広大医誌, 48(6)
361〜374, 平12・12月(2000)
瀬戸内海の硬骨魚の半規管に関する形態計測学的研究
- 特に運動能との関係 -
田村聡一郎
広島大学医学部 解剖学第二講座
(主任:片岡勝子教授)
受付 平成12年 9月 8日
受理 平成12年10月24日
魚類の耳石に関する研究の多くは耳石組成についての研究であった。しかし、魚の運動能と迷路、特に三半規管の形態と関連づけた研究はほとんどなかった。同じ魚類でも運動量や頭部を基準とした泳ぐ方向性や特性の異なる種類では、その三半規管の形態や機能は当然のことながら異なることが予測される。そこで、各種の魚の運動能と三半規管の形態との関係について検討した。
ボラ、サバ、タチウオ、アジ、キス、メバル、ヒラメの7種類の魚を対象とし、魚の頭部を左右に分割し固定した後、三半規管を取り出し観察を行った。ヒラメについてはふ化後経時的に観察を行った。また、二半規管であるヤツメウナギについては電子顕微鏡による観察を行い、以下の結果を得た。
1) 頭部の大きさと三半規管の大きさには相関関係が見られた。しかし、頭部の大きさが180 mmを超える群では、三半規管の大きさは頭部の大きさに無関係であり一定の値(14.8 mm)を示した。
2) 各半規管のなす角度は、俊敏な運動能力をもつ魚であるキス、メバル、アジでは直角に近い値を示したが、俊敏な運動能力をもたないと思われるボラ、サバ、タチウオおよびヒラメにおいては直角より大きくはずれていた。特にヒラメの各半規管のなす角度はいずれも鋭角であり、三半規管の位置は眼のずれ分だけがずれていた。魚の種類により各半規管のなす角度や形態は異なり、運動能との関連性が示唆された。
3) ヤツメウナギの感覚細胞の構造は球形嚢斑においては一本の長い動毛と数十本の階段状に整列した不動毛で構成されていた。二半規管のヤツメウナギでは前後の半規管膨大部上の感覚細胞では、動毛が卵形嚢側に位置した。また、球形嚢斑も卵形嚢斑も存在することが観察された。
Key words : 魚の運動能、三半規管の形態、瀬戸内海硬骨魚、三半規管の角度、 ヤツメウナギ