老人保健施設入所者の保険診療について

  (保険医療機関とのトラブル防止のために)
              保険診療の手引き 山口県内科医会編


 老人保健施設の目的は、病状安定期にある寝たきり老人などに対して医療ケアと日常サービスを提供することにより老人の自立を支援し、家庭への復帰を目指すことにあります。
対象者は老人医療の受給対象者で病状安定期にあり、入院治療を必要としないがリハビリ、看護、介護(2項目以上)を必要とする慢性疾患患者、寝たきり、又はこれに準ずる老人、一人で外出できない痴呆老人を対象にしています。
 老健の運営費は、基本施設療養費として1ヶ月入所者基本施設療養費(I)が月額264,800円(II)が270,000円であり、これに痴呆性老人加算、短期入所ケア加算、緊急時の施設療養費、退所時施設療養費等の加算があります。これらは社保支払基金や国保連合会から支払われていますがそれ以外に食費代、個人選択に係わるサービス料などは自己負担とされています。(自己負担金平均5-6万円)

 施設での入所者が急病等で施設内での医療行為が無理な場合、外泊で在宅中の急病などで保険医療機関を受診することになった場合は次の留意事項を知っておく必要があります。
@施設の医師は、入所中である旨の証明書(紹介状)又は老人保健法医療受給者証に入所年月日を記載して必ずこれを持たせて外来受診させ、保険医と共同して適切な診療を行うこと(厚生省63年3月通知)。
A保険医療機関は、これを確認した上で医療区分ごとに請求できる医療行為、請求できない医療行為を厚生省63年3月告示78号(下記に概要)に照らして請求できる医療行為について算定し、できない行為については老人保健施設に実費を請求する。
B通常入所中の患者は1人で外来受診することはあり得ず、家族又は施設職員が付き添っているので、医療受給者証を確認して入所中の事実が判明した場合には施設医師に連絡し、「入所中である旨の文書」別表1の遡及交付を請求する。
C保険医として、必要と判断する全ての医療行為を行えるが、腫瘍用薬以外の全ての投薬(外来薬を含む)と全ての注射については施設医師の指示処方により行うこととされているので、保険医は施設医師に対しての投薬・注射に関する情報提供にとどめる。(但し、緊急やむを得ない救急医療を必要とした場合は緊急時施設療養費算定を参照)院外処方箋は一切発行できない。入院を要すると判断した場合には速やかに施設に連絡する。
D当日の診療を終えたら所要事項を記載した診療情報提供書(返事)を交付する。情報提供に関して月1回老人診療情報捉供料(B)200点を診療報酬として請求する。
E請求の際はレセプト欄外上部余白に「老健」と記載する。
F「入所中である旨」等の必要な文書の提示がない場合は通常の外来患者として診療して差し支えなく、診療報酬を請求しても何等責任もないが、しかし結果として制度上老人保健施設療養費と老人保健診療報酬との二重払いとなってしまうことは明らかである。この場合責任は老人保健施設にあるが、実務上の返還手続きは先ずその二重支払い分については保険医療機関の診療報酬から控除し(過誤調整)、その控除額相当分を保険医療機関が老人保健施設から徴収補填する手段が全国的に行われている。

併設医療機関以外で請求できる医療行為概要(外総診・老人包括共通)
 初診料・再診料・往診料
 処置・手術 (一部確認要)  画像診断 X線、透視、CT検査、MRI、フィルム代
 リハビリ (一部確認要)
 老人情報提供料(B)、共同指導料

請求できない医療行為
 投薬(処方箋を含む)・注射 (但し腫瘍用薬は算定可)
 検査 検体検査 尿・血液・生化学・免疫・微生物・病理
         (但し癌病名に対した腫瘍マーカーは算定可)
    生体検査 心電図・超音波・内視鏡・ホルター心電図
         骨塩定量・呼吸機能など


参考資料のページに戻ります。