10月から脳卒中後遺症・認知症の後期高齢者は

       一般病院に3ヶ月以上入院できなくなります


昨日(7月14日)、病院に出かける前にテレビで、TBS番組「みのもんたの朝ズバ」を見ました。

そこでは、今年(20年)の10月から脳卒中後遺症と認知症の後期高齢者は3ヶ月しか病院に入院出来なくなり、病院を追い出されて行き場のない医療・介護難民が増えてくる。後期高齢者にとってひどい仕打ちだという様な訴えでした。

 元々国は、医療費削減のため10年位前から老人の長期入院にはいろんな制限を設けて追い出しをはかっていましたし、4年前、平成16年の診療報酬改定では一般病院・病棟に入院の老人患者に「老人特定入院基本料」という料金体制をつくり、一般病棟に入院している高齢者(一部の特定患者を除く)では入院90日(ほぼ3ヶ月)を超えると、医療費の入院診療報酬を低減し、「1日928点」の一般病院の点数とすればびっくりするような低い点数になっていました。

 今回「老人」が「後期高齢者」に変わったので、みのさんの番組で、飛びついたのでしょうが、今までもこの制度は存在していたのです。ただし、これまでは重度の肢体不自由患者は「老人特定入院基本料」の適応外であったのが、今年の10月1日より、重度の肢体不自由患者のうち、脳卒中の後遺症患者および認知症患者は除かれ後期高齢者特定入院基本料を算定することに変わったのです。
 今までは70歳以上の老人でしたが、10月からは75歳以上の後期高齢者が対象というわけですので、70〜75歳までの人はその対象から外れます。
 「1日928点」の点数は変更ありません。

 この算定「1日928点」には、多くの検査、投薬・注射、画像診断などが包括されており、この点数では一般病院で脳卒中の後遺症患者および認知症患者を長期入院させることは経営上難しくなります。

 現在も重度の肢体不自由患者さんだけでなく、癌の点滴・注射治療や人工呼吸器治療やドレナージ処置・人工腎臓が必要な場合には、この「後期高齢者特定入院基本料」を算定せずに、普通の入院基本料を算定して、いろんな治療も算定できますので病院にとっては収入はあり継続入院は可能なのですが、一般病院には平均在院日数の削減が必要であり、そのためには長期入院を排除しなくてはならず、一般病院の長期入院はどんな病気でも難しくなるのは現実なのですが。

 この制度は一般病院・病棟のことであり、長期入院が対象の療養病床の制度ではないのですが、勘違いされている方もあります。ただ脳卒中の後遺症や認知症は療養病床では殆ど「医療区分1」ですので、脳卒中後遺症で重度の肢体不自由でいろんな処置が必要な方は転院・転棟も難しくなりますし、介護施設に転院も難しいのが現実です。

 一方、脳卒中の方たちの急性期治療後の転院先の回復期リハビリ病棟にも成功報酬的な縛りが出てきました。
 回復期リハビリ病棟退院時の在宅への復帰率が60%以上ない場合には、診療報酬が減点される仕組みが盛り込まれたため、回復期リハビリ病棟でも最初から重度の意識障害や麻痺があり在宅に復帰が難しいと思われる患者さんや、身元引き受けのない患者さんは、急性期病院からの転院制限をし始めています。これまた仕方ないこととはいえ、医療費削減だけで作られる国の仕組みはどうしようもありません。
 それに輪をかけて、急性期病棟の受け皿となっていた医療・介護療養病床の大幅な削減計画が進行しており、自民党内で見直しの議論が始まってはいますが、国は何を考えているのか、厚生官僚の「医療費削減のための机上の空論」につきあうにはもう限界だと感じています。

 官僚はミスすれば、他の部署に配置転換されたりしてほとぼりが冷めればまた復帰していますが、いったん崩壊した地域医療は簡単には復活できません。


2008年07月15日