入院費の仕組み


同じ病気でも入院する病院によって入院費は違うことがあるのですか。

こんな疑問はよく聞きます。同じ病気(すなわち同じ治療や同じ手術を受けても)でも入院する病院によって入院費は違うことがあるのです。また、入院の期間によって同じ治療を受けていても入院費が急に安くなることもあります。
ここで、少し入院費の仕組みを説明します。

入院費の仕組み
 入院の費用は診療報酬制度により病院によって入院医学管理料・入院環境料・看護料・食事療養費が定められており、それに治療費(薬剤費・注射)・検査料・手術費・処置費・リハビリ・指導料などが加算され入院費が決まります。
 このうち入院医学管理料と看護料は施設の基準や看護の基準によって、診療点数が大きく異なり、この分類は多すぎて簡単には説明不能です。また入院期間によって入院医学管理料は大幅な逓減がされるようになっています。詳しくは入院医学管理料と看護料の(表-1)をご覧下さい

入院時医学管理料
 大学病院など高度医療を行う急性期病院では2週間以内の入院では入院時医学管理料は1日770点ですが2週間以後1ヶ月以内405点、3ヶ月以内140点などと、どんどん逓減され6ヶ月を過ぎると121点となりますし、特に老人では90点にしかなりません。要するに急性期には高い看護料が設定されていますが長期の入院には殆ど入院時医学管理料は無くなる仕組みがあるのです。
また、平均在院日数の基準もあり、全ての入院患者の在院日数によって入院時医学管理料も変わっており、地域の支援病院など平均在院日数28日以内の病院、平均在院日数28日を超える病院と分かれています。平均在院日数28日を超える一般の市中病院では2週間以内が522点ですが、6ヶ月以上は121点のままです。この様に一般病院では平均在院日数により点数が異なります。
従って同じ病気でも大学病院と市中の一般病院では入院後2週間まででは入院時医学管理料は1日228点の差があり2週間で約32000円の差が出ます。
一方老人病棟は急性期の入院医学管理料が老人219点と低く設定されておりますが、6ヶ月を超えると急性期病院より高い140点となっています。老人病院では急性期の管理より慢性期の管理に重点が置かれていることにはなりますが、それでも1年を超えると半額程度になってしまいます。
この様に入院時医学管理料は病院の種類、平均在院日数などによって決められていますので、一般には分かり難いと思います。

看護料
 また看護料も数十種類の分類がありその病院の看護婦・准看護婦の数、正准比、介護補助者の数などで、細かな設定になっています。
 例えば高度の看護を行う2:1看護の病院では最高750点、4:1看護で看護補助10:1の病院では439点、6:1看護で介護力強化の老人病院では348点等となっています。
看護料は医学管理料と違って急激な逓減はありませんが、これも長期入院では少しずつ逓減されています。 2:1看護とは入院患者さん2人に看護職員1名という看護の基準です。

入院環境料はどの施設も1日165点と決まっており、また食事療養費は1日1920円、特別食加算は350円です。

入院費
 これらの入院費(入院医学管理料・入院環境料・看護料・食事療養費)を算定してみますと
大学病院など高度医療の病棟では2週間まで1日1912点、6ヶ月を超えると1229点(老人1198点)
平均在院日数28日以内の地域支援病院などの3:1看護で看護補助10:1の病院では2週間まで1日1601点、6ヶ月を超えると1071点
平均在院日数28日超える一般の市中病院などの4:1看護で看護補助10:1の病院では2週間まで1日1353点、6ヶ月を超えると918点(老人887点)
老人病院では2週間まで1日969点、6ヶ月を超えると880点となります。
これは治療、検査、手術などの医療行為は含まない入院料です、あなたの入院された病院によって同じ病気でも入院費は大きく変わるのです。
例えば14日間入院したとしたらこの入院費は大学病院では約27万円、地域病院では22万円、市中病院では19万円、老人病院では14万円となり大きな違いです。
非常に複雑な仕組みで、しかも病院がどの医学管理料か、看護基準はどうなっているかは患者さんにはわかりません。この様な点数が何を基準に決められたかも、私にも良く解りません。
一方どの病院にしても入院期間が長くなれば入院料はどんどん逓減される仕組みは同じです。
    平成10年6月


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