長期療養型病床の処置料廃止など4月診療報酬改定の問題点

地域の安定した医療供給体制の確立のために早急な対策を


長期療養型病床群とは

 長期療養型病床群とは長期入院患者の受け入れと、介護保険制度後の介護型施設として、厚生省が打ち出した施設改善案で今までの病院の設置基準より長期入院の患者さんが過ごしやすい施設の基準として、1室4人以内、1床面積6.4平米、食堂、風呂廊下幅等の基準を満たした病床を言い、介護保険で全国19万床を目指して一般病院や老人病院からの転換が勧められています。
 長期療養型病床群での治療は医学管理料・看護料を含め今まで内服・注射の薬剤費、検査料(一部X線関係除く)は包括されていましたが、処置については加算が認められていました。

 今回、4月の改定で長期療養型病床群での処置の包括化は殆ど全ての処置に及び創傷処置・湿布処置・喀痰吸引・摘便・酸素吸入・皮膚科軟膏処置・膀胱洗浄・留置カテーテル設置・導尿・眼処置・耳処置・鼻処置・口腔処置・ネブライザー・消炎鎮痛処置・鼻腔栄養がすべて包括化されました。これは大きな問題であり湿布処置・喀痰吸引・眼処置・耳処置・鼻処置・口腔処置などなら看護の一部分の処置と考えて仕方ないと思いますが、褥瘡処置や鼻腔栄養・留置カテーテル設置・酸素療法等の処置はかなり専門的な治療も必要な処置であり、これにかる薬剤費や材料費も大きなウエイトを占め、包括化されることには問題があります。これらの処置を必要とする患者さんは重症者が主体で、処置や治療を減らすことなどは考えられません。

 最近平均在院日数の関係と一般病院での6ヶ月を超える老人の入院に厳し逓減性が引かれ、一般病院より急性期の治療後、転院を勧められる患者さんも多くなり、まだ病態の安定しない時期での転院も多く、これらの処置を必要とする患者さんが増えてきました。胃瘻造設やIVHのままで転院されるケースもあります。これらの処置が診療報酬で包括されるならば療養型病床では重症看護患者の受け入れを拒否する場合も考えられます。

 また長期療養型病床群の問題として、従来の介護力強化病院では認められていた病棟単位での出来高制の選択が出来ず、療養型病床群では全て包括化された定額制だと言うことです。診療報酬制度との矛盾があります。これでは、病院全体が療養型病床群の場合、肺炎、心筋梗塞、脳卒中などの急性増悪の際は、全て包括化された自院での診療が制限され、別の急性期病院に転院させるしかないのではないでしょうか。

 また一方一部ケアミックスとして急性期に対応が出来る病床を持ったとしても、6ヶ月を超す老人患者さんの、一般病棟での老人看護料の大幅な削減では一般病棟への転棟も出来ません。

 医療機関でない特別養護老人ホームや老人保健施設のように寝たきりのお年寄りを肺炎だからと言って別の一般病院に転送するのとは意味が違いますし、療養型病床でも対応出来るものと考えます。しかし急性増悪時の治療費も包括され、また一般病棟に転棟しても医学管理料や看護料が保障されなくては十分な対応は難しくなり療養型病床より別の一般病院への逆転院も頻回となるかも知れません。急性増悪でまた別の一般病院に転院させられる患者さんも家族も大変です。

 その他、地域医療の面からも、高齢者の入院比率が多く、病院全体として長期療養病床を選択した病院でも地域の救急医療や急性期医療を担当している病院は多く、この際の急性期医療を長期療養病床だからといって包括化することは救急医療を行うことが経営の圧迫になり、その地域の救急医療制度の破綻を招くことになると思います。

 介護保険導入後の療養型病床群のありかたについては、まだ不明な点が多く介護型・医療型の選択をするようですが、医療型としても全て定額で包括されれば急性期の十分な治療は出来ません。医療施設の多い大都会では、病院の機能分類も必要ですが、特に過疎地の病院では老人病院であっても一次・二次救急を受け持っている施設は多いものと考えます。

地域医療の混乱を招かないため、地域の医療供給体制の確立のため療養型病床の規則の改定を望みます。

提案として
1.急性期の医療が出来る病床を持たない、病院全体が長期療養病床群の場合、一部病棟か病床単位の医療型病棟(病床)では出来高制度を認める。または入院後2-3ヶ月までは出来高払いとし、急性期にも対応できる治療と検査が行えるものとする。

2.その後は包括化された定額制とするが、看護に重点のある褥瘡処置や鼻腔栄養・留置カテーテル設置・酸素療法などは薬剤費、材料費を含め請求可能とする。

3.急性増悪の場合には、医療型病棟への転科を認めるか、急性増悪の月かまたはその期間のみ出来高の請求を認める。

4.ケアミックス等で急性期の医療が出来る一般病床を持つ長期療養病床群の場合、これも6ヶ月を超える患者での急性増悪の際には、一般病棟での出来高払いと看護料は6ヶ月までの基準とする。
以上を提案します。

   平成10年6月   玖珂中央病院 吉岡春紀


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