障害者に冷たい介護保険制度


身体障害者福祉法と介護保険法について

 この問題については、昨年から、介護保険を考えるメーリングリストや掲示板などで話題になっていました。
 介護保険制度がはじまれば、現在、身体障害者として認定されている方の介護サービスに関しては補助がされないこと、特に介護型療養施設に入院されている患者さんには今まであった医療費の補助がうち切られ、介護費の自己負担が必要になることです。これでは「障害者にとって冷たい仕打ちだ」と多くの方たちが訴えていましたし、私も、当然行政も見直してくれるものであろうと思っていましたし、メーリングリストでも制度発足までには改善されるものと、みんな考えていました。
 しかし厚生省や都道府県では身体障害者への介護費用負担の軽減措置はまだ検討課題に上がっていないようですし、一部の都道府県では身体障害者の医療補助は介護保険では認めないと決議したところもあるようです。
 従って現時点では身体障害者手帳を持っていたとしても、介護保険制度では使うことは出来ず自己負担として1割負担が必要になると考えられます。

 一般に脳卒中の後遺症などで麻痺がひどく後遺症が残ったり医療の継続やリハビリ・看護が必要な方は、発症後約1年を経過すると肢体不自由として身体障害者の申請が出来、指定医で診断書を作成してもらい申請すれば都道府県の審査会での審査の後、障害の等級に会わせて認定され身体障害者手帳が交付されます。
 勿論脳卒中の後遺症による肢体不自由だけでなく、心筋梗塞やペースメーカー・人工弁置換などの心臓疾患、透析を対象とした腎臓疾患、呼吸不全・酸素療法などを対象とした慢性の肺疾患、人工肛門設置の患者さんなど、他にも各都道府県で少し内容は異なりますが多くの疾患で申請できます。
 身障者1〜3級の認定を受けると、医療費の一部負担金が還付され、普通は医療費の支払いは全額免除されます(一部高額所得者は除く)。従って身体障害者手帳の交付を受けた方は医療費を気にせずに在宅医療や入院が出来ています。
 この制度は各都道府県で多少制度の規約や運用は異なるようですが、全国の都道府県で行われており障害者の長期医療の補助制度として役立っております。
各都道府県と市町村が半額ずつを補助する制度です。

 しかし、この制度は「医療保険の補助」として制度化されたものであり、介護保険制度では適応されないと言われています。「介護保険の補助制度ではない」「制度を変えるためには議会での決議を必要とする」と言うのが自治体の考えだと思います。
 と言うことは介護保険では身体障害者への介護費用の補助は無いと言うことで、今までは医療保険で全ての介護関連のサービスを自己負担無く受けておられた方も、制度発足後は介護サービスは自己負担が必要になり、介護型療養施設に入院した場合、1割の自己負担が必要となります。

 入院施設として重度の身体障害者の方たちは急性期病棟や一般病棟には長期入院は出来ず、療養型病床群と言われる長期入院の出来る病棟に入院することになります。
 療養型病床群は4月から医療型と介護型に分かれることはご存じだと思いますが、介護型には介護保険制度で要介護認定を受けた方しか入院できません。また通常介護型には肢体不自由で重度の介護が必要な方が対象ですし、このために介護型を分けて医療保険から分離させたのだと思います。
 しかし身体障害者の認定を受けた方が介護型病棟に入りますと、医療型病棟では無かった自己負担が出ると言うことになります。これでは身体障害の認定を受けた方たちは介護型施設に入るのを拒否されたり、不満を持たれたりする事は当然であり、施設の現場での混乱は目に見えています。
 また医療型と介護型の両方の病棟を持つ病院としても患者さんの病棟の振り分けにかなり苦慮する事にもなり、同じ様な病状でも自己負担の面で介護型には転棟させられない症例も出てくることにもなると思います。
 これでは療養型病床群を介護型・医療型に分けた意味も不明となりますし、むしろ名目上医療費の一部を介護保険制度に回しただけで、障害者に不利な制度を作ったり現場の混乱をもたらしただけでむしろ分ける必要はなかったと思っていますし、将来介護型の療養施設として認可される意味はあまりないものとなってしまいます。

 行政は今のところ、身体障害者への医療費補助は医療制度での補助であり、介護保険への適応は考えていないと言います。これでは介護保険がはじまると、障害を持った本当に介護が必要な方たちが、介護を受けられないこととなってしまいそうです。
 せめて身体障害者手帳を持っておられる患者さんには、医療費補助と同一の発想で介護費の補助を継続出来るよう訴えたいと思います。全ての身体障害者に適応しろとは言いません。せめて介護保険制度で特定疾患として認めている疾患による重度の身体障害者認定者には、医療費補助をそのまま介護補助として継続できるよう訴えたいと思います。
 今まで出している医療費の補助の継続ですから、突然身体障害者が増えるわけでもありませんし、各都道府県も市町村も補助金が急に増えることはないと思います。そしてこの制度は各都道府県で決めることではありますが、国として厚生省の指導を望みたいと思います。
 そうでないと身体障害者にとって冷たすぎる介護保険制度になります。

 今回は身体障害者福祉制度だけの問題提起ですが、そのほかの福祉や措置制度も見直してみる必要があると思います。
 現在分かっているものには「生活保護」「原爆医療」「結核医療」「特定疾患治療研究」などは介護保険制度でも補助をうけられるようです。

       平成12年1月28日 吉岡春紀



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