10年度高齢者介護サービス体制整備支援事業報告書



 10年度モデル事業(10年度高齢者介護サービス体制整備支援事業)の全国集計はまだ公表されていませんが、先日、大阪府の音田篤先生より「10年度モデル事業-大阪府の結果」を送っていただきましたので少しまとめてみました。都道府県によっては多少判定結果などに差はあると思いますが、ご参考になればと思います。すべての内容ではありませんし、コメントは私の個人的な意見です。


対象者
 大阪府46区市町村
   調査対象者数  4571人
   調査実施者数  4358人
   計画書作成者数  469人
介護認定審査に関して
   平均介護認定調査員 7.4人
   介護認定調査に要した時間
    1件あたり 38分 事務処理時間 34分 入力時間 5分
         合計1時間17分 移動時間15分
   かかりつけ医意見書に要した日数
    平均12.4日 1-49日
   認定審査に要した時間  1件あたり 18.4分
   審査判定に要した日数  平均31.5日 4-59日

[コメント]
 1件あたりの介護認定調査は平均38分となっています。かなりスムースに調査できたものと考えたいが実際に多くの調査項目をチェックする時間として38分程度ですむかどうか疑問です。本番では、判定が介護申請者にとって重要な意味を持つので、むしろ痴呆の判定や自立度のチェックは時間をかけて、時には2-3度訪問してチェックする必要があると思います。我々の認定審査会での印象は1件あたりの調査時間は在宅では60分前後だったと思いますし、施設入所者は病態が把握されており調査は比較的短い時間で終わったと思います。平均するとこんなものでしょうか。
 かかりつけ医の意見書提出は平均12日だったようですが、施設では比較的短時間に提出可能ですが、在宅患者さんは今回のモデル事業では患者さんが来院されて意見書を書く形式がとられておらず行政から直接送られてきたため、2週間に1度の来院者では、来院され診察して意見書を書く人が多くすぐに提出できなかった場合もあると思います。しかし、最高49日とは忘れていたのでしょうか。
 認定審査に要する時間は1件平均18分。今回はコンピューターの1次判定を重視し、判定を変更する事にいろいろな縛りがつけられており簡単に介護度変更が出来なかったため、審査員も慣れるに従って「モデルだから」のあきらめの境地で、審査会が進むにつれ長い時間をかけなくなった事も影響しているかも知れません。

介護認定判定結果 

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施設別入所者の二次判定結果

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[コメント]
 施設入所者の判定結果を見ると、特別養護老人ホームでは要介護3がピークで2が続き、老人保健施設では要介護2、1が主体、療養型病床群では要介護3、2の順となっています。一方全体でみると入所者の3.3-4.5%(3.8%)が自立、3.6-6.8%(5%)が要支援となっており、現在、施設入所者の約9%が、今後入所・入院継続が困難になる判定結果です。
 特別養護老人ホームでは5年間の経過措置があり、また療養型病床群では医療が中心の患者さんもあり即退院を進められることはないと考えられますが、老人保健施設のこれらの患者さんは本番施行後ただちに行き場を失う可能性があります。
 同じように在宅介護の患者さんでも自立・要支援が約15%となっていることは今回の判定の大きな問題点です。
 というのは今回の対象者が現在何らかの介護サービスを受けている方であると言うことを忘れてはいけません。一部どう考えても介護対象とは考えにくい人が、ディケアー、ディサービスを利用しており対象者に選ばれた事実はありますが、本当に介護が必要な人が自立の判定では今後介護サービスは受けられなくなると言うことであり、今回はモデル事業で、判定だけであり不満は聞きませんが、本番では不満続出となるでしょう。再認定審査申請が増えるものと考えます。

介護サービス計画作成について
 介護サービス計画課題分析方式

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 介護サービス計画に要した時間 1件あたり
   課題分析時間       2時間7分
   介護サービス原案作成時間 3時間12分
   担当者会議資料作成時間  40分
   担当者会議開催時間    44分
   結果とりまとめ時間    11分
   合計           6時間43分

[コメント]
 介護サービス計画作成も今後の問題点となるでしょう。
まず介護サービス計画課題分析方式がこれほどバラバラでは、果たして公平なサービスが出来るのか、各団体の思惑が絡み調整は難しいと聞きます。また分析時間や原案作成に1件5時間以上の時間を費やすことは明らかに効率的とは言えません。ケアマネージャーの仕事が過酷となるでしょう。
 もっと簡略化して時間のかからない、誰もが納得できる介護サービス計画作成でなければならないと考えます。
 全体的に見て、介護認定の1次判定の問題点はすでに多く郡市認定審査会からの報告があり、厚生省も3月までに見直しを発表しましたが、2年間にわたって行ったモデル事業で解決できなかった問題点を1-2ヶ月で解決できるとは思えませんし、ますますわかりにくいものになる可能性を含んでいます。認定審査に関わるコンピューター1次判定のプログラムを公表すべきだと思いますし、安易な修正でスタートすれば、本番では取り返しのつかない混乱となります。
 介護サービス計画作成に関しても、計画だけでサービスのない地域差があることはすでに大きな問題ですが、これを別にしても介護計画に1件あたり6時間以上の時間がかかることを考えると、もっと簡略化した計画プログラムの作成方式が望ましいのではないかと考えられます。そうでないと、たくさんの申請者を抱えたケアマネージャーの仕事は大変ですし、これに時間がかかれば、判定を受けてもすぐにサービスが受けられない可能性があります。
 以上簡単に「介護認定制度あり」の立場で問題点をご報告しましたが、私の主張は「こんな認定審査は廃止すべき」に変わりありません。



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