療養型病床の入院患者を追い出す前に
都道府県ごとの差を無くし
全国の介護施設を整備することが先決ではないでしょうか。

 下の図の左は厚労省が発表した、平成12年10月の全国の療養型病床群の設置状況と、右は全国都道府県別の介護施設の設置状況です。それまでは施設数は各都道府県ごとに施設数が公表されていましたが、12年は「65歳以上人口10万対」の施設数として公開されています。ここで全国平均を示す意味はなく、当初計画していた計画と達成率を示すべきなのですが、なぜか全国平均が示されました。

 医療施設としての療養型病床数は全国で約24万床と、当初の計画数に達しているようですが、介護保険制度下の介護療養型医療施設への転換が12万床程度と当初の19万床予定通りに進んでいないことが問題となっているのです。と言うことは現在医療保険の療養型病床群と介護保険の介護療養型医療施設を合わせた数は24万+12万=36万床と言うことだと思います。

都道府県別にみた65歳以上人口10万対療養型病床群の病床数 病院報告 平成12年10月
 左の図は医療保険での療養型病床群の各都道府県の設置状況です。都道府県ごとの平均値に意味があるとは思えませんが、明かな西高東低があります。

平成12年度介護サービス施設・事業所調査の概要 都道府県別にみた65歳以上人口10万対定員(病床数)
 右図でみると、うす青色を介護福祉施設・青色を介護保健施設・茶色を介護療養型医療施設で表していますが、全国平均の線以下の都道府県では主に介護療養型医療施設が少ないことが一目瞭然ですし、医療保険の療養型病床群の設置が少ない県ほど介護保険でのこれらの設置も遅れていることが分かります。。

都道府県別にみた65歳以上人口10万対療養型病床群の病床数    都道府県別にみた65歳以上人口10万対介護施設の定員    

  


 なぜまたこんな数字を持ちだしたかというと、国は社会的入院を減らす目的で6ヶ月以上療養型病床群に入院中の患者の自己負担を大幅にアップして、長期入院を出来なくさせる改悪を考えているからです。
 各都道府県でこんなに大きな差のある状況で、国として在宅での看護や介護が必要な老人をどうするのかの施策もなく、受け皿もなく追い出すと言うのです。

 元々「療養型病床群」とは一般病院の社会的入院を減らすために考えられた長期療養が可能な施設制度であり、老人病院-特例許可老人病棟-介護力強化病院-療養型病床群と少しずつ、医療中心から介護中心に考え出されたもので、将来的には一般病院・急性期病院よりはなして、欧米のような医療・看護の継続や、介護のできるナーシングホーム的な施設と考え、一部を介護保険適応の介護療養型医療施設に変えようとしている病床です。
 この方針で進んでいるものとばかり思っていました。
 ところが、療養型病床群から介護保険の介護療養型医療施設への転換が、全国規模では思ったより進まないので、6ヶ月以上療養型病床群入院患者の規制を行い、転換を進めようとし、一方、一部を介護保健施設に転換も可能という発言がみられていますが、上記の図の如く、全国の介護保険への介護療養型医療施設転換率は各都道府県で大きな差があり、東北・関東地域のように療養型病床群も介護療養型医療施設もすべての施設が不足している県、一部の施設が不足している県などまちまちである。一方中国・四国・九州地域では療養型病床群・介護療養型医療施設をふくめ介護施設が目標値を超えた地域もあります。
 それを全国一律に考えて転換が足りないとして、転換を進めようとしているのですが、すでに地域の目標値を確保している都道府県では、これ以上介護療養型医療施設が増えることは保険料のアップにつながりますし、それらの地域では医療機関側が転換しようとしても認可されない可能性があります。
 特に建設費の問題で介護施設は都市部をはずれて周辺の町村に建設されることが多く、これが周辺町村には大きな脅威となってきます。また今回の療養型病床群の介護保健施設化にしろ、介護療養型医療施設への転換にしろ、介護施設を数十床受け入れれば小さな町村の保険料は確実に大きくアップします。入居者がその施設に住所を移すことが問題となるのですが、こんな見直しもすべきです。

 介護保険は地域に任せたとして放置し、都道府県の格差を是正すべき厚労省が何も指導しなければますます格差は広がるおそれがあります。
 まず、全国の目標平均より少ない都道府県では療養型病床群の施設の各々半数の病床は介護療養型医療施設に転換することから指導し、全国平均の目標値19万床をまず確保すべきです。それを行うのは厚労省です、各自治体ではありません。
 今後のすべての医療・介護の政策はこの目標値が達成されてからだと思います。それをしないなら、何のための目標値なのか立案の責任を追及されても仕方ないと思います。
 またこれらの介護保険制度への転換で、医療費は削減されても介護費は全く同じかそれ以上必要となることはだれも指摘しないのはなぜなのでしょうか。
 マスコミも分かっていながら、医療費削減のための報道は強気ですが、介護費の展望などは全く行っていません。高齢化時代で問題となるのは介護費用ではないでしょうか。

まとめ
 1.療養型病床の入院患者を6ヶ月で追い出す前に、都道府県ごとの差を無くし、介護施設も全国の介護施設を整備することが先決ではないでしょうか。
 2.医療保険での療養型病床群は本来は一般病院の社会的入院を減らす為の病棟であり、治療も処置も看護も包括化された医療報酬の病棟であり、これを6ヶ月以上は社会的入院とした根拠が不明です。

             平成14年1月15日 


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