本当にケアプランは出来ているのでしょうか。

 ケアプランについて31日の厚生省集計では88%がケアプランの作成手続きを終了したと報道されています。
 切羽詰まって、このままではケアプラン作成が出来ず介護保険の実施が危ぶまれ、当初の正式なケアプランで無くても暫定的に利用できるケアプランで構わないとの通達でなんとか間に合ったのではないでしょうか。
 ですから、88%の作成のうち本当のケアプランはどれだけあるのでしょう。
 または「ケアプランは出来たこと」にして、サービスをはじめているのもあるのでしょう。

 ぎりぎりまで、要介護認定審査にも手間取り、介護報酬も決まらなかったり、突然変更されたりしたため、ケアプラン作成は困難だとは誰もが思っていました。
 中途半端なケアプランでも今は、「仕方無し」としましょう。

 でもこれで良いとするのですかね。

 確か厚生省の通達ではケアプラン作成の条件にはサービス担当者会議(ケア・カンファランス)の開催が必要とされていたと思います。
 会議を行った日付や内容・参加者・出席できない場合にはその理由などを報告するため事が必要で、書類の様式も決まっていたはずです。

 しかし、ケアプランの作成の為に、モデル的に数例のケア・カンファランス実施している自治体があることは知っていますが、現実にはほとんどのケースでケア・カンファランスを行っているとの報告はありませんし、まして主治医が関与したと言う話はほとんど聞きません。
 私も個人的に在宅で30名程度の主治医意見書を書いていますし、この意見書をケアプラン作成に利用することに「同意」はしていますが、ケアマネからケアプランについての問い合わせの連絡があったのはたった1名だけです。
 これも時間の都合でケア・カンファランスは出来ず、電話での問い合わせとサービスの確認でした。
 その他の例はケアマネから電話の連絡さえありませんし、本人にも診察時にケアプランやサービスの内容を聞いてみた方もありますが、4月からのサービス内容など十分に理解している方の方が少ない印象です。
 他の医師にも問い合わせましたが、ほとんど電話連絡もないし、関与していないとの報告です。
 主治医意見書で「同意」していれば主治医には報告しないでよいのでしょうか。
 週に1回位のデイサービス程度の介護サービスなら、会議を開いてケアプランを作成するほどのことはないとも思いますが、医療が必要な介護者には、サービス提供者間に共通の認識と介護プランの相互理解が必要で、そのためにケア・カンファランスが義務づけられているものと思います。

 ケア・カンファランスの位置づけがはっきりしていない事と、時間的な制約の中で最初のケアプラン作成は困難であろうと予測していましたので、これもびっくりはしませんが、最低限の「主治医への報告や確認」が無視されて行くならば今後大きな問題だと思います。
 確かに、あの誰がチェックするのか分からない膨大な帳票と支給限度額管理の中でサービス機関と調整をしながらケアプランを作成していく事は人間業を超えるものがありますので、多くのケアマネも他の関係者や主治医との連絡を取る暇さえないのかも知れません。

 でも、今後もこのままで良いとは思いません。早急に改善すべきです。また、医師として最低ケアプランの報告を義務づける訴えをする限り、医師もケアプラン作成には出来るだけの協力をすべきだと思います。

 そして、今のような画一化した「ケアプラン作成」という指示でなく、要介護度に合わせたケアプラン作成や書類の調整も考えねば、意味のない書類の山のプランになってしまうと思います。

 例えば 今の要介護認定を続けるならば6ランクの介護度があるので、これを3ランク位に分けて
 1.「要支援」「要介護1」
 2.「要介護2」「要介護3」
 3.「要介護4」「要介護5」 とします。  

 ケアプランの作成の際には 例えば
 a.ケアカンファランスの必要度  
  1.では原則不要・電話・ファクスの連絡だけでよい
  3.ではケアカンファランスを義務づけ
   作成時とサービス途中の変更や3ヶ月時に担当者の会議を行う
   勿論この会議は担当者の身分の保証と交通費や報酬も考慮する
  2.の場合も原則には不要であるが、各種サービス提供者が異なる場合には出来るだけ行う

 b.提出書類
 c.作成の費用
  b.c.などもランクによって書類の種類を減らしたり・作成報酬も差を付けます。

介護サービスの費用にはあれだけ細かい設定をしているのですら、ケアプラン作成時にもランク別に設定しても良いと思いますし、軽度の要介護者にあれだけ多くの書類を提出する意味はありません。
この方が現実的だと思いますがいかがでしょうか。

                         平成12年4月5日  吉岡春紀


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