介護保険法案国会通過


介護保険法案が国会を通過しました。

 40歳以上のすべての国民を対象に新たに保険料を徴収し、寝たきりや痴ほう状態の高齢者らの介護サービスを行う介護保険法が12月9日の衆院本会議で採決され、自民、社民、さきがけの与党三党などの賛成多数で可決、成立しました。

 共産党は反対し、新進、民主、太陽の三野党は本会議をボイコットしたとのことです。これにより2OOO年4月の介護保険制度開始が確定しました。

 

懸案残し政府押し切る

 制度確立へ点検必要制度の内容に様々な懸念を残した介護保険法案は「100%いいものでないから導入を遅らせると言うより、まず導入して不備な点があれば改善する姿勢の方がいい」(小泉純一郎厚相)との立場をとる政府、与党が押し切る形で成立しました。

 はたしてこれでよいのでしょうか。保険料という税で運営するならば国民全てに平等に権利の行使も出来なければならないと考えますが、その準備もできず見切り発車では早晩混乱が起こるのは必至で、その時になって改善する等悠長なことを言えるのでしょうか。

 前厚生大臣の管さんの民主党はボイコットしたとのことですが、ボイコットするくらいならもっと時間を掛けて討議すべきですし、問題があると考えるなら今回は反対すべきだと思います。

 「税による制度創設」を主張した新進党も、消費税率引き上げ問題も含めた具体的な対案を提出しての論議を挑めず、「保険か税か」の議論は深まりませんでした。

 国会議員がこれですから、厚生省(岡光さん)の思惑通り進められ、高齢者(特に低所得)切り捨ての介護保険が出来上がったわけです。

 制度が軌道に乗るかどうつかは今後の取り組みいかんにかかっており、福祉現場関係者だけでなく住民全体が政府、自治体に努力を求め続けていく必要があります。
 2000年3月までに基盤整備を行う例の岡光さんの考えた高齢者保健福祉推進計画(新ゴールドブラン)では、計画を100%達成できても、介護保険制度スタート時点で需要の40%しか満たせないとの試算です。しかも、訪問看護ステーションや在宅介護支援センターなど一部は達成率が低いのが現状で制度開始以降もさらなる基盤整備に向けた事業展開が必要となりますが、4兆2000億円とも言われる新しい福祉ビジネスに医療産業が乗り込んでくることは目に見えており、規制緩和が外されれば、今でも懸念されている要介護者の奪い合いが始まり地域福祉・医療の混乱も目に見えています。

 対象となる高齢者がどの程度の介護が必要かを決める「要介護認定」では、一回目のモデル事業が全国902市区町村で実施され、一回目の事業ではコンピユーターを使った一次判定と、医師の所見などで総合判断する二次判定で3割近い食い違いが出ておリ、精度の高い判定方法の確立も不可欠ですがこれもまだ確立した方法はありません。

 政府が参考にしたドイツの介護保険制度は、20年近い論議を経て1995年からスタートし、いまだに試行錯誤の段階にあるといいます。日本での論議はまだ不十分としか言いようがありません。

介護保険法は施行後5年をめどとした見直しが盛リ込まれており、よりよい制度とするための点検作業は、これから間断なく続けていかなければならなりません。

介護保険制度の骨子

一、市町村が運営主体となり、40歳以上の全国民を加入者として保険料を徴収。
  保険料は平均月額2500円(初年度)

一、介護を必要とする人は市町村の介護認定審査会に申請。6段階の認定ランクに
  応じて介護サービスを受ける。原則として65歳以上が対象だが、40歳以上
  65歳未満の人は老化に伴う要介護状態だけが給付対象となる

一、介護サービスはホームヘルパーの家庭訪問など在宅サービスと、特別養護老人
  ホームなど施設入所。費用の9割は保険給付、1割は利用者が自己負担

一、認定に異譲があれば都道府県の介護保険審査会が不服審査請求を受ける

一、制度開始は2000年4月

        平成9年12月9日  玖珂中央病院 吉岡春紀


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