難いところです。諸外国では車載の ファーストエイドキットの中にマウスピースが入っています。是非、見習いたいモノです。

       溺水者の場合は?
      基本的には、同じです。飲み込んだ水は 無理に吐かせる必要はありません。CPRの最中に吐いた場合は顔を横にして口から 吐物を出してやります。勿論、体の水分は拭き取りましょう。

       心臓マッサージで起こりうる合併症は?
      剣状突起部 の圧迫は避けると書きましたが、肋骨骨折、肋軟骨連結解離(胸骨と肋骨のつながっている部分が離れてし まうこと)などが起こり得ます。又、高齢者などの骨自体が脆くなっている人や圧迫点 がずれてきて心臓マッサージが不正確になっている場合に多いようです。 肋骨骨折に気が付いたとしても、CPRを止めてはいけません。圧迫する力を加減して継続します。そのまま止めてしまうとその時点で 脳への血流が途絶えてしまうからです。肋骨骨折などの治療は蘇生してからでも できますが脳を守るのは今しかありませ ん。しかし、頻度は少ないながら 心臓損傷、肝臓損傷など致命的なものもあるので十分注意して行う必要があります。

       心臓マッサージの効果は?
      心臓マッサージで得られる拍出量は正常時の10〜30%、脳と心筋の 血流量は脳が30〜40%、心筋は5〜35%に低下する、と言われています。 どちらにしても機能維持にはギリギリのラインであると思われます。 自発呼吸が回復するか、救急隊の手に委ねない限り長くは持ちません。

       

        CPRの中止基準?
      1. 有効な自発呼吸、循環が回復した場合。
           人工呼吸;呼吸数が10回/分以上となり、胸部の挙上が十分に認められた 場合。    胸骨圧迫心臓マッサージ;橈骨動脈(手首の所)で自力拍動が50回/分以上で、 かつ充実した強い拍動を触知した場合。
      2. 医師または責任ある第三者(救急車の乗務員等)に引き継げるとき。
      3. 疲労や危険が自分の身に迫ったとき。
        コメントし辛いのですが・・・これも実状です。但し、疲労に関しては、そこに居合わせた人を総動員してでも継続すべきです。正義を的確な指示で伝えれば誰 しも行動してくれます。

       CPRを実施して傷病者の容態を更に悪化させた場合、法的責任を負ってしまうのか?
      救急隊が通報を受けてから現場到着ま で平均5・5分もかかり、この間の応急手当が重要です。複数回答に依る世論調査(1992)では、一般市民による応急手当 が積極的に行われていない理由として、「方法が判らない」(70%) に続いて「かえって症状が悪化すると責任を問われかねない」(36%) が二番目になり、法的責任の問題が、CPR普及の大きな障害とな っていた様です。言い訳めいても聞こえますが・・・(^^ゞ そこで、1993年に総務庁の諮問機関として「交通事故現場における市民による応急手当促進方策委員会」が組織され【法的義務でなく道義的問題の応急手当 について、民法の 「緊急事務管理」に当たり、「法律的には悪意または重過失がない限り、 善意で実施した救命手当ての結果に民事的責任を問われることはまず ない】と答申した。そして又、【刑事上も、救命手当は「社会的相当行為」として違法 性を問われず、「注意義務が尽くされていれば過失犯は成立せず、その 注意義務の程度は医師などに比べて低い】と答申された。 総務庁はこれを受けて1994年に現行法上の免責制度を補足する発表を行った。

       心肺蘇生法を実際に練習してみたいのですが?
      そう思った皆さんは素晴らしい方達です。是非、各地で行われている講習会に参加してみるのもいい方法でしょ う。 文章を読むのとは違い、観察方法や送気の量、心臓マッサージのリズムなどを確かめるにはいい機会です。 我々一般人が実践でいきなりスムーズにCPRを行う事はなかなか困難なものですが 講習会等に参加することは傷病者を助けてあげたいという動機を高め、CPRに 対する自信を深めてくれるでしょう。

         心肺蘇生法をいつ,どのような状態で断念するか?
      日本蘇生学会の「蘇生に関する倫理委員会」では、心肺蘇生法を中止する判断基準として,心肺停止時間30以 上,心電図での心静止,患者の状態とくに末期患者,重篤な外傷・熱傷患者 を重要視していた。30分以内の心停止では心肺蘇生法の実施は30分間程度を 目安とし,5分以内の心肺停止,15歳未満の小児,25℃以下の低体温,元来健 康であった人,基準疾患の軽い患者の場合には1時間以上行うとされています。特殊な立地に無い限り、救急隊は30分以内に到着します(平均の数字は6分未 満と言われますが、実際には30分程度掛かる過疎地域も歴然と存在します)。しかし、我々一般人が断念する事を決める以前に救急隊は必ず到着しますから、 諦めないで頑張るべきでしょう。


    止血法

    止血の必要性
    大出血を起こしている傷病者には、急いで止血の手当をしなければ、数分間で出血死に至ることがあります。
    また、出血量が多いと、出血性ショックに陥ることがあり、それを防ぐためにも止血が必要なのです。

    全血液量
    成人の場合は、体重の13分の1から14分の1(体重の8%)といわれています。体重が50sの人では約4gとなります。

    出血による影響
    全量の3分の1では「生死の境目」となり、2分の1の出血では「失血死」となります。したがって、出血量の多いほど、また出血が激しいほど、止血の手当を 急ぐ必要があるのです。

    出血の種類(性状)
    動脈性出血
     これは、鮮紅色の血液が脈拍と一致して噴出するものです。
     短時間に大量の血液を失うので、緊急に止血の手当が必要です。
    静脈性出血
     これは、暗赤色の血液が持続的に湧くように出血するもので、これも大量の出血となるとショックに陥ります。
    毛細管性出血
     これはにじみ出るような出血で、指を切ったり転んですりむいたようなときのもです。 この程度の出血のときは、人工呼吸や心肺蘇生法を優先させます。

    止血法の種類
     応急的に行う止血には、「直接圧迫止血法」「間接圧迫止血法」「止血帯法」があります。

    1. 直接圧迫止血法
      出血部にガーゼや布を当てて、体重をかけて、または手で強く圧迫して止血する方法で止血の基本です。
    2. 間接圧迫止血法
      指で動脈血管を圧迫して止血する方法で、動脈の出血が激しく続いているときは、ガーゼや包帯を準備する間に行う一般的なものです。
      出血部に適応した止血点を確実に圧迫する必要があります。例えば、上腕の出血の場合は腋窩動脈、前腕の出血の場合は上腕動脈、手の出血では橈骨動脈、尺骨 動脈、指の出血は指動脈、下肢の出血では大腿動脈が止血点となります。この止血点を骨に向かって圧迫します。                                                      
    3. 止血帯法
      これは、手や足の出血で直接圧迫法では止血が困難な場合に行う方法で、最終手段として行うものです。
      止血帯が装着できる部位は、上腕部と大腿部です。
      止血帯には、幅の広い三角巾や包帯を用います。
      止血の仕方は、止血帯の間に棒などを入れ、これを回して止血します。この場合、出血が止まったらそれ以上きつく締めないようにします。
      止血帯を実施した場合は、止血部位から先の末梢部の組織の壊死を防ぐため、30分に1度、緊迫をゆるめ、血流を1〜2分再開させます。
      必ず止血時刻を正確に記録しておきます。