2008年診療報酬改定

 夜間・早朝加算について

2008年の診療報酬改定では、外来管理加算の5分間ルールや後期高齢者診療料など、現場でもよく理解できない改定がおこなわれました。

外来管理加算や後期高齢者診療料等の問題さておき、今回は夜間・早朝の診療費の加算について考えてみます。

2008年4月から夜間・早朝診療に50点加算が新設されました。
軽症の時間外救急患者を診療所で受け入れることで病院勤務医の負担軽減をはかることが目的とされています。

 平日の6-8時、18-22時

 土曜の6-8時、12-22時

 日祝日の6-22時

の夜間・早朝の初診・再診料に50点加算されるものです。

しかし、これを算定するためには、手あげ方式で申請する必要があり診療所だけが申請できます。病院はできません。通達の内容を読んでみて、果たして思惑通りに申請されるのか疑問に思います。

現在の時間外加算は、診療所が届け出た診療時間が終わって、診療応需の体制を解いた後の急患は、初・再診料に時間外加算として85点が算定できますが、今回の改定では、届け出以外の時間で、診療応需体制を解いた後の診療は同じですが、自院の診療時間を延長するか、その夜間・早朝の時間帯の診療を行うことを届け出て診療応需の体制をとっていれば、従来の時間外加算とは別の早朝・夜間加算が出来るものとしています。


この加算が算定できるのは、夜間・早朝の診療を行うという届け出が必要でその時間は診療体制をとっていないといけないのです。

関西の都会の地域では、多くの診療所で準夜帯の夜間診療を行っており、現在届け出の診療時間の表示が、もし午後6時から10時までとすれば、この夜間の診療は今は診療時間内の応需体制の診察で時間外加算は出来ませんでしたが、4月からはその時間内の診療はすべて50点加算できることになります。すべての患者さんに加算できるのなら経営的には有利な算定になります。
しかし、今までは診療表示時間内で時間外加算もされなかった患者さん達にとっては、今までと同じ診療で夜間加算されることになるため、患者負担は少し増加しする事になります。

軽症の時間外救急患者を診療所で受け入れることで病院勤務医の負担軽減をはかる目的は理解できたとしても、これでは全国の普通の地区の診療所でこれが出来るかと言えば、疑問ですし、目的そのものが疑問です。


診療時間を延長することは診療所の医師だけでなく看護師・事務員等のコメディカルスタッフの超過勤務を強いることになりますし、医薬分業の診療所では、近くの調剤薬局にも協力してもらわないと、診療所に薬は無いので夜間診療は出来ません。診療所の医師だけが頑張れば良いわけではないのです。

それも夜間に何人受診されるのかわからず、一人50点の加算では、超過勤務に見合う診療報酬ではありませんので診療時間を延長して届け出し施設基準をとる医療機関があるのかよくわかりません。
本当に目的通りの効果が期待できるのでしょうか。

国は、診療所のコンビニ化を図っているのでしょうが、セブンーイレブンならぬ「シックスーテン診療所」の開設は都会なら増える可能性はありますが、すぐには難しいと考えます。

でも、早朝夜間・休日に診療できる診療所を増やすことと、軽症の時間外救急患者を診療所で受け入れることで病院勤務医の負担軽減をはかることとは全く意味は違います。

関西地域では、医療圏全体で診療所の夜間診療体制を構築していると聞きます。そのためには地域医師会も通常は夜間に行っている医師会の理事会や研修会を午後に行ったりして、夜間の行事を変更しているようです。
地域全体で取り組んでいる都会は別にして、地方都市でこれを実現するにはまだ大きな問題があると思います。

そして、果たして50点で、診療時間を増やしてまで診療応需体制がとれるのでしょうか。応需時間を増やすことは、診療所医師の勤務時間も当然増えますし、何といっても職員の時間外の超過勤務では毎日の診療体制はカバーできないので、職員の勤務を複数体制で行うことになります。労働時間の基準も守らねばなりません。

そんな体制の経済的な支えも無く、開業医にももっと働けと言う制度ですのでどう見ても全国的に届け出施設が増えるとは思えません。昼間の診療を休めば労働時間は問題ないと言う発想もありますが、職員の勤務体制の問題もあり、すぐには対応は難しいと思います。また医薬分業を推進したため診療所に薬が無いので前述したように近くの調剤薬局に夜間・早朝に開院してもらう必要もあります。

都会の診療所で、今まで夜間診療を行っている所や、他の診療所とは違った特徴を出すために、これから夜間診療や早朝診療を行う診療所を増やす引き金にはなるかもしれませんが、それにしては50点ではどうしようもないと考えます。

やはり時間外の診察は救急病院の勤務医の負担を少なくするために出来るだけ時間内に受診して貰うことを徹底し、医師会などて地域の夜間診療を守っている夜間・休日診療所への行政的な援助が必要ではないかと思いました。