特定疾病についての疑問


 今回、特定疾病という馴染みのない言葉が発表され、40歳以上65歳未満の第2号被保険者については、下記の特定疾病だけが介護認定の対象疾患となりました。
 要するに第2号被保険者では、これ以外の病気や怪我では介護認定は受けられないと言うことです。本来ならば介護保険は「介護が必要になったとき、疾患名の如何に関わらず、サービスが受けられること」が必要だと思いますが、「特定疾病」などに限定されるとますます制度自体がわからなくなってしまうのは、私だけでしょうか。
 勿論、第1号被保険者にもこの病名は適応されると思いますが、第1号被保険者の介護認定の疾病名は曖昧になっています。

特定疾病の種類
 1.初老期の痴呆
  a.アルツハイマー病 b.脳血管性痴呆
 2.脳血管疾患
  a.脳出血 b.脳梗塞
 3.筋萎縮性側索硬化症
 4.パーキンソン病
 5.脊髄小脳変性症
 6.シャイ・ドレーガー症候群
 7.糖尿病性腎症・糖尿病性網膜症・糖尿病性神経障害
 8.閉塞性動脈硬化症
 9.慢性閉塞性肺疾患
  肺気腫・慢性気管支炎・気管支喘息・びまん性汎細気管支炎
 10.両側の膝関節または股関節の著しい変形を伴う変形性関節症
 11.慢性関節リウマチ
 12.後縦靭帯骨化症
 13.脊柱管狭窄症
 14.骨折を伴う骨粗髪症
 15.早老症(ウェルナー症候群等)

 これにも多くの疑問や問題点があると思います。果たしてこの疾病だけで、十分かと言えばそうではなく、その他にも「医療も介護も」同時に必要とする患者さんはたくさんあります。
 例えば、脳血管障害も脳出血と脳梗塞だけが対象になっていますが、「くも膜下出血の意識障害の患者さんはどうなのか」は明記されていません。脳血管障害と考えて認定しても良いと思いますが果たして認定審査会で独自の判断が出来るのでしょうか。一方、いろいろな疾患を各認定審査会の拡大解釈で認定審査を行えば、今度は不公平だとの批判も出てくると思います。
 モデル事業の時のように厚生省の、多くの複雑な適当事例・不適当事例集が出てくるのでしょうか。
 先天性の心臓病やその他の難病など若くして介護が必要になった疾病の患者さんは、この特定疾病以外でも認定可能となるような考え方が必要と思います。

 またここで問題となるのが「医療と介護」の区分分けだと思います。
 施設入所や療養型病床群の入院では、対象の患者さんは、ほぼ「医療と介護」が包括化された報酬制度ですが、在宅では「医療と介護」は区別されます。どちらかを選ぶのではなく、どちらも必要な患者さんは多いと思います。別々に認められなければならないと思います。
 今までの多くの討論で、介護保険の対象にならない方は医療がカバーすればよいとの意見が多くみられました。
 そうでしょうか、何度も言いますが「在宅で医療と介護」を同時に必要とされる方は多いと思います。現在は在宅サービスも医療制度の中で運営されているものが多く、あまり問題視されていませんが、今後在宅サービスのほとんどが介護保険に割り当てられれば、医療だけでは困る患者さんも増えてきます。
 逆に「在宅の医療と介護」が同時併用可能で認められれば、医療と介護の両方での負担が必要となり自己負担の増加が問題となり、患者さんにとっては悩みの種となりそうです。
 難病や身体障害者で認定を受けられた方は現在は医療費については免除されていますが、介護保険では介護保険が優先となれば、介護サービスには自己負担もいるのでしょうか。

 もう一つの問題として、この特定疾病の介護保険制度の認定審査での診断基準と重症度基準が示されていないことです。例えば糖尿病の合併症慢性閉塞性肺疾患なども病態はいろいろで介護を必要とする状態や全く介護は必要ない状態などいろいろです。疾患名だけでの認定は出来ませんし、病気の重症度の基準は介護認定では必要ないかも知れませんが、ある程度の介護認定での基準がなければ、要介護度の認定も困難と考えます。例えば糖尿病性腎症では透析を受けている方や、慢性閉塞性肺疾患では在宅酸素療法を行っている方は、全て「要介護度3以上とする」とかです。骨粗鬆症での骨折も腰椎の骨折では、日常生活に介護を必要としない方もあります。介護を必要としない患者さんには介護認定は不要と言ってしまえば簡単ですが、特定疾病などを公表すれば、受ける方では自分の病名が有るのに認定が受けられないなどの不満も出てくると思います。
 
 特定疾病にも身体障害者の認定基準のような、介護保険認定制度のための基準を示して欲しいと思います。
 このように特定疾病にも大きな問題と解決せねばならない制度の疑問があります。

                平成11年7月11日 玖珂中央病院 吉岡春紀



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