私の介護保険制度改正案


 先日より各マスコミでも介護保険制度発足に1年を切った事が報道され、朝日新聞の特集でも介護保険制度の問題点の討論や全国の市町村のアンケート調査が取り上げられています。
 アンケート調査では全国の市町村の保険料の問題、担当者の不安、要望などが調査されていますが保険料に関しては、当初の予測の平均2500円では賄いきれないこと、北海道のある町村では6000円を超える保険料でも赤字となることが報道されています。
この調査では1号保険料推定額は都道府県別に平均値がまとめられており、上位と下位の数県を並べ直すと
上位では
 北海道 3994円・高知県 3982円・鹿児島県 3881円・大阪府 3509円・大分県 3504円
下位では
 茨城県 2319円・栃木県 2391円・千葉県 2462円・岐阜県 2477円
全国平均では2991円となっていました。
 これは各都道府県の平均で、市町村の単独の額は不明ですが、当初の厚生省の予測2500円を大幅に上回ってしまう市町村が大半だと言うことです。
 しかも、これから1年間に新たに認可される施設(特に療養型病床群)や介護サービス体制を拡充してゆけばもっと保険料は上がってしまいます。

一方、アンケートの担当者の不安(介護保険での課題・問題と考えていること)
 低所得者対策
 住民への理解と納得
 サービス基盤の確保
 保険料の徴収
 調査員・認定審査委員・ケアマネージャーの確保
 要介護認定の公平さ・難しさ

 などの項目に調査市町村の半数を超える担当者が不安を持っており、これらは施行までの後1年間で解決できない問題点ばかりです。
 このように後1年となった制度発足に、担当者が困惑している現実が明らかになっています。
 この制度の根本的な問題点の「税にするか・保険料とするか」「国が行うのか・市町村で行うのか」は国会で審議されつくされた結果ですので今更変更はないので、さておき、運営に関する問題は解決していませんし、実際の運用によってますます疑問点が出てくると思います。
 市町村担当者のアンケートを見ますとやはり国が行うべきであったと思いますが、運営は市町村にさせて、その運営方法は国や厚生省が決める今の制度は混乱の元であると思います。ましてその運営方法が、今となっても示されず、制度発足のぎりぎりまで決まらないものもあります。

 また、制度上の不安に加えて、制度を運営してゆく上での経費の問題はあまり取り上げられていませんが、特に、認定審査に係わる経費の問題も考える必要があります。
 認定審査会の運営や資料作成の経費・調査員への報酬・審査員の報酬・担当者の残業や超過勤務の経費、ケアプラン作成の経費・報酬、かかりつけ医意見書の報酬など正式にも決まっていませんし、これらの経費はどこから出すにしろ膨大な額になると思います。認定作業に膨大な経費がかかることはあまり注目されていません。またこれらの運営の経費は介護保険の全体の経費として出されるのか、市町村の別会計なのかは知りませんが、いずれにしろ、制度の運営に経費がかかりすぎると思います。

そこで
 現在決まっている介護保険の制度は維持しながら、出来るだけ簡略に、誰もが使える制度に改正して発足させ、その中で厚生省の言う「走りながら考える」方針に改めるべきではないかとおもいます。混乱と、なにも指針が決まらないでの発足では「走りながら倒れてしまう」ことになりかねません。

私の提案
1.介護認定審査制度は廃止とする

  介護保険制度のうち、要介護認定制度を廃止し、介護保険も医療保険と同様に「誰でもが、いつでも、必要になったときに介護を申請し、すぐに介護サービスが受けられるシステム」とする。
 認定審査会の開催や問題の多いコンピュータ一次判定を廃止する事で、事務量が簡素化でき、前述した経費が削減出来る。
 当面は色々な介護サービスが必要となった者が、その地域での出来る範囲のサービスをすぐに受けられることにする。介護サービス施設やマンパワーの充実については、地域の受け皿に出来るだけ格差がないよう今後も充実し、新ゴールドプランも見直してゆく。遅れた市町村は国が指導・援助してゆく。

2.在宅サービスの調整はケアマネージャーが行う。
 医療保険と違うのは、「誰でも・どこでも・すぐに」と言っても無制限に行うわけではなく、折角全国で養成されたケアマネージャーの仕事として確立する必要があり、介護保険はケアマネージャーによる調査と調整を必要とする事にします。
 ケアマネージャーは申請者の状態や家庭環境、地域でのサービス内容、申請者の希望(支払い能力も含む)を調査し、現実に沿ったサービスの調整を行う。 無制限なサービスの防止のため、介護サービスにはある程度の限度額を設定し、それ以上は申請者の負担とする。

3.また認定審査会に変わる介護サービス調整委員会をつくり、ケアマネージャーによって提出された問題のあるケースではこの調整委員会で検討する。

 そうすれば介護認定審査会は不要でこれに関わる経費や労力は介護そのものに回すことが出来ます。
 また、1週間とか1ヶ月以内の短期間の介護サービスも受けることが可能です。
 施設サービスについては、現在でもどう調整するのか不明ですので12年4月の発足時には、施設のうち特別養護老人ホーム、老人保健施設を介護保険制度の対象とし、施設入所の時点で介護者が市町村に届け出ることとし、各施設の主治医とケアマネージャーから要介護者の主治医意見書とケアプランを提出させ、問題のある例は調整委員会で検討するとします。しかし療養型病床群では医療と介護の区別の問題や地域医療計画での将来的な老人医療の必要病床数などが確定するまでは医療制度の施設として残し、もっと審議を重ねてからのスタートとしても良いと考えます。療養型病床群を介護施設とするときには医療型・介護型などの施設の区分は行わず、主治医意見書とケアプランが提出された者は介護保険適応として扱うことで良いのではないかと思います。
 施設サービスでは医療保険(1人月1000万円を超えることもある)と違って、特別養護老人ホーム、老人保健施設、療養型病床群とも現行のような施設単位の定額制で行えば、施設の介護料は無制限なサービス料となることはありません。むしろ現行の厳しい病床規制により施設の新規開業が押さえられれば、高齢化の進む将来に必要な施設が足らなくなる事が問題となるでしょう。

具体的には
 介護サービスの希望者は介護申請を市町村に申請する---->ケアマネージャーが家庭を訪問し、調査し、本人の状態と家族の希望を聞き、ケアプランを作成し、介護者の了解が得られれば介護サービスの調整を行う。---->介護サービスを受ける。
 在宅の1ヶ月以内の短期間のサービスはこれで済ませ他の手続きは必要としない。
 1ヶ月を超える長期間のサービスや医療が必要な場合には、その間にかかりつけ医の意見書を提出して貰い、ケアマネージャーは調査と意見書を参考にケアプランを作成し、かかりつけ医と協議の上プランを実施する。
 施設サービスでは入院・入所時や医療保険から介護保険に変わる時に、市町村に届け出し、施設のかかりつけ医意見書とケアプラン添付する。
何も手続きがいらないことが一番簡単ですが、介護保険制度のいきさつ上、この程度の手続きを行うことは必要でしょう。この方が国民のコンセンサスを受けられると考えます。

その他の制度運営の改正と要望
4. 介護サービスに伴う費用について、低所得者への配慮
 ある程度の自己負担はやむを得ないと思われ、計画通り1割程度の自己負担は受益者負担とする。 しかし介護保険の実施時期には医療保険制度も改定が予定され、高齢者の医療保険も1割の自己負担が考えられており、医療と介護の両方が必要な高齢者ではかなりの負担増が見込まれるため、低所得者への配慮が必要である。 また医療保険では外来医療での高齢者の負担は定率制では予想外の負担額となる可能性もあり、安心して医療・介護を受けられるためには現行の定額負担を維持すべきです。

5.40歳-65歳の対象者も同じサービスが受けられるものとする。
 保険料は払っても認定に制限のある40ー65歳の対象者も同じサービスが受けられるものとする。特定の疾患だけが介護サービスを受けられる事にはなっていますが、すべての要介護者に適応すべきです。

6.医療保険と介護保険の整合性
 高齢者も国民保険・社会保険に入っており医療保険料は支払っている訳ですが、介護保険導入後は、現在医療保険で支払われている高齢者の医療のかなりの部分が介護保険より支払われることになり、医療保険と介護保険を全く別の保険と考えるならば、高齢者の医療保険料は減額されて当然であり、今のままの保険料とするならば、その配分根拠を示すべきだと考えます。
または医療保険の減額分を介護保険に回し介護保険料の増額を抑制することも考えるべきです。

7.保険料について
 介護サービスの受け皿が整っている市町村で保険料が高く、整っていない場合には低い額で設定できるとのことですが、隣り合った市町村で額が異なるのは問題です。やはり基本的には全国で統一した保険料とすべきですが、これが無理なら都道府県の指定医療圏内の保険料は一定にすべきです。と言うのは同じ医療圏でも市部では土地代の問題で老人保健施設や療養型病床群が少なく、隣接の町村では逆に人口割にみて過剰な老人保健施設や療養型病床群病床があることは多くあります。しかし入院・入所されている介護者は同じ医療圏内の介護者が多く、地域医療圏内の保険料は一定にしないと混乱すると思います。
 
 制度発足に1年を切りました。介護認定の時間をいじくっている時期ではないと思います。  
              平成11年4月8日 玖珂中央病院 吉岡春紀



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